ニューヨーク市場で、ゲーム小売り大手のゲームストップ株が高騰し、空売り投資家の一部が買戻しに追い込まれた。『Jキャピタル・リサーチの共同創設者、アン・スティーブンソンヤン氏は電話で、「合理性とファンダメンタルズが全く通用しないという印象だ」とコメント。「空売りポジションを建てた人は買い戻すしか選択肢がなく、極めて過大評価された株式を持つはめになる」と説明した。』(「ゲームストップ株価急騰、新たな極みに-空売り投資家の一部は降参」 2021/1/28 Bloomberg)。買いを仕掛けたのはSNSでつながった個人投資家だという(『「プロ投資家対素人集団」 ウォール街ラウンドアップ』 2021/1/27 日本経済新聞夕刊)。
ヘッジファンド投資家を合理的投資家とすると、素人投資家は合理的な投資行動をとらないノイズトレーダーといえる。フリードマンによれば、合理的な投資家が利益を上げ、ノイズトレーダーが損失を被ることでノイズトレーダーは淘汰されて合理的市場が保たれるが、今回はノイズトレーダーが合理的投資家を淘汰したことになる。
『「今回の波乱で『高レバレッジ』問題が浮き彫りになった」。米証券ミラー・タバックのベテランストラテジスト、マシュー・マリー氏は27日、顧客に注意を促した。(中略)個人投資家の標的になったヘッジファンドは借り入れで空売りの規模を膨らませていた。』(『「借金漬け相場」の危うさ ウォール街ラウンドアップ』 2021/1/28 日本経済新聞夕刊)。レバレッジをかけたファンドの損失といえばロシア通貨危機の時に破綻したLTCMがあったが、その教訓が生かされていないように見える。金融緩和政策の弊害が出てきているようだ。
『素人集団によるゲームストップ株買いは業績悪化が鮮明となっている同社のファンダメンタルズを無視し、(中略)その発信源となったSNSの「レディット」では、複数の個人が「機関投資家を破綻させよう」と宣言してゲームストップ株購入を呼びかけた。』(『「プロ投資家対素人集団」 ウォール街ラウンドアップ』)という。同社の業績が悪化している中で機関投資家を破綻させるためだけの買いの呼びかけは、相場操縦のうち、実勢を反映しない作為的相場形成にあたるようにも見える。不況時に業績悪化企業の株式が狙い撃ちされるのは「仕手戦」と同じ現象だ。
28日にはインターネット証券がゲームストップ株の取引を制限したこともあり、同社の株価は急落した。『「空売り王」の異名をとる著名投資家カーソン・ブロック氏は日本経済新聞の取材に、「投機的狂気の相場はいずれ終わり、個人投資家が巨額の損失を被ることになると警告する。」(『「プロ投資家対素人集団」 ウォール街ラウンドアップ』)が、ノイズトレーダーを淘汰するのは合理的投資家ではなくルールの変更のようだ。
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