ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が『「おそらく何らかの方法で誘発されたか、あるいは阻止されなかった」との認識を示した』(『ウクライナの戦争、「おそらく誘発されたか、あるいは阻止されず」 ローマ教皇』 2022/6/15 CNN.co.jp)という。また、「ただここで状況を一段と複雑にしているのは、ある『超大国』による直接的な介入だ。自国の意思を押し付けようとするその行動は、民族自決の原則に反する」(同)ともいい、陰謀の気配を感じ取っているようだ。全世界のカトリック教徒には無視できない発言だろう。
17日には、欧州委員会がウクライナを正式なEU加盟候補国として承認するように勧告した。しかし、フランスのマクロン大統領は、「ウクライナのEU加盟手続きにはおそらく数十年かかる」(『マクロン氏「簡易版EU」提唱 ウクライナ加盟を想定』 2022/5/10 日本経済新聞WEB版)と語っており、実質的には現段階でのEU加盟はお断りの回答だ。英国以外の西欧諸国は、ウクライナから手を引こうとしているように見える。ドイツのシュルツ首相も、ロシアのプーチン大統領との対話を望んでいる(”German leader says it’s necessary to keep talking to Putin” 2022/6/18 Stars and Stripes)。「ウクライナはすでに、政府データの一部をポーランドにある特別なプライベートクラウド上に保管」(「ウクライナ政府、重要情報を国外に 露の攻撃に備え」 2022/6/15 ダウ・ジョーンズ配信)している。このようにポーランドに国家の重要部分を依存し、属国化が進むウクライナは、そもそも国家の体をなしているのだろうか?
一方、日本はNHKにロシアに対する謀略放送を行おうとする(「BBCやNHK、ロシアへ短波ラジオの放送枠広げる」 2022/6/11 日本経済新聞WEB版。)など、ロシアに対して攻撃的だ。NHKの国際放送は国から交付金が出ている(なぜ、国際放送に国から交付金が出ているのか | NHK よくある質問集(FAQ))ので、ロシアに対するNHKの放送は日本政府の意を受けてのものと見做せる。
ロシアは南千島での日本の漁業権を取り上げる可能性がある(「日本の漁業権取り上げも ロシア副首相、北方領土周辺で」 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。ロシアに南千島での漁業権を取り上げられれば、就労者の約4割が水産業に従事する根室市の人口はさらに減少するだろう。『1970年に4万5000人いた市の人口は、2万4000人まで減少した。ロシア側の漁業政策が変わるなどして漁獲量が減り、廃業する漁業関係者が増えて若者の働き口が減ったことが大きい。「漁業ができないと、ここに住むことができない、廃業になる。まもなく(人口は)2万人になる」と、旧ソ連に拿捕されたことがある飯作さんは言う。』(「アングル:ロシアに翻弄される漁業の町、北海道根室に再び試練」 2022/4/15 ロイター)。ロシアが根室半島を押さえれば、珸瑤瑁海峡の両岸がロシア領となり、ロシアが同海峡の通行をコントロールすることになる。トルコがボスポラス海峡・ダーダネルス海峡の両岸を押さえているようなものだ。室町時代、里見氏は房総半島南端の安房白浜に白浜城を構えていた。「ここは外房と内房とを繋ぐ海運の要に当たっており、山内上杉氏が伊豆・伊豆七島と一体的に支配していたところであった。鎌倉に復帰した足利成氏は、その山内上杉氏の海上支配の一角に楔を打ち込む形で里見氏を配置したのである」(「東国の戦国合戦 戦争の日本史 10」 市村高男著 吉川弘文館)とされる。水路の要を押さえることは地政学的に重要なのだろう。なお、「武総の内海」(東京湾)は河川を通じて「常総の内海」(香取海)と水運でむすばれており、当時としては物流に欠かせない地域だったことだろう。
バイデン大統領はムハンマド・ビン・サルマン皇太子は個別会談を行わないようだ(「米大統領、ムハンマド皇太子との個別会談予定せず 来月の訪問で」 2022/6/18 ロイター)。米国とサウジアラビアの関係修復は進まず、エネルギー問題も解決しないだろう。英国も食料安全保障に力を入れることになった(”UK Says It Will Prioritise Food Security as Global Prices Soar” 2022/6/13 Bloomberg)。日本政府も食料安全保障に力を入れるというが、他国のことに関わるより、自国のことにもっと力を入れた方がよいのではないのか?