投資家の目線

投資家の目線449(帝国主義論とTPP)

 ホブスン著「帝国主義論」(岩波書店 矢内原忠雄訳)を読んで気になったところがある。上巻(P106~P107)で「侵略的帝国主義は納税者には甚だ高価につき、製造業者及び貿易業者には甚だ価値が少く、国民にとっては甚だ重大な測り知れない危険を孕むものであるが、投資家にとっては大きな利得の源泉であって、彼は自己の資本のため有利な用途を国内に見つけることが出来ず、従って彼の政府が彼を援助して有利かつ安全な投資を国外になさしむべきであると、主張するのである」(元の漢字は旧字体だが変換できないので現代のものを使用)と書いている。

 ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授は、TPPは貿易協定ではなく投資協定とみるべきだとしている。投資家にとって有益なTPPを、立教大学の郭洋春教授が「21世紀版経済帝国主義」と呼ぶのも分かる気がする。投資家だけに有益な協定は、社会にとってバランスが悪すぎるかもしれない。

ジェーン・ケルシー教授 札幌講演会 議事録 2011年7月13日 (未定稿)

http://tpp.main.jp/home/wp-content/uploads/f11537ecb20216a3baf1a64784ba2bbe.pdf


 また、2014年1月26日の日本経済新聞朝刊の「現代アラブ社会、反政府運動の要因さぐる―加藤博、岩崎えり奈著」に対する書評で「第2部では11年に長期政権を崩壊させたエジプトの「革命」について、貧困との関係を掘り下げる。小麦という基礎食料を輸入に頼っているため、国際価格の変動が庶民の台所を直撃すると説明。00年代後半の急速な物価上昇が「一時的な貧困者」を増やし、革命の伏線になったと説く。」とあったのも気になる。TPPにも関連するが、社会の安定を目指すのなら食糧自給率についてもっと議論を深めたほうがよいと思う。
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