投資家の目線

投資家の目線920(尹大韓民国大統領の訪日)

 先日、尹大韓民国大統領が訪日され、シャトル外交の再開など日韓関係改善が期待されている。ズビグニュー・ブレジンスキー著「Strategic Vision」(p93)には、” A US decline would confront South Korea with painful choices: either to accept Chinese regional dominance and rely further on China to act as the guarantor of security in East Asia, or to seek a much stronger, though historically unpopular, relationship with Japan, because of their shared democratic values and fear of aggression from the Democratic People’s Republic of Korea or China.”(米国が衰退すれば、韓国は痛みを伴う選択を迫られることになるだろう。中国の地域支配を受け入れ、東アジアの安全保障の保証人としての行動を中国にさらに依存するか、それとも、歴史的には不人気ではあるが、彼らが共有する民主主義的価値観と、朝鮮民主主義人民共和国または中国からの侵略への恐怖から、日本との関係をより強固なものにするかのどちらかだ。)と書かれている。朝鮮戦争のとき、日本は半島に送る兵士や軍事物資の兵站を担っている(「朝鮮戦争と兵隊・武器・弾薬を輸送した旧国鉄の戦争協力 - 徳山喜雄|論座 - 朝日新聞社の言論サイト」 2020/7/3)。朝鮮民主主義人民共和国との対立からすれば、日本との関係改善は大韓民国にも利益はある。

 

 しかし今回の日韓関係改善は、対ロシア包囲網の形成の一部と考えた方がよいだろう。地中海側のスエズ運河の入り口、エジプトにおける「アラブの春」では、当時のヒラリー・クリントン国務長官の電子メールの内容からオバマ政権はムスリム同胞団を支援していたと見られている(『バイデン勝利で中東諸国が警戒する「第2のアラブの春」』 2020/11/26 ニューズウィーク日本版)。黒海側のロシアの隣国ウクライナでは、選挙で正当に選ばれたヤヌーコヴィッチ大統領を引きずり下ろした「マイダン革命」には、ヌーランド米国務次官(当時国務次官補)が関わっていた(「プーチンが覚醒させた世界各国のナショナリズム」 2022/6/13 東洋経済オンライン)。エルドアン政権は、2016年のトルコのクーデター未遂事件にアメリカ合衆国が関わっていたと主張している(『トルコ内相「16年のクーデター未遂の背後に米国」 米国務省は否定』 2021/2/4 ロイター)。紅海の出口、アデン湾を臨むソマリアには米軍が駐留している(「米軍、ソマリア再駐留へ バイデン氏がトランプ前政権の決定覆」 2022/5/17 BBC)。日露戦争の時、バルチック艦隊は日韓間のコリア(対馬)海峡を通ってウラジオストクへ向かった。津軽(サンガルスキー)海峡の両岸は日本領。ウラジオストクから太平洋に出るにはラ・ペルーズ(宗谷)海峡経由でクリル(千島)諸島へ向かうしかルートがなくなる。大陸西側でのロシア包囲が失敗続きなので、極東でなんとか汚名返上したいという勢力がいるのではないか?迷惑な話だ。

 

 ポーランドやアメリカ合衆国と緊密に連携する大韓民国は、日本に対して優位に立っている。にもかかわらず、元徴用工の日本企業に対する賠償を財団に肩代わりさせるという、日本政府に配慮した解決法を推し進める尹大統領は「大人の対応」をなさったのだと言える。『米国は解決策を高く評価しており、在韓米商工会議所のジェームス・キム会長は8日、秋慶鎬企画財政相との懇談で「後押しするため財団に寄付する。会員企業にも支援を促す」と表明し』(「徴用工解決策、韓国調査で過半数が反対 米会議所は財団に寄付」 2023/3/10 時事通信)ており、この解決法を潰すことは、アメリカの顔を潰すことになる。

 

 中米のホンジュラスは台湾と断交し、中華人民共和国との国交を結ぶようだ(「中国と外交関係樹立を指示 ホンジュラス大統領」 2023/3/15 日本経済新聞電子版)。ホンジュラスの対応は、失敗続きで無能な西側諸国に愛想が尽きたためではないだろうか?アメリカ合衆国内でも、今年に入って鉄道脱線事故がオハイオ州で2件(「米オハイオ州で再び脱線事故が発生」 2023/3/5 SPUTNIK)、ウエストバージニア州で1件発生した(『109両編成の貨物列車が“脱線”し炎上 線路脇の「岩肌」が崩れ… アメリカ・ウェストバージニア州』 2023/3/9 日テレNEWS)。国内の物流の影響を与えると考えられる。また、特に2月3日のオハイオの事故では有害物質が漏れて、住民の健康や環境への悪影響が出ている(「米オハイオ州列車脱線、有害物質の除去命令 環境保護局」 2023/2/22 日本経済新聞電子版)。銀行の経営破たんも相次いでいる(『米国発「金融危機」が起こる? 3銀行連鎖破綻は米経済悪化の前兆か エコノミストが指摘...「FRBの過剰な引締めで、すべての銀行の収益が悪化」』 2023/3/13 j-castニュース)。バイデン政権に代表される「ワシントン政治」がウクライナにかまけて国内問題に目を向けなければ、自国の人民にも愛想をつかされるのではないだろうか?

 

追記:

2023/4/17

「一八七五年には、日本と条約を結び、サハリン全土をロシア領と認めさせるかわりに、ウルップ以北のクリル諸島を日本にゆずることにした。これによってクリル諸島(千島列島)はすべて日本の領土となったので、オホーツク海から太平洋にでるロシアの海軍艦船は日本領の島のあいだをぬけなければならなくなった。このことで国内には批判が出た。」(「ロシア史 新版世界各国史22」 和田春樹編 山川出版社p240)

ロシアの北方四島周辺での演習は、日本がクリル諸島へ侵攻し、ウラジオストク等への入り口を封鎖するような真似をさせないためのものだろう。

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