「イスラム金融」(吉田悦章著 東洋経済新報社 p50~p63)によれば、イスラム金融には投資・損益分配型のムダラバ(出資金を投資し利潤を配当として還流)、ムシャラカ(共同出資、ベンチャー・ファンドによる出資に類似)等、商品等取引介在型のムラバハ(銀行による売買代行)、イスティスナ(発注者に代わって銀行が業者に先払い)、イジャラ(リースに類似)等がある。旅客機はリースも多いので、ガルーダ航空のスクークはリースとほぼ同じイジャラによるものだろうか?
「イスラム債、遅れる統一基準」には、スクークの債務不履行の例として12年のインドネシアの海運会社ベルリアン・ラジュ・タンカー、17年のUAEのエネルギー企業ダナ・ガスが挙げられていた。ダナ・ガスのものは英国法で規制される国際スクークで、英国の裁判所はダナ・ガスに保有者に対して返済させる判決を出したが、同社はUAEの裁判所に提訴し、国内のイスラム金融の解釈変更によりシャリア準拠でなくなったため返済義務はないと主張、最終的には法廷外で債務再編に合意したという。
「イスラム金融」(p211)にはイスラム金融に対する慎重論として「シャリア学者によってシャリアの解釈結果が異なり、取引の適格性も変わってくるため、取引の不確実性が高い」というものがある。ダナ・ガスの例はそれに当たるのではないだろうか。
同じく慎重論として、同書(p205)には「昨今のイスラム金融の成長は、たまたま原油高で急増した需要に引っぱられただけであり、原油価格が元に戻れば市場は萎む」というものもある。しかし、「イスラム債、遅れる統一基準」によれば、S&Pは「原油価格が上昇し、財政赤字が縮小していても、湾岸諸国の一部は資金調達のため利用し続ける。コロナで見送られていた設備投資を実行するために、資本市場へのアクセスが必要となる」とみて、年内のスクークの成長を見込んでいるという。
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