ライトは、「有機的建築」の理想を追及し92歳で亡くなるまで多くの建築作品を残しました。
世界の近代建築が、機能や合理性を求めている建築の流れの中で、「有機的建築」は誤って理解されたこともあったようですが、基本的にモダニズム※の流れをくむ建築です。
モダニズム建築(Modernism Architecture)
19世紀以前の様式建築を批判し、市民革命と産業革命以降の社会の現実に合った建築をつくろうとする近代建築運動により生まれた建築様式。
新しい建築を求めて各国でさまざまな試行錯誤が繰り返され、国を超えて大きな運動になっていった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ライトが巨匠と賞せられる所以をここに記しておきます。
彼の建築家としての重要性は、住宅作家として、人々の生活の拠点を作り続けたことでしょう。もちろん、住宅以外の公共的建築にも腕を振るったのですが、傑作の多くは住宅作品であったのです。
ライトは、1910年までの第1黄金時代には「草原住宅」を確立しましたし、1936年以降の第2黄金時代には「ユーソニア住宅」を次々に建てて、人間性豊かな住生活の保証に寄与したのです。
「草原住宅」というのは、アメリカ中西部の草原地帯にあって、住宅は大地に根を張り、地を逼うように創られて、自然と一体となることを目的とした住宅です。
また「ユーソニア住宅」というものは、一定の型こそ存在しませんが、「合衆国に生をうけた人々は、貧富の違いに関わりなく、豊かな生活をする権利がある」として、低廉な小住宅を設計していった彼の作品の総称です。ライトが、住宅の経済性のために、積極的にプレファブ化と取り組んだ事実は、未だよく知られていないことのようです。
ライトは無味乾燥なビルの林立する近代都市を嫌っていました。
人々の住まいは1エーカーの敷地に1家族が住むべきだとも提唱しました。
人間生活の豊かさとは何かについて、真摯に取り組んだが故に、ライトは巨匠であり、偉人であり得たのです。
自然の破壊、人間性の欠落が問題になっている昨今、ライトの主張は重要な意味をもってわれわれに迫ります。
機能性の追求のみで豊かな人間性は保証されないとして、「有機的建築」の理想を実践した彼の設計態度は、いまこそわれわれに、大きな指針と啓示をあたえてくれるものというべきでしょう。
出典:ヨドコウ迎賓館 見学の栞「F.L.ライトについて」 日本大学教授 谷川正己 抜粋
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