復刻された、かつての少年月刊誌「少年画報」、昭和35年の正月号を紹介するシリーズ、その11。
付録紹介としては、その9。
今回は、別冊付録の中の1冊、「イナズマ君」。
作者は下山長平さん。
私は不勉強ながら下山さんに関する知識は、まったく無い・・と言ってもいいので、少し調べてみた。
下山さんは大正12(1923)年9月10日の生まれらしいので、ご健在であれば、失礼ながらもうかなりの高齢になる。
活躍された時期といい、世代といい、絵柄といい、まさに「昭和の漫画家」だ。
この「イナズマ君」は、ジャンルでいうと「柔道マンガ」であろう。
柔道マンガというと、「暗闇五段」「柔道一直線」や「柔道讃歌」「YAWARA」、「柔道部物語」「一二の三四郎」など、他にも色々ある。
この「イナズマ君」は「柔道一直線」よりも前に発表されていた作品。
柔道一直線は、梶原一騎さん原作作品だけあって、絵柄は劇画系だった。
だが、この「イナズマ君」の絵柄は、劇画というよりも、やはり「マンガ」らしい絵柄だ。
この作品の前にあった柔道マンガというと、「イガグリくん」などがあげられるのであろうが(筆者は「イガグリくん」はよく知らない・・)、どちらかというと絵柄的には、そちら系のほうが近いかもしれない。
「柔道一直線」などで、柔道マンガは絵柄がよりリアルになって、それまでの柔道マンガと全体的に絵柄が変わったように思う。
その意味では、「イナズマくん」は、柔道一直線などで柔道マンガの絵柄が変化する前の作品で、古き良き時代のマンガの絵柄で描かれている。
今の感覚で読むと、ほのぼのとした絵柄である。
これ一冊読んだだけでは、細かい設定までは分からないので、あまり作品全体像までは踏み込めない。
イナズマに投げられた印郷太郎(いんごうたろう)を見た、太郎の父は長屋の大家であることをいいことに、自分の所有する長屋に住んでいるイナズマ親子を長屋からおいだそうとする。
だが、太郎は一見嫌な奴そうだが、根っこはそんな嫌な奴でもなさそうで、父がイナズマを追い出そうとしてるのを嫌がった。あくまで、「うらみっこなし」の約束でイナズマと勝負したかららしかった。
一方イナズマ親子は、新たな住み家を探すが、中々見つからない。
その頃、イナズマの友人たちが町を歩いていると、映画館から出てきた太郎を発見。
そこで太郎は、イナズマの友人から、自分の父がイナズマ親子を追い出そうとしてるのを聞き、「ひきょう者」呼ばわりされてしまう。
ひきょう者になるのが嫌だった太郎は父のもとにいき、イナズマを追い出さないように頼む。
太郎の父が、息子から感謝されるとばかり思っていたので落胆しながらパチンコに興じていたら、不良学生たちにからまれて暴行を受けてしまう。するとそこにイナズマが現れ、太郎の父を救った。
すると、それがきっかけて、イナズマは長屋を追い出されなくてすむようになった。
また、太郎が、ひきょう者になりたくなくて、父のイナズマに対する仕打ちをいさめたことを知ったイナズマは、それをきっかけに太郎と和解した。
これでめでたしかと思いきや、イナズマに負けた不良たちは,自分らの通う柔道道場の若先生「蛇尾万心」に頼み、イナズマと勝負してもらう。
万心は強く、万心に投げられたイナズマは立ちあがれない・・・・というところで、この付録は終わっている。
イナズマのキャラは、まじめで優しくて、品行方正で柔道が強い・・・そんなキャラだ。
今読むと、かなり優等生的なキャラだが、当時の少年漫画の主人公にはそういうタイプが多かった感はある。
いわば、当時の「典型的な主役少年」であろう。
その後、マンガが更なる隆盛を迎えてゆくにつれ、漫画の主役少年は、この優等生的なキャラから、少しずつ変化したり、幅が広がったりしていくのだ。
当時の少年漫画のキャラはこういうのが主流だった・・という観点で読むと、時代性を感じて、いいかもしれない。
この別冊付録の裏表紙には、
「おもしろい単行本が第1巻より第11巻まで発売中です」
と書かれてある。
11巻まで出ていたとうことは、けっこう人気があった作品だったのだろう。
ちなみに、当時の単行本の値段は・・・95円!
この、単行本の値段相場には、作品の内容以上に時代の違いを感じてしまった・・。
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