チューリップが「魔法の黄色い靴」でデビューした時、その音楽性や曲調で、当時の邦楽界ではそこそこ話題になったと思う。
だが、一般的な浸透度という意味では、ブレイクするまでには至らなかった。
もちろん熱心なファンはいたけど。
その後「一人の部屋」というシングルなども出たが、私は「一人の部屋」はどうしても好きになれなかった。
だが、ご存知「心の旅」には一発で飛びついた。この曲こそ、チューリップをメジャーに押し上げる大ヒット曲となった。
この曲にほれ込み、当時のチューリップのベスト盤を買った私にとって、そのアルバムは愛聴盤になった。
あ、「一人の部屋」は、相変わらず好きになれなかったけど(笑)。←シツコイ。
で、その後、彼らのアルバムをしばらく追いかけることになる。
ベスト盤の後、「テイクオフ」「ぼくがつくった愛のうた」「無限軌道」まで買った。
「心の旅」の後のシングル「夏色の思い出」には、「心の旅」の二番煎じ感を覚えて(実際、「夏色の思い出」の歌詞は、そのまま「心の旅」のメロディにぴったり乗ってしまう。お暇な方、試してみてください)、一発屋で終わってしまうのではないかと危惧を覚えた。
続いて出たシングル「銀の指輪」は「夏色の思い出」に比べたら「心の旅」と曲調は変わったが、シングルとしては少し弱い気もした。
だが、そのあとに出た「青春の影」。これが良かった。「心の旅」の幻影を完全にぬぐい去った名曲で、この曲でチューリップの地位が不動のものになったといえるだろう。
で、今回取り上げる「たえちゃん」という曲なのだが、この曲は、アルバム「無限軌道」に収められていた曲だ。
大作だった。長かった。アレンジや曲調は、かなり凝っていた。メロディも親しみやすかった。
だが・・
それ以上に・・
歌詞のインパクトが、当時の私にとって強烈だった。
なんでも、福岡・筑前の古い伝承歌が元になっている歌らしかった。
アルバム「無限軌道」には内省的な歌が多く、心に染み込むような良い曲が多数収められていた。
あの名曲「サボテンの花」を生んだのも、このアルバムだった。
だが、この「たえちゃん」という曲の存在感の前では、「サボテンの花」ですら、かすんでしまうような気もした。
それほど、この「たえちゃん」はインパクトが大きかった。
しかし・・・この「たえちゃん」は、その歌詞が問題視され、放送禁止になったらしい。
たえちゃんという女の子が、悲恋のせいで自殺してしまう歌なのだが、歌詞に出てくる自殺の方法がけっこうリアルだった。
また、歌詞の中に出てくる「三途の川で待っててね」というフレーズは、強烈だった。
こんなフレーズ、歌の歌詞によく盛り込んだものだ・・と思った覚えがある。
こういう歌詞が出てくるポップス、そうはない。
なので、新鮮でもあったのだが、と同時に不吉なものも感じたものだった。
また、このフレーズに更に追い打ちをかけるような強烈な歌詞が、この後に出てくる。
それは
「三途の川で 〇しましょ 」(さんずのかわで マルしましょ・・と歌う)
という個所。
マルしましょ?
マルって・・・〇って・・・一体何?
おそらく、〇・・・マルってのは、伏字のことなのだろうが(違うかな?)、その〇には、具体的にはどんな言葉が入るのか?
などと思うと、この歌の謎度が更にアップした。
しかも、その「〇しましょ」という歌詞が、何度か繰り返されるに至っては・・。
いやはや、インパクト絶大だった。
さらにまた。
この曲の構成がまた印象的で。
冒頭は静かに始まるのだが、そのあとミドルテンポで曲が進み、途中でまるで夢遊病のような・・・ふわふわした曲調になる。
で、またミドルテンポにもどったかと思うと、終盤では、疲れ果てたような曲調で、抽象的な歌詞がけだるく並び、そのバックに少しサイケなアレンジが施されている。
メロディの親しみやすさ、悲恋、自殺、謎、悲しさ、幻想感、そしていくばくかの不吉さ・・・・・など、色んな要素がこの曲にはある。
まるで自殺を勧めているように思える・・と捉えられたのが理由なのか、それとも、固有名詞がいけなかったのか、あるいは他に理由があったのか、この曲は・・・・放送禁止になってしまったようだった。
曲としては、チューリップの挑戦作とも思えるし、意欲作・野心作にも聞こえるし、間違いなく大作だし、問題作でもあるし、相当この曲に彼らが力を入れていたのが聴いてて分かる。
放送禁止になったのが、まあある程度理解できる気もするが、と同時にこれほどの曲なのだから、もったいないとも思った。
よく、こんな曲を作ったもんだと思った。
聴いてて圧倒された曲であった。
個人的には、この「たえちゃん」は、異色作にして、名曲だとも思っている。
今でも・・・たまに、無意識のうちに、この曲の冒頭の部分を口ずさんでしまうことがある。
それほど、この曲は私の中に染み込んでいる・・ということなのかもしれない。
ともあれ、チューリップの曲の中では1位2位を争う問題作、異色作ではあると思う。
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