時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

たえちゃん   by  チューリップ

2012年05月12日 | 音楽全般

チューリップが「魔法の黄色い靴」でデビューした時、その音楽性や曲調で、当時の邦楽界ではそこそこ話題になったと思う。

だが、一般的な浸透度という意味では、ブレイクするまでには至らなかった。

もちろん熱心なファンはいたけど。

その後「一人の部屋」というシングルなども出たが、私は「一人の部屋」はどうしても好きになれなかった。

だが、ご存知「心の旅」には一発で飛びついた。この曲こそ、チューリップをメジャーに押し上げる大ヒット曲となった。

この曲にほれ込み、当時のチューリップのベスト盤を買った私にとって、そのアルバムは愛聴盤になった。

あ、「一人の部屋」は、相変わらず好きになれなかったけど(笑)。←シツコイ。

で、その後、彼らのアルバムをしばらく追いかけることになる。

ベスト盤の後、「テイクオフ」「ぼくがつくった愛のうた」「無限軌道」まで買った。

「心の旅」の後のシングル「夏色の思い出」には、「心の旅」の二番煎じ感を覚えて(実際、「夏色の思い出」の歌詞は、そのまま「心の旅」のメロディにぴったり乗ってしまう。お暇な方、試してみてください)、一発屋で終わってしまうのではないかと危惧を覚えた。

続いて出たシングル「銀の指輪」は「夏色の思い出」に比べたら「心の旅」と曲調は変わったが、シングルとしては少し弱い気もした。

だが、そのあとに出た「青春の影」。これが良かった。「心の旅」の幻影を完全にぬぐい去った名曲で、この曲でチューリップの地位が不動のものになったといえるだろう。

 

で、今回取り上げる「たえちゃん」という曲なのだが、この曲は、アルバム「無限軌道」に収められていた曲だ。

大作だった。長かった。アレンジや曲調は、かなり凝っていた。メロディも親しみやすかった。

だが・・

それ以上に・・

歌詞のインパクトが、当時の私にとって強烈だった。

なんでも、福岡・筑前の古い伝承歌が元になっている歌らしかった。

アルバム「無限軌道」には内省的な歌が多く、心に染み込むような良い曲が多数収められていた。

あの名曲「サボテンの花」を生んだのも、このアルバムだった。

だが、この「たえちゃん」という曲の存在感の前では、「サボテンの花」ですら、かすんでしまうような気もした。

それほど、この「たえちゃん」はインパクトが大きかった。

 

しかし・・・この「たえちゃん」は、その歌詞が問題視され、放送禁止になったらしい。

たえちゃんという女の子が、悲恋のせいで自殺してしまう歌なのだが、歌詞に出てくる自殺の方法がけっこうリアルだった。

また、歌詞の中に出てくる「三途の川で待っててね」というフレーズは、強烈だった。

こんなフレーズ、歌の歌詞によく盛り込んだものだ・・と思った覚えがある。

こういう歌詞が出てくるポップス、そうはない。

なので、新鮮でもあったのだが、と同時に不吉なものも感じたものだった。

また、このフレーズに更に追い打ちをかけるような強烈な歌詞が、この後に出てくる。

それは

「三途の川で 〇しましょ 」(さんずのかわで マルしましょ・・と歌う)

という個所。

マルしましょ?

マルって・・・〇って・・・一体何?

おそらく、〇・・・マルってのは、伏字のことなのだろうが(違うかな?)、その〇には、具体的にはどんな言葉が入るのか?

などと思うと、この歌の謎度が更にアップした。

しかも、その「〇しましょ」という歌詞が、何度か繰り返されるに至っては・・。

いやはや、インパクト絶大だった。

 

さらにまた。

この曲の構成がまた印象的で。

冒頭は静かに始まるのだが、そのあとミドルテンポで曲が進み、途中でまるで夢遊病のような・・・ふわふわした曲調になる。

で、またミドルテンポにもどったかと思うと、終盤では、疲れ果てたような曲調で、抽象的な歌詞がけだるく並び、そのバックに少しサイケなアレンジが施されている。

 

メロディの親しみやすさ、悲恋、自殺、謎、悲しさ、幻想感、そしていくばくかの不吉さ・・・・・など、色んな要素がこの曲にはある。

 

まるで自殺を勧めているように思える・・と捉えられたのが理由なのか、それとも、固有名詞がいけなかったのか、あるいは他に理由があったのか、この曲は・・・・放送禁止になってしまったようだった。

曲としては、チューリップの挑戦作とも思えるし、意欲作・野心作にも聞こえるし、間違いなく大作だし、問題作でもあるし、相当この曲に彼らが力を入れていたのが聴いてて分かる。

放送禁止になったのが、まあある程度理解できる気もするが、と同時にこれほどの曲なのだから、もったいないとも思った。

よく、こんな曲を作ったもんだと思った。

 

聴いてて圧倒された曲であった。

 

個人的には、この「たえちゃん」は、異色作にして、名曲だとも思っている。

 

今でも・・・たまに、無意識のうちに、この曲の冒頭の部分を口ずさんでしまうことがある。

それほど、この曲は私の中に染み込んでいる・・ということなのかもしれない。

 

ともあれ、チューリップの曲の中では1位2位を争う問題作、異色作ではあると思う。

 

 

 

 

 

 


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