私の初の自主制作アルバム「空を見ていた。」の録音中には、あらかじめ想定していなかった、レコーディング現場で急に思い立って入れた音がある。
そういう作業は、けっこう楽しい。
例えば、「もっと早くで会えていたら」に出てくる、打楽器みたいな音。
曲のギターパートを入れ終わり、どうしてもパーカッションの音が欲しくなり、我慢できなくなった(笑)。
だが、スタジオ内には打楽器は無かった。
モニタールームでソファに座りながらサウンドチェックをしてた時に、音源を聴きながら足や手でリズムをとっていた私。
その時。
手で思わず叩いてしまったソファの音に、私は目をつけた。いや、耳をつけた(笑)。
ソファを叩くと、叩き方によっては、「この音、使えるかもしれない」と思えた。
そこで。
ソファをなるべく低い音が出るように手の平の角度を変えて、曲に合わせて叩き、それをそのまま録音してもらった。
すると、そのソファの音を、エンジニアが一心不乱に加工し始めた。
エンジニアは、元はドラマーだったらしく、なんとかそのソファーの音を打楽器っぽくしようとしてるのだった。
しかも、相当こだわりがあったらしく、かなり悪戦苦闘し、それなりの長い時間をかけて、細工していった。
なんか、執念にも近いものを感じた。
でも、私のサウンドに、そこまでこだわりを持ってエンジニアとしての仕事をこなしてくれてる姿が、嬉しかった。
エンジニアの苦心の末に出来上がったソファの音は、こうして明かさなければリスナーはソファの音とは思わないかもしれない。
とはいっても、ちゃんとした打楽器ではないことは確かなのだけど(笑)。
ともあれ、つくづく、レコーディングにおけるエンジニアの大切さを実感したものだった。
ちなみに、エンジニアさんは沖縄出身らしく、レコーディングの合間に、私と沖縄音楽談義になった。
私にとって沖縄音楽というと、まず真っ先に出てくるミュージシャンの名前が、佐渡山豊さんである。
で、佐渡山さんの話をふってみたところ、なんと・・・!
その人が子供の時から、佐渡山さんと知り合いだったという。
これにはビックリ。
いやはや、どこで何がどう繋がるか、分からないものだ。
また、オープニング曲では、入れる楽器であれこれ迷った。
当初、カバキーニョという民族楽器を入れるつもりで、スタジオに持っていったのだが、いざそれを入れてみると、どうも収まりが悪かった。
カバキーニョの独特な音が勝ち過ぎて、また、それが安物だったせいで、どうにも音程が不正確。
その不正確さがかえって独特な音世界を紡ぎだす楽器もあるのだが、「Boy in the sky」というオープニング曲では、私の用意したカバキーニョはあまりにも「浮いて」しまった。
なので、同じくらいのサイズの楽器ウクレレを使うことにした。
念のために持っていったウクレレだったが、本命のカバキーニョが合わなくて、補欠で持っていったウクレレのほうが勝ってしまったというわけである(笑)。
もっと高級なカバキーニョだったら、曲に合ったのかなあ。それは試してみないと分からないが・・。
遊びで買った楽器でも、使いどころさえ間違えなければ使えるものだとは思うけど、いずれにしろ、私のカバキーニョは千載一遇の活躍のチャンスを失ってしまった。
人間だったら、きっとスネてるに違いない(笑)。
写真は、我が家のカバキーニョ。
一見ウクレレのようにも見えるが、ウクレレもカバキーニョも元は同じ楽器が起源となっているらしい。
ちなみに、インドネシアの小さな弦楽器であるクロンチョンも、ウクレレやカバキーニョと同じ起源を持つそうな。
クロンチョンも我が家にあるが、おもちゃのような安価で買った1品なので、実用化にはほど遠い。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます