
録音スタジオでレコーディングしていて、今更のように実感したことが、いくつもある。
理屈としては自分なりに分かっていたことではあっても、あらためてそれをリアルに実感した事柄だ。
それは・・以下の通り。
1、エンジニアとのコミュニケーション。
誰の音楽であれ、その録音を担当するエンジニアにとっては、その作品はエンジニアの作品でもある。
共に「良いものをつくろう」と思ってくれる存在。
いわば、パートナー。
コミュニケーションは極めて大事。
2、中途半端に弾いてた部分は、すべて「あらわに」なる。
ごまかして弾いてた部分は、すべてメッキがはがれ、その部分が自分にとって苦手な奏法の箇所だった場合、それは進行を遅らせ、時間の浪費にもなる。
自分にできることを確実にやることが大事。
普段「音色」でごまかしていた場合は、特に。
エフェクターなどに普段頼っていると、そのエフェクト音でごまかせてる場所があるから。
音色にこだわるのは、悪いことではないし大事なことでもあるが、まずは曲の構成や、「くう」箇所などを、どの部分でどういう風に「くう」のかハッキリさせておく。
3、アドリブで対応できると思うな。
アドリブで必ず最高のフレーズを毎回編み出すことができるようなら、それで食っていけてるはず。
また、楽器に慣れるにつれ、また、その楽器キャリアの年数によっては、「手癖」というものがでてくる。この「手癖」というものはクセモノ。
意識しないまま手癖で弾いてると、多重録音の場合、毎回リズムを「くう」個所や、「ためる」個所、ノリなどが違い、トラックごとに不揃いの演奏になってしまうので要注意。自分のキャリアにそれなりに自信を持ってる人ほど、プライドが高かったり、頭が固かったりで、この問題は大きい。
4、ノーギャラで友情参加してくれる人を呼ぶのは、諸刃の剣。
これは、レコーディングのスタッフに助言されたこと。ノーギャラで参加してくれる友情は実にありがたい。
だが、その演奏がもしも不調な演奏だった場合、ミックスの段階で、せっかく友情参加の人が弾いてくれたトラックでも、音をひっこめたり、細工したり、場合によっては使わないこともある。すると、せっかく来てくれたのに、申し訳ない気持ちにもなる。
人間誰しも、好不調の波はある。
ノーギャラで友情参加してくれる人に頼むなら、せめてソロの部分だけにしておいたほうが無難。
サウンドの核となる1曲通してのバッキング演奏を頼むのは、それなりに負担になるし、よく考えたほうがいい。バンドなら別だけど。
友情参加してくれる人と、その録音の名義人とでは、録音スタンス・・・録音にかける意気込み(準備も含めて)が違うものである。
5、練習スタジオに来るような気持ちで、録音スタジオに来てはいけない。
録音スタジオでは、「いきなり本番」である。
録音スタジオで練習などするのは、金がかさむだけである。
6、曲の構成表を持参して、エンジニアに渡す。
当初私は「歌詞」だけを渡していたが、コード表も準備しておくのは大事。エンジニアは自らもミュージシャンである場合が多いので、コード譜を渡したほうが分かりやすい。
7、一人で音を重ねて録音する場合、リズムのテンポを、あらかじめメトロノームなどで決めておく。
例えば、「この曲は♪120」 ・・などのように。
これをあらかじめやっておいたので、それに費やす時間を短縮できた。
曲というのは、その日の気分でテンポが微妙に変わることがあるので、標準となるテンポを把握しておくのは、後々大事。
8、ミストーンは何度も演奏しなおすことで解消できるが、テンションの高い演奏や歌唱ができるのは、最初の数テイクである。
多少ミスがあったとしてもテンションの高いテイクを採用するか、ミスは無くてもテンションの落ちたテイクを採用するか・・の選択を迫られる時がくる。
個人的には、多少のミスがあっても、それが致命的でない限りは、テンションの高いテイクのほうが魅力あると思う。
9、同じフレーズを何度も繰り返す箇所がある場合、それが難しくミスりやすいフレーズの場合は、すべての箇所でミスがなくテンションも高い生演奏をすることを目指すよりも、時間短縮のために良いテイクをコピー&ペーストで入れ込んだほうが効率的なことがある。もちろん、ミスがなくテンションも高い演奏がベストであるのは言うまでもない。
また、良かれと思って考えていたフレーズでも、音を重ねてみたら、和音的には間違ってなくても、実際に音が重なると濁って聞こえる場合がある。
あらかじめ代案を、保険のような感覚で持っておくと、いざという時に役立つ。
10、録音ブースに入ると、かなり緊張する。特に最初はそうだ。狭いブースに入り、窓の向こうのエンジニアルームからエンジニアやスタッフが、ブースの中の自分を見ていて、自分の演奏をジ~~ッと見たり聴いたりしてチェックしている。しかも、細かい箇所まで。
まな板の上の鯉のような心境になることもあるし、ブース内の人間は、エンジニアルームにいる人たちのちょっとした表情や反応が非常に気になるものである。とはいえ、相手は敵ではないので(笑)、意見は素直に受け止める。
よく、練習でできてることの半分でもライブでできれば上等だ・・・と言われるが、ことレコーディングに関しては、更にその上を行く。
練習でできてることの半分でもライブでできれば上等なら、更に、ライブでできてることの半分もレコーディングでできれば上等・・・かもしれない。
練習は間違ってもいい気楽さがあるから気楽にノビノビ演奏できるし、試したり遊んだりもできる。
ライブだと勢いやノリや雰囲気によっては、それで突き進むこともある。
だが、レコーディングとなると、サウンドの完成形が頭のなかにイメージとして出来上がっていないと、話にならないし、ゴールが見えない。
・・とまあ、きりがいいところで、ざっと10ポイントほど書いてみたが、この他にも「実感したこと」はけっこうある。
だが、きりがなくなるので、ここではこのへんにしておく。
とりあえず・・・理屈では分かっていたことでも、いざ実体験の段階になると、些細なことの重要性を改めて実感することになった。
もしも、「いつかスタジオレコーディングを!」と考えてる人の、少しでも参考になれば。
何度もスタジオレコーディングしてる人にとっては、ここで書いたことは至極当たり前のことだろう。
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なお、問い合わせがあったのですが、私の自主制作アルバム「空を見ていた。」は、ショップなどに流通はしていないのです。
すみません。
このアルバムに興味を持って下さる方は、私にメールをください。
私自身の手書きのメッセージを添えて、発送させていただいております。
よろしくお願いします。
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