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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

ある愛の伝説  by スティーヴィー・ワンダー

2016年05月09日 | 音楽全般

ある愛の伝説 by ステイーヴィー・ワンダー

(原題「Love's in Need of Love Today」)

 

この曲は、スティーヴィー・ワンダーの世紀の名作「キーオブライフ」の冒頭に入っていた曲だ。

 

このアルバムを買ったのは、ある年の大みそかだった。その頃の私は、小遣いやバイト代のほとんどを、洋楽・邦楽のアルバムを買いこむことに費やしていた。

年末などは、冬休みに入るとすぐにバイトをはじめ、12月30日までやっていた。

で、貰ったバイト代や、食費を削って貯めたお金、そしてお小遣いなどの合計で、大みそかにアルバムを一気に何枚も買いこみ、そのアルバムを聴きながら正月を過ごす・・そんな年末年始を当時の私は毎年過ごしていた。

 

で、「キーオブライフ」が出たころの年末も、そうだった。

その年の大みそかで狙っていたアルバムは、サンタナの「ムーンフラワー」と、ジョージ・ベンソンの「ブリージン」、そしてスティーヴィーの「キーオブライフ」だったと思う。

計3枚のアルバムを買ったことになるが、実は「ムーンフラワー」は2枚組だったし、「キーオブライフ」に至っては2枚組半のボリュームだった。

2枚組半・・・というのは、パッケージの中にLP2枚と、4曲入りEPが1枚入っていたからだった。

なので、実質的には、5枚半ものアルバムを入手したことになった。これだけあれば、正月はバッチリに思えた(笑)。

 

昼間軽く大掃除などをして、はやる気持ちでレコード店に行き、上記のアルバムを買ってきて、夕方頃から聴き始めた。

 

実は、その大みそかの深夜には、地元の友人たちと喫茶店に集まることになっていた。

カウントダウンの瞬間を喫茶店で皆で迎え、その後車に分乗して初日の出を見るために遠出することになっていた。

 

喫茶店には23時過ぎくらいに私は行くつもりだったので、その前に風呂にも入っておきたかったし、当然夕飯も済ませておかねばならなかった。

となると、5枚半ものアルバムを聴き返す時間はなかった。とはいえせっかく買ったアルバムなのだから、どれも1回は通して聴いておきたかった。

というか、5枚半もあるボリュームだから、どれも1回づつ通して聴くだけで、いっぱいいっぱいだった。

「キーオブライフ」「ムーンフラワー」「ブリージン」。どういう順番で聴き始めたか、よく覚えていない。

深夜の集合のこともあったし、さしあたって駆け足気分で聴いたのは覚えている。

 

スティーヴィーに関して言えば、「キーオブライフ」の前に発表されていたアルバムはどれ、も素晴らしかった。

「トーキングブック」「インナービジョンズ」「ファースト・フィナーレ」。

特に「インナービジョンズ」と「ファーストフィナーレ」は大のお気に入りだった。

スティーヴィーにとっては、まさに創造性のピークの時代だったのではないだろうか。どのアルバムも名盤の誉れが高く、実際グラミー賞を数多くとっていた。

名盤続きのアルバムを発表してだけに、この新作にも相当な期待がかかっていたはず。

プレッシャーもあったのではないかとも思うのだが、スティーヴィーはこの「キーオブライフ」で、更なる高みに到達してみせた。

 

 

新作を名盤にするためには、録音した曲の中から厳選し、アルバム収録曲を決めるものだと思うのだが、アルバム用に録音した多数の曲どれもがグレードが高く、捨てられない。

その結果2枚組半というパッケージになったのではないか。

まさに、溢れる才能の泉状態だったのだろう。

 

このアルバムをその後何度も聴いて、私が改めて思ったことは、膨大な収録曲どれもがグレードが高いのはもちろんだったが、似たような傾向の曲がなかった・・という凄さであった。

 

お気に入りミュージシャンの新作アルバムというのは、いつもワクワクするものだ。

ましてやそれまで名作続きでグラミー賞を取りまくっていたスティーヴィーの新作である。

音楽雑誌などでのこのアルバムのレビューでも、極めて評価が高かった。だから私のワクワク感はなおさらだった。

 

1曲目に、どんな曲が出てくるのだろう。2枚組半にも及ぶ超大作の幕開けだから、ツカミという意味できっと派手目な曲や、シャープな曲や、キャッチーな曲が出てくるんだろうな・・と思って、針を落とした。

 

すると・・

 

あれ?

意外に・・・アカペラで、おだやかな幕開け。

普段の日常のようにさりげない感じで、語りかけるように「キーオブライフ」は幕を開けた。

その幕開けの曲こそ、「ある愛の伝説」であった。

あまり力んでいる印象はなく、むしろ余裕すら感じる印象で、曲は進んでいった。

決して「どうだ!」という感じではなかった。

それまでのヒット曲のキャッチーさが頭の中にあったので、私は一瞬「大作の割には、少し地味目な幕開けかな」とも思ったが、メロディの親しみやすさや優しさに、少し幸せな気分になりながら、聴き進んだ。

根底は穏やかな曲調なのだが、曲が進むにつれスティーヴィーのボーカルのテンションは上がっていく。

それにつれて、リスナーである私はどんどん引きこまれていった。

こういう始まりもあるんだなあ・・などと思いながら。

 

前述の通り「キーオブライフ」には様々なタイプの曲が入っている。しかも2枚組半ものボリューム。中にはシャープな曲もあるし、可愛い曲もあるし、キャッチーで派手な曲もあれば、ノリノリな曲もあるし、じっくり味わう曲もあるし、オリエンタルな曲もあったりする。

どれも魅力的で、アルバム全体の内容の濃さに、リスナーはノックアウトされることだろう。

捨て曲が無く、様々な傾向の曲があるために同じような曲がなく、しかもどれも名曲揃い。へたしたらグレイテストヒットアルバムよりも、こちらのほうが充実しているのではないか?とさえ思える。

というか、もしこれが他のミュージシャンだったら、このアルバムそのものがベストヒットアルバムにもなりえてしまいそうだった。

 

以前HPの方でも書いたが、私が初めてビートルズのホワイトアルバムを聴いた時、私はその内容の幅広さに多大なる影響を受け、精神的にも決定的に圧倒された。それ以来ビートルズのアルバムの中で私が一番好きなのはホワイトアルバムをあげることにしている。

このスティーヴィーの「キーオブライフ」は、ホワイトアルバム以来の幅広さに思えた。

ただ、スティーヴィーがスゴイのは、ビートルズが4人のメンバーでホワイトアルバムを作りあげたのに比べ、スティーヴィーはたった1人でそれをやってのけた点だ。

 

 

 

この「ある愛の伝説」は最初に聴いた時にも親近感を感じたが、それ以上に、この曲は「聴けば聴くほど好きになれる曲」であった。

俗的に言えば、「噛めば噛むほど味の出る、スルメのような曲」であった。

あらためて、ステイーヴィーの作品の幅広さに、良い意味で私はうちのめされてしまった覚えがある。

 

 

ともかく、スティーヴィー・ワンダーの「キーオブライフ」が世紀の名作であり、彼の金字塔作品であることは間違いない。

彼の作品には名盤が多いが、その中でも傑作の中の傑作、最高傑作が「キーオブライフ」だと私は思っている。

天才スティーヴィーの創造性のピークであり、後から後から傑作曲が湧きあがってきていた、音楽史上でも貴重な記録でもあったろう。

聴けば、その才能に圧倒されるであろう。

 

そして。

「ある愛の伝説」は、「キーオブライフ」の記念すべきオープニング曲なのだ。

アルバムを聴き始めると、この「ある愛の伝説」の後に次々と広がる「キーオブライフワールド」がリスナーを待っているのだ。

 

ロック、ソウル、ポップス、ジャズ、フォーク・・などなど世の中には様々な音楽ジャンルがあるが、どんなジャンルも飛び越えてしまう翼を、このアルバムは持っている。

まさに、音楽史上に残る名作・・と呼ぶにふさわしい。

 

https://www.youtube.com/watch?v=FGZYWSfiYbM

 

 

 なお、写真はCDで買い直したジャケット。

 


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