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小学校の頃、私が草野球で遊んだのは、某寺の裏手の空地だった。
空地とはいっても、平らではなく、ちょっとした隆起のある地形で、斜面になっていた。その地にはところどころ木々も生えており、その根っこが地面から飛び出していた。
斜面の地形に、地面はやや凸凹もしていた。
なので、たとえ子供の遊びレベルであれ、草野球をやるには、決して適した地形とは言い難かった。
でも、他に草野球をやれそうな場所はなかった。
もしもやるとしたら、校庭解放で解放された「学校の校庭」くらいしかなかった。
だが、校庭解放だと、解放された校庭は、基本的には「皆仲良く使いあいなさい」だったから、野球のような「スペースが必要になる遊び」はやりづらかった。
だいいち、先客がいることも多かったし。
近くに、例えば多摩川のような大きな川でも流れていて、しかも川べりが広ければ、そこで草野球などをやるにはもってこいなのだが、あいにく近くにはそういう環境もなかった。
なので、斜面で、しかも凸凹した地形であっても、某神社の裏手の空地でやるしかなかった。
あいにくの立地の空地だったので、そこで野球などをやる人もいなかったので、たいがい「空いていた」。
まあ、だから、そこで草野球で遊べたのだろう。
ひょんなことから、その空地のあった場所に、近年行く機会があった。
で、懐かしいなあ、ここで小学校時代に草野球をやったなあ・・などと思いながら、その「空地」だった場所に近付いてみたら・・・あらら?
柵で囲われて、中に入れなくなっていた。
そしてその柵の中には、工事用のプレハブが建てられ、業者の車が何台も止まっていた。
よく見ると、地面は整地されたらしく、平らになっていた。もう斜面でもなければ、凸凹もなかった。
そこが長らく「空地」であり続けられたのは、寺の境内の一部であったからなのだろう。
もちろん、その場所が、元々隆起のある場所で、木々の根っこも飛び出していて、凸凹した斜面であったから・・というのもあっただろう。
そこが元々平らな場所であったなら、たとえ寺の境内の一部であったとしても、とうの昔に「再開発」の名のもとに整地されていただろう。
今にして思えば、たとえ空地であったとしても、そんな悪条件の空地でよく草野球なんてやっていたものだ・・と思う。
だが、そんな悪条件の場所であれ、整地にかなりの費用がかかるのにも関わらず、開発の手が入ったのだ。
そういう場所でも利用しないと、場所が他にない・・ということなのだろう。
都心に場所を確保するというのは、やはり大変なのだろう。
だから、高層ビルも増えるんだろう。
高層ビルなら、上にフロアを足すことで場所は縦に「新設」できるわけで。
もしも、場所を横に広げるとなると、隣の土地を買い上げたりしないといけないわけで。
しかも、隣の住人や地主が同意しない限り、それはできない。なので、ハードルは高い。
その結果、スペースを縦に確保しようとして高層ビルが増えたおかげで、ヒートアイランド現象にも拍車がかかった・・という問題も起きていて。
もっとも・・仮に土地を横に広げられるような状況だったとしても、横に広げた土地の上に建てた建物にも、さらに上のフロアを足してしまうような気もするが(笑)。
ともあれ。
立地の悪さから放置されて、開発の手を逃れていた場所にも、ついに手が入った。
かつて草野球をやって遊んでいた凸凹の斜面は、柵で覆われて、立ち入り禁止になっている光景は・・・寂しいものがあった。
東京にはもう、子供が自由に入れる「空地」など存在できないのだろう。
その柵の中は、車が何台もおかれ、地面がコンクリートで平らに整地され、普通の工事現場になっていた。
そんな凸凹の斜面で子供たちが草野球をやっていたことや、そこがちょっとした憩いの場所になっていたことなど、工事関係者にとってはどうでもいいことだろう。
彼らは仕事で、その場所に何の思い入れもないまま、おかまいなしに事務的に作業を進めているのだろう。
まあ、現場の人間がそれを好んでやっているわけでもなく、かといって嫌がるわけでもなく、仕事だからやっているだけなのあろう。
また1か所・・場所が消えた。過去の彼方に。
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