今回取りあげる曲は、ダイナマイツの「トンネル天国」である。
ダイナマイツは、一応GS(グループサウンズ)のブームの時に出てきたバンドで、くくりとしてはGSのひとつとされている。
だが、サウンドや曲調を聞くと、他のGSとは一味違う感じだ。
他のGS・・・例えばタイガースやテンプターズやスパイダースにあった「アイドル系」の要素が、その曲からは、さほど強くない。
タイガースやテンプターズなどの他のGSには、曲に歌謡曲らしさもあったが、ダイナマイツの「トンネル天国」は歌謡曲というより、よりロックっぽい。
そんな点も、この曲を密かに愛する人が多い理由なのかもしれない。
私はタイガースなどの歌謡曲的な雰囲気の曲も好きだったが、ダイナマイツのこの曲も結構ワイルドな感があって好きになった。
もっとも私が「トンネル天国」を知ったのは、GSブームが去って長い年月がたってからだったが。
なので、この曲をリアルタイムで私は聞いていたわけではない。
後で聴いて「お、この曲いいねえ」と思った次第。
と、同時に「当時、こういうバンドもいたんだなあ」とも。
一応グループサウンズのひとつとして登場したダイナマイツであったが、後になって特筆すべき点といえば、このバンドには山口富士夫がいたという点ではないだろうか。
山口富士夫は、後に「村八分」などのロックバンドを組んで、日本のロックの黎明期に活躍した名ギタリストだ。
ダイナマイツをリアルタイム体験できなかった私としては、後になってダイナマイツのメンバーを見て、山口富士夫が居たことに、当時驚いた覚えがあった。
山口富士夫に対する私の個人的なイメージとしては、骨太で、どこかパンクな活動をしていたロックギタリスト・・・そんな印象を持っている。
ヒットチャートに登ってくるようなタイプの音楽ではなく、どちらかというと反商業主義的な音楽で、ワイルドなライブを中心に活動していた人・・・そんな印象。
ちょっと調べてみたのだが、彼は日本人の母とイギリス人の父の間に生まれ、幼少期は孤児院で過ごしていたらしい。
黒人の血が入っていたようだ。
バンド活動の方は、断続的だったようだ。でも、一番知られていたバンドは、前述の「村八分」であったろう。
私が当時買っていた音楽誌でも、「村八分」はよく取りあげられていたことを覚えている。
だから、私にとっての山口富士夫は「村八分」のイメージが大きい。
そんな山口富士夫がかつてGSのバンドにいた・・ということは、けっこう意外ではあったのだが、山口が在籍したGS「ザダイナマイツ」が歌って演奏していた曲「トンネル天国」のサウンドを聴いた時、「やはり他のGSとは一味違っていた」と思ったものだった。
この「トンネル天国」の作詞作曲はプロの作詞家と作曲家によるもの。
作詞は橋本淳 、作曲は鈴木邦彦。
歌詞などは、いかにもGSという感じの歌詞。
曲はキャッチーでポップだ。
でも、サウンドを聴いてみると、全体的にロックっぽさはある。
他のGSの曲には、どこか少女漫画風な要素もあったが、「トンネル天国」にはそれを感じない。
メロディと、サウンドが特に。
叩きつけるようなドラム、そしてファズ(?)の効いたエレキギターのフレーズが、今聴いても中々かっこいい。
山口富士夫のロックっぽさが、この曲をぐっとかっこよくしていると思える。
強いてあげれば、途中の「若い僕らの~」のあたりは、当時のGSらしさはあるかな~という感じか。
出だしの「♪トンネル抜けて~~ 」の部分など、一回聴いたら、つい口ずさんでしまう。
私など、この出だしのハーモニーの入り方には、どこかビーチボーイズの「バーブラアン」の出だしを連想してしまう。
かと思えば、曲のアレンジの一部に、ビートルズの「ツイストアンドシャウト」あたりをも彷彿とさせるものも感じる。
だからこそ、私はこの曲が好きなのかもしれない。
なんでも、今でもこの曲をカバーする若手ロックバンドもいるという。
そういう意味では、この曲は日本のロックのクラシックと言ってもいいのではないだろうか。
この曲はダイナマイツの代表曲であり、出た当時スマッシュヒットはしたようだが、例えばタイガースの曲のようにチャートの上位に食い込むほどではなかったらしい。
また、ダイナマイツというグループ自体も、当時スーパーブレイクしたというほどではなかったようだ。
だが、知る人ぞ知る名曲であり、日本ロックのクラシック、それがこの「トンネル天国」だと思う。
ちなみにこの曲のシングル盤の裏面の曲「恋はもうたくさん」の方は、当時の歌謡曲っぽさのある曲で、いかにもという感じの当時のGSっぽい曲。
なんでも、当初は「恋はもうたくさん」がA面候補だったらしいが、ファンの意見や人気で、「トンネル天国」のほうがA面になったらしい。
そういう意味では、ファンの耳は肥えていたと思う。
ダイナマイツのリアルタイムファンには、「お目が高い」と私は言っておきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=ApNSwowBCxY
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