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耳元で風を切る音が聞こえる――暗闇の帳に包まれた森の中を駆け抜けながら、フィオレンティーナは唇を噛んだ。
自分の脚で移動するのならば、特に道路にこだわる必要は無い――こうして堕性の魔力の方向に一直線に突っ切ったほうがよほど早い。暗闇もさして問題にはならない――夜目には自信があるし、月明かりもある。
林の中は特に暑くもなく寒くもなく、走りやすかった――汗も出ない。
文字通り . . . 本文を読む
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カーナビの道案内に従って、ヤナギダ司祭が車を走らせている――もっとも十数分前からカーナビもしゃべることが無いのか沈黙を保っており、ヤナギダ司祭とシスター・マイも緊張感のためか口数が少ない。フィオレンティーナ自身もさほど口数が多いほうではないので、結果車内はお世辞にも快適とは言えない沈黙を保っていた。
窓の外の光景から人間の生活圏に満ちた光が失われ、代わりに物寂しげな夜の山間道 . . . 本文を読む