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「――それで、どうすればいいんですか」
エンジンをかけたままのライトバンの運転席に乗り込んで、フィオレンティーナはそう尋ねてきた。アルカードはブレーキペダルを指差して、
「俺が合図したら、ブレーキを何度も踏んでくれ。そのあと、俺が声をかけるから、そうしたらブレーキを三回踏んで止めてくれ。踏んだままでいい。しばらくしたら、踏んでる抵抗が無くなると思う――そうしたら離していい。その . . . 本文を読む
「ああ」 アルカードは背もたれに体重を預けて脚を組むと、
「たぶんな――リッチーと一緒に、彼の相棒も殺されてる」
「でも、第八位の聖堂騎士が、昼間に戦って吸血鬼に後れを取るなんて――」 フィオレンティーナのうめきに、アルカードが適当に肩をすくめる。
その写真を一番後ろにやって次の写真を出すと、今度は別アングルの写真だった――事切れたブラックモアの頭を踏みつけにして身体を反らして笑う、赤毛の吸血鬼 . . . 本文を読む
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玄関のすぐそばにある階段を昇ると、階段の正面と左右に扉があった――開け放ったときの干渉を防ぐためだろう、引き戸になっている。
階段を昇って右だと言っていたから、こちらだろう――胸中でつぶやいて、フィオレンティーナは右側の扉を開けた。
ちょうどリビングの真上あたりになるのだろう。結構広い部屋だが、一階だけですべての用が足りるのか、家具のたぐいはなにも無い――扉の正面と右側に窓 . . . 本文を読む
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目が醒めたのは、朝だった――血液不足で頭がくらくらしたが、それは仕方無い。驚くべきだったのはむしろ、窓から差し込んでくる朝日が苦にならなかったことだろう。
朝日が目障りに感じられたのは、ただ単にまぶしかったからだった――その事実に安堵しながら、フィオレンティーナはベッドの上で身を起こした。
日当たりのいいベッドのサイドボードに、いくつか腕時計が置いてある――すべてカシオのG . . . 本文を読む