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ええと、あとは――手元のメモに視線を落として、アルカードは周囲を見回した。
陳列棚の向こう側に『塩・調味料』の看板を見つけて、そちらに向かって歩き出す。
先日フィオレンティーナに襲われた、例のショッピングセンターの食糧品売り場である――食糧品の買い出しに来たアルカードは、買い物籠の中に食糧品を満載にしていた。
ちなみにジーンズの尻ポケットには、エコバッグとか入っていたりす . . . 本文を読む
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「――ッ!」 声にならない悲鳴をあげて、フィオレンティーナはベッドから跳ね起きた――まるで全速力で数十キロも走った後の様に、全身が汗で濡れている。
まるで実際に体験したかの様に鮮明に――口の中に血の臭いすら感じられそうなほど強烈なリアリティを残した淫靡極まり無い夢に、両手が知らず知らずのうちにシーツの耳を握り締めている。
荒い息を吐きながら、フィオレンティーナは口元に手を遣っ . . . 本文を読む
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歩いている――どこかを歩いている。繁華街なのは間違い無い――どこなのかはわからなかったが、日本なのは確かだ。そこらじゅうに設置された派手に装飾された看板に、カタカナや漢字が書かれている。
ああ、そうか――
これは自分の意識ではない。視線を転じた先のショーウィンドウに映りこんでいる自分の姿を目にしてフィオレンティーナは納得した。
露出度の高いぴっちりした、誤解を恐れず言えば . . . 本文を読む
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「失礼します」 ノックのあとにそう言って入ってきたのは、二十代の前半の若い女性だった――薄く化粧をした整った顔立ちの、色香匂い立つ様な文句無しの美女だ。薄いグレーのパンツスーツを身につけている――彼女はそのままフィオレンティーナの傍まで歩いてくると、握手を求めて手を差し伸べた。
「貴方が聖堂騎士フィオレンティーナ? 警視庁特殊現象対策課の立花深冬警視です」
「トクシュゲンショウ… . . . 本文を読む
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三匹の仔犬たちが、人気の無い公園の砂場でじゃれまわっている――管理人部屋が砂で汚れるのでアルカードはそれにいい顔はしないが、それでも止めるつもりは無いらしく、砂場で転げ回っている仔犬たちをアスレチックの横木に座って眺めていた。
手持ち無沙汰なのか、仔犬たちの綱をカウボーイみたいにひゅんひゅん回している。落ち着かないのか頻繁に脚を組み替えていた。
普段彼が座っているのは砂場を . . . 本文を読む