「お腹が空いていたのだもの。喉も渇いていたし。最初は手近に倒れていたアハロンの血を吸ったんだけれど。死体の血ってなんだか不味いのよね。屋敷の中を探していたら、兄様と一緒になって、ふたりでここに来たら母様がまだ生きていたから、とりあえず美味しく戴いたってわけ」
これは――なんだ? あの虫も殺せない様な性格の、モニカが口にしている科白なのか?
眩暈に似た感覚を覚えながら、彼は一瞬だけ部屋の中を見回 . . . 本文を読む
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――ギャァァァァッ!
――ヒィィィィッ!
――あぁぁぁッ!
手にした漆黒の曲刀が、悲痛極まり無い絶叫をあげる――苦痛を、恐怖を、絶望を訴えて。
鼓膜ではなく頭の内側に直接響くその絶叫を聞きながら――ヴィルトールは襲いかかってきた園丁の若者の体を一撃で斬り斃した。横薙ぎの一撃で胴体を輪切りにされた園丁の体が回転しながら宙を舞って床に叩きつけられ、薙ぎ倒された下半身が為す術 . . . 本文を読む
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シンが工事現場に足を踏み入れたのは、あの金髪の吸血鬼――『正体不明《アンノウン》』が姿を消してから三十秒後のことだった。満身創痍で動くこともままならないネメアとアヤノ、トウマがコンクリートの上で倒れ臥している。
すでに香坂の気配は消え、傷口にまとわりついた呪素は消失しつつあった――『正体不明《アンノウン》』が香坂を殺したか、あるいは呪いを維持する程度の余力も無くなって、呪素が . . . 本文を読む