Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

配信『シャーロック・ホームズの冒険』

2022-11-19 10:27:00 | 映画
懐かしい。
このドラマ、NHKの日曜午後11時、海外ドラマ枠で放送されていたのはいつだったでしょう。(検索すれば)1984年から94年にかけてのようです。(日本放映は1年後)

NHKの海外ドラマは基本、吹替でした。
ホームズ役は露口茂さんじゃなかった?
が、今回のGYAO!配信は字幕。
ジェレミー・ブレットの生声を聴けるのは嬉しいけど、ワトスンの吹替、長田裕之と知れば、ちょっと残念。

霧のロンドン、ベイカー街221。
行き交う四輪馬車、馬の蹄が石畳にたてる音。
2階の窓から眺めるホームズ。
テーマ音楽。

でも、放映当時は戸惑ったのを覚えています。
中学生の頃夢中になったホームズはもちろん小説で、勝手に想像を膨らませていたわけなんですが、もっと私好みの秀才顔だった。

(初恋の人だったかも知れません。とにかく、頭の切れる人がカッコよかったのです。今なら、怪盗ルパンに魅力を感じるかも。頭の良さより人間味に惹かれます)

いやいや、ジェレミー・ブレットのホームズは、原作に最も近い、生き写しと言われる程だとか、私の想像の方が間違っていたんです。
コカイン中毒。
紳士である反面、感情の起伏が激しい。
まさにそれがホームズだった。

でも30代の私は想像と違うとばかり、観るのを辞めてしまったのです。

それから40年
今は古き良きものに出会った思いで観ています。
ジェレミー・ブレットは亡くなってしまいました。
いろいろあったのですね。

『シャーロック・ホームズはなぜ外見だけで人を見抜けるのか』(斉藤勇 宝島社新書)も、借りて読みました。
ノンバーバル・コミュニケーションのあれこれ、昔は興味あったかも知れませんが、もう人の思いはいいです。


そのドラマ、毎日配信されるので観ても観ても追いつかず、放映終了までに見終えるられるか、今はそんなことが心配なのです。



映画『すずめの戸締まり』

2022-11-17 19:53:00 | 映画
椅子はどうして三番足なんだろう

新海誠監督の『すずめの戸締まり』



近所のシネコン、東宝シネマズのスクリーンを9つも使って上映する作品は滅多にあるものではなく、
それだけ世間の期待を背負っているのだと思えば、
人気者の宿命のようなものすら感じる新海誠監督。
若いのに(50歳は私より若い)
童顔なのに、しぶとい。嬉しい。

アニメは漫画、なんて言う世代もあるでしょうが、
別の言い方をすれば、その分若い人の支持を受けやすいわけで、市場価値は高い。

さて、作品ですが、
『天気の子』や『君の名は。』では、生活シーンでの細部描写に私はグッときたわけですが、(例えば自販機の喫茶店とか、マックの夕食とか、ラブホの夜とか)、今回はスッキリしている分、無駄がないというか遊びに欠けるというか、主人公の生活描写に時間が割かれていないのは、ちょっと不満ではありますが。
ストーリー的には分かりやすく、厚みに欠けるのは否めない、
けれど、
それを差し引いても、
着想が面白かったんです。
原作はないのですから、ゼロからの発想ですよね。

主人公の名は、すずめ。
地下のエネルギーは、ミミズ。
災害をもたらす〈後ろ戸〉
イケメンの仮の姿は3本脚の椅子。

この椅子は、すずめの母の手作りの椅子。脚はどこで無くしたんだろう。
(たぶん)東日本大地震で一度は津波に飲み込まれ、母を亡くしたように、片脚をなくして椅子は戻ってきた。
その〈欠落〉?

誰も挑戦者の頃が1番いい。
新海誠監督の頂点がここだとするなら…
わかってはいても、これも順番。
かつて宮崎駿監督が映画の世界を席巻したように、今は新海旋風。
でもいつかは終る。


椅子の謎は、生涯の宿題。

かな。







配信『希望のかなた』

2022-11-07 09:52:00 | 映画
偶然見かけて、
何となく見始めて、
気付けば最後まで観ていた。

フィンランド・ヘルシンキが舞台らしいことはわかった。
確か解説にあった。
でも、映像にそれらしさはなく、
地味で、
美男美女は出ず、
難民と高齢者離婚を背景にした真面目な作品だった。

石炭に埋もれて密入国したアレッポは、シリア難民。言葉にも不自由している様子。フィンランドに来たのは全くの偶然で、追われて隠れた貨物船がヘルシンキ行きだったのだ。

一方、冴えない中年男ヴィクストロムは、鍵と指輪を女の前に置いて、家を出る。
女は黙って酒を飲み、指輪は灰皿に捨てる。
ずっと無言だ。
なのに状況がわかってしまうのが、すごい。

2人の男に、はじめ接点はなく並行して描かれるが、シリア難民の方が行き場をなくしてゴミ捨て場を寝ぐらにしようとし、ヴィクストロムと出会う。
彼も含め、フィンランドの人たちは地味に暖かい。
難民を突き放さない。
過度に甘やかしもしない。
その空気感がよくて、気付けば癒されていた。
シリア難民のアレッポは、ネオナチの男に襲われるし、警察は杓子定規だし、決して優しい国ではないのに。

いいところも悪いところも描いて、淡々としている感じがいかにもフィンランド的だと思った。
見終えた後にアキ・カウリスマキ監督と知る。
兄のミカ・カウリスマキの『世界で一番しあわせな食堂』もフィンランド的善良さの溢れる作品だった。

どこか時代遅れで、洗練されていなくて、気取らなくて、普通に生きる。
なかなかそれが難しいと最近思うから、余計心に沁みたのかもしれない。


配信『ラ・ラ・ランド』

2022-11-05 12:45:00 | 映画
もちろん公開時には映画館で観ているし、話題作だったので「観た、観た」と言った記憶もある。
アカデミー賞もたくさんもらった。



なのに、あまりいい印象がない。

今回はGYAO!配信をタブレットで観る。
無料版なのでCMばかり。
それでも自分の部屋で、寛いで観られる効用は大きい。
だって、感動してしまったのだ。
それとも〈6年後〉だから?
夢にピリオドを打ち、現実に即した思考をする今だからこそ、このストーリーにグッと来た?

音楽もいい。
ダンスも魅せる。
映像は美しく、おとぎ話のようだ。
そこそこシビアだがロマンチックは忘れず、夢に批判的だが夢に生きている、そんなファンタジーだ。

若い頃、映画は一度観れば充分だと思った。でも今は何度でも観たい。
繰り返しの鑑賞に耐える映画が、よい映画。
観るたびに意味が変わる。
そんな映画に一本でも多く出会いたいと思う。

いい映画は気持ちのありようを変えてくれる。
思いがけず、前向きになれた。
ありがたい。


映画『天間荘の三姉妹』

2022-11-05 11:05:00 | 映画
『アムステルダム』を観る予定でした。
思いがけず視聴してしまった『天間荘の三姉妹』
やっぱり気弱になってます。
理解を求めています。
消化不良になるかもしれない映画よりは、〈わかりやすい〉邦画に流れる。

実はちょっとウツ気味で、何もやる気が起きない、未来時間に希望を持てない状態になっていて、
ブログや日記の更新はやめ、最低限の義務だけこなして生きてました。
LINEのお付き合いも、面倒くさいのでパス。でも、何とかしなければとの思いはあり、こうして映画観て気分転換を図ろうとしているのです。
そんな邪道な観方ですみません。

結果から言うと、気分は晴れませんでした。脱日常を図れるほどの作品ではなく、かといって気分が悪くなるような描写もなく、淡々と長い映画を見終わったわけです。でも、それがよかったのかもしれません。
知らなかったのですが、東日本大震災で犠牲になられた方々の鎮魂のストーリーでした。
生と死の間にある天間荘、そこに来るのは臨死状態の人。ゆっくり時間をかけて来し方を振り返り、死か生かを選ぶのです。

ヒロインは「のん」さん、ゆっくりしたペースに合わせるかのように、作品もゆっくり進みます。
姉の大島優子さん、門脇麦さん、高良健吾さん、朝ドラでお馴染みの人たちを劇場で観ることで、同時代に生きることを確認する。それもいいもの。
脂の乗った寺島しのぶさんの演技。
貫禄の三田佳子さんは先達です。

打たれ弱くなったのか、言いたい放題の孫に腐されて落ち込んだり、急遽、3歳児のお弁当を作ることになって慌てたりのウツなんです。
老人性、季節性、何でもいいけど、気持ちに振り回されるのは、やることがないから。それをまず受け入れなくちゃ。
70代は老いを受け入れることから始まるのかも。
ゆっくり時間をかけて死に向かう、
私も天間荘の住人なのかもしれません。