長野の片田舎で自給自足の生活を送る老作家と若い女性編集者との一年、
と書いてしまうと、つまらないです。
老作家の生き様を見るのが目的でしたから。
松たか子さんは(たぶん)映画的演出でストーリーを動かすための駒に過ぎないのでしょう。
映画館に来ている人は100%老人です。
皆さん、老いた人間の身の処し方は気になるのです。
更に主演は、あのジュリーなのですから。
ああ、お互い歳をとりました。
太っても鯛、沢田研二はさすがの貫禄、声の艶やかさは、全く老いを感じさせません。
ショーケンやジュリーに青春を持って行かれたGS世代の私は、こうして歳月の流れを感じるわけです。
さて映画。
長野に古い民家を見つけてから、土井善晴氏監修のもと、かまどでご飯を炊いたり、畑で野菜を作ったり、筍を掘ったり、茗荷を摘んだり、撮影に一年数ヶ月を要したといいます。
二十四節気を軸に、冬から冬への1年間、義母とのエピソードを挟みながら、淡々と描きます。冬から始まるのは、やはり生活の困難さが伝わるからでしょう。
この義母を奈良岡朋子。
変わり者で小屋に独居、生活ぶりもマイペースですが、この義母がよかった。
犬と二人暮らしのツトムに、「あのバカ犬」と容赦なく言い、山椒味噌は自分だけ食べてツトムには分けない。
その犬こそ亡き娘の形見であるらしい。その名も「サンショウ」
(私は)大将だとばかり思ってました。
妻が亡くなって十数年、遺骨と共に暮らしたツトムも自らの健康に陰りを知り、湖に散骨するのですが、それを恋人のマチコ(松たか子)には語らないのですね。
ひとりで人生を全うすることに決めてからのツトムの生活、死ぬつもりで寝て再生することの繰り返し。
いいですね…
原作者の水上勉さんは痩せて聖者のような趣でしたが、沢田研二は色っぽく声は艶々している。
期せずして?原作の趣とは全く別の映画に仕上がったようで、それが何故か嬉しかったのです。
そんなに簡単にくたばってたまるか、
そんな境地でしょうか。
来場者特典の栞をもらいました。
明日の読書会のテーマ本『珈琲屋の人々』に挟みます。
しっかりコーヒーを頂きながら読み、明日に備えます。