Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

DVD『八月の狂詩曲』

2022-11-01 15:25:00 | 映画
吉岡秀隆が出演しているというので鑑賞。
彼はまだ若く、大学に入ったばかりという設定。

黒澤明監督の作品だし、まあ間違いはなかろうとの思いで借りたのですが、ならどうしてリアルタイムで観なかった?というギモンは残ります。
まあ、当時は子育てに忙しくそれどころじゃなかったのでしょう。

さて、何の前知識もなく観たのですが、
これは長崎への原爆投下の意味を問いかけた、重い作品でありました。
誰も晩年になれば、既成の価値観に倚かかりたくなるものですが、クロサワも〈反戦〉〈反核〉というテーマに、無難にまとめたのか。
アソビの少ない作りを支えているのはおばあちゃんと4人の孫たちでした。
吉岡の頼りないキャラも、よく合っていて、子どもたちをメインに据えなければ、つまらない作品だと思います。
どの子もちょっとお行儀が良すぎましたが。

ところで長崎といえば、キリスト教のミサが大晦日や原爆記念日には映し出されます。が、ハワイやリチャード・ギアを出しながら、祈りは般若心経なのです。
しかも、謎の一節「ぎゃーてーぎゃーてー はーらーぎゃーてー」が繰り返し唱えられ。
自由に行け、というような意味らしいのですが、おばあさんたちが声を揃えて読むお経は、なまじな祈りよりも迫力がありました。

実は吉岡秀隆がオルガンを弾きながら歌うシーンも期待していたのですが、音程の狂ったオルガンがやっと直った時、歌う声は狂っていたという設定はおかしい。
そしてラストシーンで、今度は児童合唱団らしき声の「童はみたり〜野中のバラ」
うーん、これが正解はいいとして、これで終わり?
この歌にどれほどの意味があったのか、最後までよくわかリませんでした。

おばあさんと子ども。
人生の始まりと終わりの自由な時間。

本当はそれを描きたかったんじゃないか。
私はその部分しか楽しめなかったけど、まあそれでいいか。


映画『マスカレード・ホテル』

2022-10-23 19:22:00 | 映画
公開当時は、まさか観るとは思わなかった。小説で十分だと。
確かに映像化の意味はあまり見出せないけれど、暇つぶしに観るにはもってこいだった。
壊れたと思っていたPCが思いがけず復活していて(それを確かめるためにかけたDVDが『シン・ゴジラ』、3度目だ。さすがに今回は自衛隊や米軍の戦闘能力、仮想敵が現れた場合の対応力を思う。ウクライナ侵攻のせいかも)

つい嬉しくなってレンタルビデオ店に走ったのは、そのため。
『マスカレード・ホテル』『Dr.コトー診療所 2004年版』などを借りる。
映画は私にとって最後の娯楽、これからは気楽に付き合おうよ。

さて、早速『マスカレードホテル』を観賞。



キムタクよりも長澤まさみが好き。
但しキムタクのスター根性みたいのは凄いと脱帽する。何を演じてもキムタクになってしまうのは相変わらずだけど、それも戦略、スターの宿命みたいなもの。
顔ぶれはさすがに豪華で明石家さんまって、どこに出ていた?とエンドクレジット見て思ったのは私だけではなかったようだ。検索ワードになっていた。

小難しいことを考えずに、2時間つぶせたことに、単純に感謝たい。





映画『沈黙のパレード』

2022-10-21 16:25:00 | 映画



小説は2度読んでいるし、ガリレオシリーズは配信で楽しんだ。
でも、〈映画館へ行く〉という行為がやめられない。
プチソロ活の雰囲気も少々、ランチに何を食べようかと思うのも、初めだけとは思いつつもドキドキする。







フードコートで特売の豚焼きそば539円。
長田本庄軒というお店。
写真慣れしていなくて手ブレ(笑
時間までアイスコーヒーいただきながら、
『一橋桐子(76)の犯罪日記』を読む。
これは土曜ドラマの配信観ていたら面白くて、小説で先走ろうという魂胆だ。

さて、映画。



ガリレオ先生は相変わらずイメージを崩していないし、北村一輝の草薙も、柴咲コウの内海薫もそのまま。
ミステリで人間的に老いることは御法度なの?
謎解きがメインだから。
でも、さすがに小説を2度も読んでいるので、先が読めてしまうのはどうしようもなく。
映画化するの早すぎませんか?
もう少し忘れてからにしてほしかった。
(先に読む方が悪いのか)

個人的には酒向芳が出色だった。
『検察側の罪人』で強烈な悪人顔を見せられ、その影響を引きずっていたら、どんでん返しくらってしまった。
ミステリ映画になくてはならない俳優だ。
こういう驚きは映画ならではかな。
映画と小説は別物、ミステリでも近い将来、きっとそうなるだろう。

映画化するなら、キャラクターを独り歩きさせ、思い切り人間的にするのも一案か。
小説の東野ファンを安心させないためにも。

映画『耳をすませば 実写版』

2022-10-19 14:27:00 | 映画
10月14日公開。


映画館は7月の『ジュラシックワールド』以来なので期待も大きかった。

ジブリのアニメ版を子供部屋の小さなTVで観たのは20年以上前だ。
当時はまだ児童文学の夢を捨てきれず、私も書くことに悩んでいたっけ。
通っていた中部児童文学会ではダメ出しばかり、才能ないなぁとめげていた。
今から思えば夢があるだけマシだったし、才能はなくて当たり前だったのだが。

アニメの『耳をすませば』は、ジブリ好きの次男が買ったDVDで観た。
読書好きの主人公・雫が住むのは狭い集合住宅。図書館司書のお父さんは立花隆が声を吹き替えていた。
生活感に溢れ、それが自身の過去を見るようで、つい入れ込んでしまったのだ。
ちなみに相手役の聖司は高橋一生(声)、バイオリンを弾く。
小説(物語)を書く雫を応援し、10年後の再会を約束して話は終わる。
実写版はその続きなのだろうか。

実写版の雫は清野菜名、聖司は松坂桃李。
雫は東京で売れない小説を書きながら編集者、聖司はイタリアでプロのチェリストを目指している。
テーマは遠距離恋愛に変わってしまっている。
ルームシェアする友人なども登場し、映画というよりドラマ風。
マンガが原作で、アニメの続編という出自もあり、どうも登場人物のリアクションがアニメ(マンガ?)的に感じる。
大袈裟に「えっ!」と驚くセリフ、いるの?
登場人物に肉体が似合わない。
ふたりで歌う「カントリーロード」は、チェロ伴奏の「翼をください」に変わっていた。
演出は基本、前のままなので消化不良を起こしそうだ。
2次元の世界が、勝手に3次元になってしまった。
2人にとっての10年は何だったのか。
いや時間による変化ではないから、3.5次元というべき?

過去と現在、イタリアと東京を行ったり来たりしながら最後はハッピーエンド。

夢をあきらめない。
それがテーマ。
このブログを3ヶ月ぶりに更新しているのも、そのせいかもしれない。
歳を理由に、年寄りくさくなっちゃダメだよと、唯一変わらなかったネコのバロンに言われた気がした。

続けることの大切さを教えてもらった。
その意味で、いい映画だったのかもしれない。




映画『エルヴィス』

2022-07-02 16:42:00 | 映画
昨日、TOHOシネマズにて鑑賞。



プレスリーは子どもの頃のスーパースターだった。
が、それも海の向こうの話で、親近感は全くなく、彼はチャラチャラした男の代名詞でしかなかった。
あのもみ上げも派手な衣装も、軽蔑の対象。黄色い声を上げる女の子たちとは住む世界が違うと思っていた。
それは今でも変わっていないけれど。

でも映画なら観たい。
〈現象〉として当時を客観視してみたい。
それが接点なく同時代を生きたことだと思うから。

ファーストデイだったからか、同じ思いからなのか、年配男性の1人客が多かった。
どんな思いで受け止めたのだろう。
もしかして私と同じトム・ハンクス狙い?

オースティン・バトラーはエルヴィスになり切ったような好演だったし、マネージャーのトム・パーカー大佐がトム・ハンクスだとはしばらくわからなかったほど。
特殊メイクもあるだろうが、悪辣マネージャーになり切っていた。
トム・ハンクスといえば、最も好きな俳優の1人。トム・クルーズと並んで。
その彼が小狡い男になり切って、若いエルヴィスを手玉に取る憎まれ役なのだ。オスカーを再度手にした名優が、初めて演じる引き立て役。
彼のおかげで、エルヴィスが浮かび上がった。
悪辣で汚い立ち位置が、スターの脆さ儚さを強調する。

歌手の伝記風とはいえ、『ボヘミアンラプソディー 』とも違うし、ビートルズのそれとも違う。
レジェンドを謳い上げるのではなく、その裏側を描いているのは、もしかしたら主役は〈時代〉だった?
キング牧師が、ロバート・ケネディ上院議員が暗殺されたあの時代。
わずか半世紀前なのに、黒人差別問題がアメリカを揺るがしていたあの時代。
いや、わずかではないな。
今の若い世代はエルヴィスを知らないというから。
彼の活躍した時代を懐かしむことこそが、歳を取ったということなのだろう。
これも終活の一部なのだ。