或る双子座の日々

這是一個雙子座的生活日記。
つれづれなるままに

斜めの目

2005年10月06日 | ハンガリー(日常)
アジア人に生まれたのは、どうしようもない。分かっているけれど。

今日、路面電車に乗っていたら、小学校3,4年くらいの男児と母親が傍に
立った。最初は大人しかった子どもは段々空いてきて、私と対面する席が
あき、座ることができた。とたんに、指を使って両目のまなじりをあげて
引っ張り、醜い顔を作ってみせた。私の隣に座る母親は黙って目で怒って
いるようにも見えたけれど、何も言わず制止もしなかった。口に出して
叱ったらアジア人蔑視の仕草と認めることになってしまうから、誤魔化し
たかったのかもしれない。

以前、「ミツコ、斜めの目から見た世界」という日本人役のハンガリー人の
女性司会が出てくるインタビュー番組があり、日本人会その他の抗議を経て
放送中止になったことがある。さんざんバカげた質問やとっぴな要求をし、
何度も同じことを聞いたり茶化したりして相手を激怒させたり困らせたり
する。この司会者は実はハンガリーでは知性派で知られる超有名人。黒髪
でおかっぱのカツラと出っ歯を外して、ドッキリよろしく相手に正体を
明かして「なんだー、そうだったの?」とオチがつくというもの。

このことは日本にも報道され、巨大掲示版で騒がれたこともあり、関心は
高かったので記憶している方もあるかもしれない。そして、「パロディ番組
をパロディとして受け流せないなんて日本人に国際性が無いと認めるような
もの」「怒ってる日本人居住者はバカ」、「外国人の特徴を巨大な付け鼻やら
アフロヘアーのかつらやらで無邪気に模した姿は日本のテレビでも日常茶飯事
だから他人のことは言えない」という意見があったのも印象的だった。

でも、日本に居る限り、自分たちの特徴を目の当たりにさせられて不快なこと
はあまりないのでは。そういう目に遭遇して初めて揶揄されがちな黒人さんの
気持ちがわかるというのが正直な日本人なんじゃないだろうか?

斜めの目とは、ハンガリー人からみたアジア人。中国人も日本人も韓国人も関係
ない。アジア人は彼らにとって斜めの目としか見えないらしい。

いずれにしても、番組放送当時、駐在妻の間でも市場や商店で買い物のたびに
「ミツコ」「ミツコ」という声が聞こえてきて不快だと話題になったものだった。
視聴率も高く人気がある番組だと聞いて、未来ある子ども達にまで「日本人は
みな知能に障害があるのかと思った」というゲストの感想のごときイメージを
持たれてはたまらないという一致した思いがあった。

そんな騒動もすっかり忘れた今日この頃に、突然、堂々と目を吊りあげて見せ、
ブツブツとなにやら言ってみせる少年には腹が立った。ただ冷ややかに憮然と
見返す私と目が合っても、挑発するように何度も同じ事をしてきた。隣に座る
母親を見ると、怖くて私の顔は見られないようだった。

身体的特徴というのは努力して変わるものじゃない。仮に整形したとしても、
日本人である限りアジア人。彼らの目には斜めだ。外見を変えれば済む問題
じゃなく、そこにあるのは確かな人種差別。

こんな目にあったのは初めて。でも、ハンガリーに来て最も不快だった
出来事のひとつになること間違いなしな嫌な体験だった。


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