墓石クリーニングの女

お墓と向き合うことで『大切なもの』を日々感じながら、あつく生きる女…それが、アタシ。

お墓が語る

2014年03月07日 | 仕事
アタシの仕事は、墓石クリーニング。

会ったことも、なんの所縁もない方のお墓を触らせていただき、キレイにする…この仕事は、一種独特な仕事だと日々感じている。

事実、霊感など何もないアタシでも、何かを感じたり、写真に収めたり、不思議な体験をすることがある。



何と言っても不思議なのは、「流れ」である。

川の流れのように、導かれ、それに逆らわずに日々を過ごしている。

先日、雨予報の日に現場が入り、社長から「雨だからずらすか?」と聞かれたけど、「どうせ晴れるから大丈夫。」と決行。

案の定、その会話の数時間後には雨予報が曇り予報に。当日には晴れに。

お天気が味方してくれるのは、たけしょうを始めてからよくあることだ。



現場に出ているときに、現地調査依頼が舞い込むことはしばしばだが、これも不思議だ。

今いる現場のすぐ近くや、帰り道なことが多い。

「下見の場所どちらですか?」と聞く時は、いつも「まさか…」と期待してしまう。



「徳を積む仕事ができて、いいですね。」

と声をかけられたのは、古くボロボロになってしまったお地蔵さんを洗い、直してさし上げた時だ。

顔まで作ってと言われていなかったのだが、その言葉に心動かされ、つい壊れたお顔の復元までした。

仏師ではないし、石を削るのではないので、かなり難しくいいお顔に作るには程遠かった。

しかし、地域の方たちは喜び、今もこのお地蔵様に手を合わせてくださっている。


















先日、文字が見えないのでペンキを入れて欲しいとのご要望で、一文字一文字手書きで色を入れた現場があった。

この文章を読み、胸が熱くなった。

若干18歳、志願兵として大東亜戦争に行き、海に沈んだ優秀な青年の功績をたたえたものだ。

この日本への忠誠心ゆえ、命を落とした。

これが自分の息子だったら「ばんざーい!」と送り出してあげられるだろうか?

戦争は、起きてはいけない。起こしてはいけない。

アタシたちが今平和に暮らしているのは、この国を守ろうと命をかけた人が存在したからではないか?

彼らが生きていたら、きっと「お前たちは何をしているのか?この国を、命を、なぜ大切にしないのか?」そう言われるのではないだろうか?

一文字ずつ噛み締めながら筆を進めたら、色を入れる手が震えてしまった。

終わりに近づいた頃、一人の老人が見にいらした。

この方の甥子さんだそうだ。

何が書いてあるかを、改めて読めるようにしたかったと言われた。

実は、この薬研彫りは手描きでなぞるにはかなり難しく、お断りしたほうが良いのでは…と悩んでいたのだが、描いてよかった。

「虎は、大きな船に乗り、日本に帰る途中で沈められた。その日、母親が家の前でずぶ濡れになって立っている虎を見たんだよ。虎!帰ってきたんだね!と叫んだが、家の中にははいらず、いなくなったそうだ。ひと目、お母さんに会いたかったんだろう。」

そう話してくれた。

そんな出来事が起きてから70年。

70年経っても、アタシの心に虎さんの想いが染みてきた。



この出来事を伝えたいと思う。

自分の子供や、この国の未来に、また虎さんのような悲しい道を歩ませないように。



命を粗末にしたり、人を傷つけたり、エゴやお金しか見えない人や、何も考えずただ生きている人にも、この時代に生きた青年の話を聞かせたい。

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