墓石クリーニングの女

お墓と向き合うことで『大切なもの』を日々感じながら、あつく生きる女…それが、アタシ。

アタシの仕事

2007年12月29日 | つぶやき
なぜ、この仕事なのか。
それを語るのはとっても長くなります…



           …死ぬということ。
それはもう二度と会えなくなるということ。

アタシは、死は怖くはない。
必ず訪れることだから。
でも、愛する人達とのお別れは、寂しくて悲しいものだ。


父を昨年見送った。
生前、あまりいい父親とは思えず、好きになれなかった。
彼なりに、二人の娘を可愛がっていたのだろうが、あまりに勝手で横暴だったから、いつも、三人の女達は彼に気を使っていた。
母がガンに侵され、闘病生活が始まってからも、自分のわがままを押し通し、なぜもっと優しくできないのか、不満だった。
愛情が無いのかなとも思えた。
許せない!とも思っていた。
しかし、母が旅立った日の夜、彼は泣き続けた。
彼が泣いたのを始めてみた…
ずっと、ずっと、おいおい泣いていた…
お葬式で、財布を出してみんなに見せ、「ヨシコと初めて会ったときにもらった財布です。」と…、ずっとしまいこんでいた蛇皮の財布を初めて出して使うようになった…。
生きている間になぜ、ありがとうとか、大切にしまってあると言わないのよ…
アタシが今まで彼に対し腹立たしく思っていた気持ちは、無くなった…
母が亡くなってからは、世捨て人のようになり、家で飲んだくれる日々。
糖尿病が悪化し、足を切断。
いつ死んでもいい。と、自己管理をしない。
姉が働きながら、世話をしていた。
肺炎になり、老人医療施設へ入院してから、ながく寝込むだろうと思っていた。
アタシは、月いち東京から秋田へと通う日々が続いた。
アタシが行くと、精神的にも穏やかになり、わがままを言わなくなる。
ほとんど食欲も無いのに、あたしが作ってもっていくおかずは、「お母さんの味だ」と、よく食べてくれた。
何日か滞在して、帰るときは寂しそうだったから、「また来るよ!」と言って戻った。
夏休みの終わり頃、「じゃあ、またね。」と帰ろうとしたアタシに、「顔よく見せて。」と手をつかんだ。
珍しい。そして、「綺麗になったんでねぇか?」と笑った。
「ばかけ~なにいってんの~」と言って、父と別れた…
…二日後の早朝、電話が鳴った。
いやな予感。
姉から、朝起きたら亡くなっていたとの連絡。
なんとなく、気がついていたよ…あたしを褒めるなんて、おかしいと思ったんだ。

人は、死んだときに、その人の本質とか価値とかいろんなことが見えるもんだね…

あんなわがままオヤジでも、沢山の人がお葬式にきてくれた。
送辞も感動したよ…明るくて、多趣味で、スポーツマンで、歌がうまくて、ユニークあふれる男だったんだってさ。

一番笑った話はさ、遊びに来た友達に、イノシシ鍋だと嘘ついて、イヌ食わせた話だね…
昔は食用の赤犬って食材があったらしいよ…
これは笑えない?



そして、あたしの両親は二人ともお墓に入った。
お墓に行くと、いろんなこと考えるよ。

今のアタシは、両親に恥じない人間かな?
母親は、いつもアタシを見ていらいらしてないかな…
手を合わせ、お掃除をしたりしながら、話しかけてる。
「アタシは間違ったことしてない?」って。

お墓は、一番身近な福石だと聞いた。
ホントに、そうだなと思う。

やましい気持ちがあると、触れなくなる。
お墓に手を合わせるということは、自分が正しい道を歩んでいるか、自分自身に問いかける時間でもあるんだね。
本当はどんなときも、お墓を訪ね、いろんなことを語ったらいいんだって。
そう、嬉しい報告はもちろん、困ったとき、行き詰ったとき、悲しい時だって…
何か答えが見つかったり、立ち上がる力が湧いてくるもの…
それが、私たちにとってのお墓なんだって、石やのかたから教えてもらったよ。


そして、今、アタシはお墓の掃除と言う仕事をしている。
他人様のお墓だって、頼む人の想いを込めて洗おうと決めてる。
丁寧に、優しく、できる限り力を尽くし、喜んでいただきたいと。

お墓がきれいになると、本当に嬉しいよ。

それは、ただの石ではないんだ。
その価値は、それぞれ違うし、みんな特別な想いがある。
そんな気持ちを大事にして、洗わなければいけないと、この仕事始めてから感じます。

古いお墓に込められた、沢山の想いを大切にしたいから、簡単に取り替えてしまうのではなく、洗ってきれいになるものは、できるだけ残してあげたいんだよ…


来年も、真心込めて、お墓のお掃除いっぱいするぞ!

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たけしょうHP http://www.takesho-com.jp


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