今年の夏、高松まで行った目的は「瀬戸内国際芸術祭」ともうひとつ
「ヤノベケンジ シネマタイズ」展 @高松市美術館
を観るためでした。
(エントランスでは大きなフローラとサンチャイルドが出迎えてくれます。大迫力!!)
◼︎ 巨大なオブジェ、インスタレーションに圧倒!
ヤノベケンジさんといえば巨大な作品が多いですが、今回の個展ではその巨大なオブジェが数多く展示されていて圧倒されます!!これらの作品をまとめて見られるだけでも、本当に行って良かったなぁ…と思いました!
(大きすぎて展示室に入りきらない作品も!?
「ウルトラー黒い太陽」/2009/ヤノベケンジ)
さらに、「フローラ」や「スタンダ」といった作品がたちあがったり、「黒い太陽」が放電したり…と、1日数回のパフォーマンスも行われていました。
(わたしが行ったのは遅めの時間だったのでパフォーマンスは見られず…>_< 早めの時間に行くことをオススメします。)
◼︎ アトムスーツから、トらやん、サンチャイルドへ… これまでの作品を一度に振り返ることができる展示
作品は時代に沿って展示されています。これまでヤノベさんの作品は年代によって雰囲気が異なって見えていたのですが、そのつながりを知ることができる構成でとても良かったです!
① ”Survival” の時代 (1990−2000)
1990年代。放射能から身体を守る機能や、緊急避難のために必要な機能を持った ”アトムスーツ”や、”サヴァイヴァル・システム・トレイン”といった作品が並びます。
(イエロー・スーツ / 1991 / ヤノベケンジ)
核兵器や原発といった問題を核としていますが、そのデザインはまるで近未来をテーマとしたアニメや映画にでてきそうな雰囲気で、かっこよくてわくわくもしてしまいます。
(サヴァイヴァル・システム・トレイン / 1992 / ヤノベケンジ
造形のかっこよさだけでなく、”実際に機能する”というところにまた惹かれます…)
(成人男性向け、女性向け、子ども向けのアトム・スーツ。
それぞれに向けた機能を備えているのが面白い…)
ヤノベさんのこういった作品の発想のもとには、”未来の廃墟”のイメージである”大阪万博の跡地”を幼い頃に遊び場としていたことがあるそうです。(原子力発電は大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」にふさわしいとされ、大阪万博では美浜発電所から原子力の電気が試送電された、というつながりもあるそうです。)
印象的なのは、作品であるアトムスーツを着て実際にチェルノブイリに行く「アトムスーツ・プロジェクト」。
(アトムスーツ・プロジェクト:大地のアンテナ / 2000 / ヤノベケンジ)
チェルノブイリの方々との交流について描かれたドローイングも展示されているのですが、その中に描かれた、現地の方に「そいつは俺達を笑い者のタネにしてるんだぜ」と言われたエピソードが特に印象的でした。このエピソードが、原発などをテーマとしながらもただ批判に終始しないヤノベさんの作品のベースとなっているようにも見えてきます。
(「LUNATIC DIARY アトムスーツ・プロジェクト」 のなかの印象的な1枚。)
② ”Revival” の時代(2001-2010)
ご自身にお子さんが生まれたことと、チェルノブイリの保育園で見た人形・太陽の絵に着想を得て造られたという「スタンダ」は二本足で立ち上がrって太陽のオブジェを見つめる巨大な人形。これまでの作品とは少し違った”かわいらしい”造形です。
(ビバ・リバ・プロジェクト -スタンダ- / 2001 / ヤノベケンジ)
2003年、大阪万博跡地にあった国立国際美術館で大規模個展「MEGALOMANIA」が開催され、これがひとつの大きな節目になったのだそうです。(その後に第五福竜丸と一緒にヤノベさんの作品を展示したいというオファーがあったものの、第五福竜丸に対峙できるほどの作品はまだ作れていない、と断られたのだとか…)
そして、ヤノベさんの父親によって生み出されたバーコードヘアにチョビヒゲの腹話術人形「トらやん」の登場で、作品の雰囲気はまた大きく変わります。
("トらやんの大冒険 ヤノベケンジの代弁者" の展示室)
子供用アトムスーツを着たたくさんのトらやんによってつくられた大規模なインスタレーション。その中にある「青い森の映画館」は子ども専用の映画館で、かわいらしいつくりながらも核シェルターとしても機能し、外に立つトらやんは放射線量が高いと歌って危険を知らせてくれる機能を持っているそうです。
(青い森の映画館 / 2006 / ヤノベケンジ
やっと第五福竜丸に対峙できるような作品を作ることができたと思えた、というヤノベさんの言葉が印象的でした。)
自分自身の身を守る”Survival”の作品から、廃墟から再生する”Revival”へと作品のテーマがうつっていきます。
③ “After 311” の時代 (2011- )
核や原発をテーマに作品をつくってきたヤノベさんにとって、2011年の東日本大震災で原発事故が日本国内で起こってしまったことは特にショッキングな出来事となります。
その再生・復興を願い、アトムスーツのヘルメットをとり、太陽を手に持つ子ども「サン・チャイルド」が希望のモニュメントとして制作されたそうです。
(サン・チャイルド(No.2) / 2011 / ヤノベケンジ)
“Survival”の時代の作品と比較すると、原発を扱った作品でも、そのテーマと表現方法が大きく変わっているように感じられます。
(会場には近年の作品のドローイングも多数展示されていました。)
特に近年のヤノベさんの作品は、大きくて派手でかわいくて… なんだかそれだけで圧倒されて、作品の意味を十分考えなくても満足してしまうようにも感じます。でもそんな子供でも受け入れやすい作品の中に、今世界で起こっている重いテーマが隠れていて、ふとしたときにそのメッセージがキャッチできるようになっているのがすごいなぁ…と改めて感じられる展覧会でした。
("未来の太陽" 展示室)
■ 美術館の展示のなかで映画を撮影?!ユニークな展示。
今回の個展のユニークなところのひとつは、展覧会タイトルの「シネマタイズ」のとおり、会場を舞台に映画「BOLT」の撮影が行なわれるということです。
(まるで映画のセットのような展示室も!)
”近未来映画に出てきそう”と思ったヤノベさんの作品が、実際に映画に登場するなんて、わくわくします!
会場には主演の永瀬正敏さんとのコラボレーション作品が発表されたり、展覧会カタログのかわりとなるDVDには、その予告編が収録されたりしていました。
(ATOM HELMET in the Past and Future life / 2016 / photo by 永瀬正敏)
(「シネマタイズ」展カタログがわりのDVD。ヤノベさんによる作品解説や映画「BOLT」に関するロングインタビューなど4枚組で収録されて見ごたえがあり、パッケージもカッコイイです。1980円というのはお買い得…!)
ヤノベさんの大きな作品を、その経緯をたどりながら見ていくことができる、とても興味深い展覧会でした。展覧会は9月4日(日)までです。
瀬戸内国際芸術祭で賑わう高松ですがこちらの展示もぜひ合わせてどうぞ!
※ ちなみに「ヤノベアプリ」という、 ヤノベさんの過去の作品を一覧できるアプリでは、今回の展覧会に合わせたフォトラリー企画も行われています!展覧会で写真を集めると待受がもらえる特典も!^^
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会期:2016年7月16日(土)~2016年9月4日(日)
会場:高松市美術館
休館日:会期中無休
開館時間:9:30~19:00
(但し日曜日は17:00閉館/入室は閉館30分前まで)
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