21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「動きのカガク」展。
ここちの良いデザインと、面白い体験型展示がたくさん。一方でただ「面白い!」で終わらない展覧会で、とてもオススメです! 実際の「動き」の「表現」、ぜひ会場で体験してみてください。
(『百科全書/農業と経済、水車』/ ドゥニ・ディドロ/ジャン・ル・ロン・ダランベール / 1751-1772年)
動く立体物でいっぱいの会場ですが、まず出迎えてくれるのは、1750年代の百科全書の銅板画。農業と手仕事に関する「動くもの」が図解されています。「動き」を初めてコレクションした本なのだそうです。今回の展覧会は、21世紀版の”動きの百科全書”とのこと。
では、百科全書のページをめくっていきましょう。
(『ロスト #13』/ クワクボリョウタ / 2015年)
「動き」と「表現」、このテーマをもっとも表していたのが、クワクボリョウタさんの「LOST#13」。
薄暗い空間に並べられているのは、虫ピンやザル、定規など、100円ショップで買えるような日用品たち。でも、この中をライトをつけた列車が走っていくと…
列車の「動き」によって、日用品からは想像もつかない、幻想的な風景が映画のように繰り広げられていきます。
(『ロスト #13』/ クワクボリョウタ / 2015年)
この作品「LOST」は、ソ連軍に占領された終戦後の色丹島を舞台とした映画「ジョバンニの島」のなかで、主人公の少年たちがソ連の少女と心を通わせるシーンにも登場しています。モノの動きがその場の風景を変え、人の気持ちも動かす。そんな素敵な作品です。
(『統治の丘』/ ユークリッド(佐藤雅彦+桐山孝司) / 2015年
展覧会ディレクター菱川勢一さんによるデモンストレーション)
モノの動きで、モノに表情が生まれる様子を体感できるのが、ユークリッドの「統治の丘 」。ステージ(丘)の上に立って指を指すと、その周りを囲んでいる風見のようなオブジェが一斉にそちらを向く、体験型の作品です。周りのものが、全て自分の言いなりに動いてくれる全能感は気持ちが良い(逆に気持ちが悪い?)のですが、二方向を指し示したり、動けない上を指し示したりすると…
今までと違った「反抗」の動きを見せるオブジェ。ただの紙でできたオブジェなのですが、動きによってはまるで怒りの表情を持っているように見えてきて、ちょっと恐ろしくもなりました。
(『森のゾートロープ』/ パンタグラフ / 2015年)
ものの動きの「仕組み」を見せてくれるのもこの展覧会の面白いところです。
パンタグラフの「森のゾートロープ」は、アニメーションの仕組みを体験できる作品。筒状の紙に描かれた絵をスリットから覗くタイプのものは一度は見たことがあるかもしれませんが、これはその立体版。スリットあり/なしで見る場合を交互に見比べながら、こんな風に脳が騙されてアニメーションが見えるんだなぁと…実感できます。
パンタグラフのもうひとつの作品「 ストロボの雨をあるく」でも、違ったタイプのアニメーションの方法を体験できます。
(『アトムズ』/ 岸 遼 / 2015年)
もう1つ、とてもおもしろかった体験展示が、岸遼さんの作品「アトムズ」。風の吹き出るパイプの上に発泡スチロール製のボールを持って行って手を離すと、ボールはパイプの方へ吸い込まれていき、数センチ上でふわふわと浮かび上がります。
(『アトムズ』/ 岸 遼 / 2015年)
”吹き上げパイプ”のおもちゃと同じ、"気体の流速が上がると圧力が下がる”という「ベルヌーイの定理」(飛行機が飛ぶ原理とも言われているものですね)によって、この不思議な空中浮遊の状態が成り立っているそうです。パイプが斜めになっていっても、ボールは重力に負けずパイプの延長線上(斜め)に浮遊していました。面白いですね。
(『水玉であそぶ』/ アトリエオモヤ / 2015年 の解説パネル)
さて、こんな体験型の展示を「魔法みたい!」「面白い!」で終わらせないのがこの展覧会の面白いところ。(そう、テーマは”動くもの百科全書”ですから。)百科全書のように、作品ごとの解説パネルでは、その「動き」の原理を言葉やアニメーションで分かり易く説明してくれています。
また、作品の制作に使われている素材や道具も併せて展示されていて、意外に身近なもので作られていることに驚いたりもします。
(『動きのカガク展 ドキュメント映像』/ ドローイングアンドマニュアル / 2015年)
すべての作品のメイキングの様子も展示されています。”魔法みたい”な作品も、アーティストの方々がみんな「うまくいかないなぁ」「もっとこうしたいなぁ」と試行錯誤しながら、手作業で作り上げれている様子を知ることができます。
(『リフレクション・イン・ザ・スカルプチャー』/生永麻衣+安住仁史 / 2015年)
会場の最後で見送ってくれるのは、呼吸するように伸縮するミラーボール『リフレクション・イン・ザ・スカルプチャー』/生永麻衣+安住仁史 。
反射光の粒が、まるで万華鏡のようにコンクリートの空間の表情を変えていました。
昨年のみなとメディアミュージアムでも同じ作品のシリーズが展示されていましたが、ミラーボールの形状と反射光の映る壁が異なることで全く違うイメージの作品となっており、”同じ仕組みを使っても様々な表情を見せることができる”というひとつの仕組みから生まれる表現の幅広さを実感しつつ会場を後にしました。
(『シックスティー・エイト』/ ニルズ・フェルカー / 2015年
オープニングイベント「オープニング ギャラリーツアー」では、アーティストのニルズ・フェルカーさんと、展覧会ディレクター菱川勢一さんが作品前で解説をしてくださいました。)
なお、会期中には出展アーティストによるトークやワークショップなどのイベントもたくさん。さらに、作品からインスピレーションを受けたら作品づくりがはじめられるように、工作に関する書籍なども多数閲覧できるようになっていたりと、何度も足を運びたくなる展覧会でした。
展示は 9月27日(日)まで。体験展示や少人数で体験するものも多いので、混み合う前にぜひお早めにご覧ください。
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■DATA
会場: 21_21 DESIGN SIGHT (access)
会期:2015年6月19日(金)- 9月27日(日)
休館日:火曜日(9月22日は開館)
開館時間:10:00 - 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
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※オマケ※
21_21 DESIGN SIGHT と同じ、東京ミッドタウン内にあるデザインハブで開催されている「日本のグラフィックデザイン2015」。
こちらでは昨年発表された、雑貨、書籍、商品パッケージ、シンボル・ロゴ、ポスター、ウェブサイト、映像、展覧会やショップの空間デザインetc.などのなかで選考を通過した作品を展示されています。デザインが印象に残っていた広告をじっくり見返したり、こんな面白いパッケージがあったのか!と新しい発見ができたり。
デザイン好きな方はこちらもぜひ併せてどうぞ。8月5日(水)まで。入場無料です。
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