「行くぜ、東北」シリーズのポスター▼。
”観光名所”の美しい写真ではなく、なんだか「旅っていいなぁ」という雰囲気の大きな写真一枚に、
「行くぜ、東北」の一言だけのシンプルな文字が配置されていて
「"どこか" に旅に出たいなー」なんて気分になってしまうポスター。
毎年少しずつ形を変えているものの、情報で埋め尽くされた他の広告とはちがった雰囲気で、新しいシリーズが出るたびに見いってしまいます。
そんな”斬新”な雰囲気の広告の先駆けが、今から40年以上も前にあったと知ったら、ちょっと驚きませんか?
前置きが長くなりましたが、そんな広告に出会えるのが、
東京駅内の東京ステーションギャラリーで開催されている
「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい」展。
展覧会チラシの表紙にもなっているこちら▲のポスター。
今の時代に見ても「あ、なんかいい感じ!」と思いますが、ポスターの下方には「JR」ではなく、「日本国有鉄道」の文字。
なんと、1971年に製作されたポスターなのだそうです。
1970年からはじまった日本国有鉄道の「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンでは、
① ポスターに写っている場所が特定できない(でも、”なんだかいい雰囲気!”) 匿名性の高いビジュアルイメージ
② 観光ポスターで初めてモデルを起用することによって、若い女性にターゲットを限定
③ 他の企業とのコラボレーションによる大規模な広告
④ ポスターだけではなく、テレビCMやタイアップ番組、販促グッズやラッピング車両など、多様なメディアへの展開
といった試みがなされ、非常にセンセーショナルだったそうです。
②④などは今では一般的ですが、①などは現在でも少し目新しい感じがします。
(▲「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンポスター。(展覧会チラシより)ブレ・逆光のイメージで、これはドコ?どんな場面?と想像を膨らませてしまうポスターが多く見られました。)
(▲駅スタンプ台。ポスター類は女性がターゲットでしたが、旅に出てスタンプを集めるのは、男性のコレクター心をくすぐる試みだったそう。上部には、しっかり他企業の広告も入るようにもなっています。)
時代を先取りしすぎたのか、ポスターの並びを見ていると、時々時代を逆行するような古い感じの雰囲気に戻るのがちょっと面白いです。
駅スタンプや、当時のアーティストを起用した古さがないイラストのフリーペーパー、そして今と変わらない雰囲気の”女子旅”CMなどを見ていると、なんだか心踊ります。
(▲冊子「でぃすかばぁ・じゃぱん No.2」。展覧会チラシより)
そんな「旅っていいね!」という雰囲気の第一の展示室を出ると、次の展示室との間には、そんな ”旅に出て、「ディスカバー」している人たち”をちょっと離れて冷静に見つめるような、写真家・ 中平卓馬さんの「とらわれの旅」という写真が。
(▲中平卓馬 /「来るべき言葉のために」から。展覧会チラシより。)
続く展示室では、
写真家・中平卓馬さん、北井一夫が、”実際に自分たちで「ディスカバー」の旅をしたらどうなるのか?といった試みの写真や、
「ディスカバー」される側の視点に立った写真。
また、ディスカバー・ジャパン キャンペーンから生まれた「遠くへ行きたい」という番組で、”運良く旅先の村の結婚式を見ることができた!…と思ったら、実は全てテレビのために村の人たちがお芝居をしてくれだけでした。”といった回が放映されていたり。
(▲「遠くへ行きたい−伊丹十三の天が近い村」 展覧会チラシより)
前半のうきうきした気分から一転。
「ディスカバー・ジャパン」って、誰が何をディスカバーしてるの?
あなたは旅に出て何がしたいの?
と問いかけられているようでした。
そんなわけで、最後は自分の旅のあり方について考え直すきっかけをくれるような展覧会でした。
11月9日まで。
会期残り少ないですが、旅好きの方・広告好きの方にオススメしたい展覧会です。
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■DATA■
ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい
DISCOVER, DISCCOVER JAPAN
会期:2014年9月13日(土)~11月9日(日)
(休館日: 月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜休館))
開館時間:10:00 - 18:00
(※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館30分前まで)
入館料:一般900円 高校・大学生700円 小・中学生400円
会場:東京ステーションギャラリー(access)
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▼オマケ▼
今回の展覧会は、「旅」を切り口に見たら今回のようなレポートになりましたが、「70年代デザイン」を切り口に見るのも面白い展覧会でした。
今回の展示は「モーレツからビューティフルへ」という富士ゼロックスのCMからはじまります。
商品の宣伝をメインとするのではなく、社会的な提言を行った ”脱広告” という考え方が始まったのがこのあたりからなのだそうです。
”紙上万博”と称して新聞の一面広告でテキストとイラストを紹介する内容を読んでいると、40年以上前にこんな面白いことが行われていたことに驚きます。
また、雑誌ananが創刊されたのもこの頃。
「服のディテールよりもライフスタイルを含めたファッションのあり方」を提案するというのも、現代でも面白い提案に見えますね。
cakesで連載されていた「『オリーブ』の罠」で雑誌「オリーブ」や、そのお姉さん雑誌としての「anan」の衝撃を読んだところだったので、本当に革命的な紙上の文化が生まれてきた時代なんだなぁと想像してしまいました。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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note: https://note.mu/plastic_girl/n/n369e925dad4f
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