とびきり楽しくて、それと同時に多くのことを考えて語り合う。
そんなちょっと変わったアート体験のできる場所が長野にあります。
フェンバーガーハウス
ここでできる二つのアート体験とは、
①美術館とは違う「アートとともに一日をすごす」という鑑賞方法
そして
②普段の意識とは異なる「変性意識」という状態の体験 です。
「変性意識」なんて書くと、
なんかアブナイ感じ?と引かれてしまうかも…と心配ですが。
(と思うのは、私自身がそういったものに非常に懐疑的であったからに他ならないのですが…)
こちらで行われている「フリッカーアートリサーチ」の宿泊プログラムに参加してきました。
楽しくて、あっという間の2日間でしたが、1週間くらい滞在していたんじゃないかと思ってしまうくらいの濃い2日間でした。
■魅力的な作品たちと生活する一日。
この”フェンバーガーハウス”は、美大や六本木アートカレッジなどで美術講師を務められているロジャー・マクドナルド氏が運営されているプライベートミュージアム。(日本語はペラペラなのでご心配なく!)
長野の佐久平駅から車で20分ほどの別荘地にあります。
家の中には、ロジャーさんの視点で選ばれた ”自分を自分の外に連れて行ってくれるような” 魅力的な現代アートの作品が並びます。
この空間で
ご飯を食べたり、お茶をしたり
(▲家庭菜園で収穫したばかりの野菜を使った料理をふるまっていただきました。美味しいゴハンもこちらの魅力のひとつ!)
講義を聞いたり、お話をしたり
(▲”アートの紀元”や、”変性意識とアートの関わり”などについてのレクチャーもあります。)
そして、音楽を聴いたり、眠ったり…
(▲夜はこんな作品たちに囲まれて眠ります!)
一日を作品とすごしていると、明るさの変化や自分の気分によって、刻々と作品が異なる表情を見せていく様子に気づきます。
(▲車の音も空調の音もなく、虫の声だけが聴こえる空間です。
普段の生活がいかにノイズにあふれたものであるかに気づきます。
”音” が気持ちに与える影響の大きさに気づいた日でもありました。)
ロジャーさんが、ひとつひとつ丁寧に作品を説明してくださいます。
ご紹介したい作品がいっぱいでしたが、個々の作品はぜひ現地でご覧下さい。
(▲右の赤い車の絵は、一番人気だったAndreas Schultzさんのドローイング。昼と夜で全然違った表情を魅せる不思議な絵です。)
(▲ロジャーさんの弟さんで、画家のPeter McDonaldさんのドローイングの部屋。ポップですが、たまにふと寂しげな共感のようなものも感じてしまう作品です。)
(▲私が一番気になった、Roger Acklingさんの作品。
流木などの自然の物質の表面を、拾ったその場で虫眼鏡で焼いて模様をつけていったものなのだそうです。小さい作品ながら、この中に自然の記憶や、一日の太陽の記憶が刻まれているようです。)
■不思議な「変性意識」体験
そして今回のプログラムのもうひとつの体験は、この「マインド・マシン 」による、変性意識状態の体験。
簡単にいうと、幻覚のようなものが見る体験です。
眼鏡の奥でちらちらと点滅しながら動く光をずっと見ていると、だんだん見えないはずの模様や景色が見えてくるというもの。
このメガネをかけて目をつぶり、10~30分のリラックスタイム…
私は、はじめは幾何学模様が見えていましたが、次第に「眠りに落ちる直前」のように体が軽くなり、でも意識ははっきりした状態で、具体的な「物体」や「風景」が見えてきました。
(…ひょっとしたら、半分寝ていたのかもしれませんが(汗))
(▲体験後、見えたものを絵に描いていきます。同じ明かりを観ていたのに、人によって見える景色が全く違うのが面白いところ。)
通常の状態で生活しているときの自分の想像力の中にはない世界が、目の前で(目はつぶていますが…)次々と再生されていくという不思議な体験。
普段「絵を描いて」と言われてもなかなか描けないですが、この体験の後は、普段の想像力では描けないような絵がいくらでも描けそうな感覚で、過去にこういった変性意識状態から新たな作品制作を試みるアーティストがいたというのもうなずけます。
そして、不思議なことに、マインドマシンを体験した後はすごく体がリラックスしていて頭はとても活性化されているような状態でした。一種のヒーリングのようなものでもあるかもしれません。
最後に。
ロジャーさんや参加者の方々と、体験を通じて多くのことを考え、話をするというのが、今回のもうひとつの大切な体験でもありました。
リビングでのロジャーさんのレクチャー中、
お茶をしながら、ご飯を食べながら、そして不思議な体験をしながら、
「どう思った? 」と、アートや変性意識、教育や宗教のような、普段は避けがち(?)な話をたくさんして、様々な考え方を聞いて、また自分で考える…
自分の考え方や感じ方を見直す体験でもありました。
こんな、ちょっと変わったアート体験のできるフェンバーガーアートハウス。
実は私の参加した宿泊コースは、現代アートの学校 "MAD" の受講生専用なのですが、日帰りコースはどなたでも参加可能です。
秋までの開催なので今年はあと2回ですが、ご興味のある方はぜひ参加してみてください。
※現在は完全予約制ですが、来年からは予約なしでもふらりと入れるギャラリーとして運営したいとのことでした。
本当に素敵な場所なので、気軽に入れるようになるのは嬉しいことです!
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■DATA■
日程:2014年 10月18日(土)、10月19日(日)
(毎年、春〜秋の時期の週末に開講)
場所:フェンバーガーハウス(長野県佐久市)
料金:¥8,700+税 (佐久平駅までの交通費は別途)
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▼オマケ▼
またもや独り言ですが…
今回の体験は本当に考えることが多くて、どう書こうか一ヶ月以上考えてしまいました。
(結局、楽しかった!がメインのいつもの書き方になりましたが…)
自分自身はどちらかといえば、宗教とか幻覚とか「なんだか得体のしれない、よく分からないもの」を意識的に排除して生きてきたタイプの人間でしたが
今回の体験で
現実のすぐそばにそんな「よくわからないもの」があること
そして、それを全て排除するのは必ずしも健全ではないこと を学び、もっと受け入れたいと思うようになる一方で、
長年の”自分の常識”の壁は簡単に崩せないということも感じてしまいました。
極端な例では、もし、好きなアーティストの作品が、実はドラッグの幻覚から作られた作品だったら…
”こんな素晴らしい作品が作れるなら、軽いドラッグなら認めてもいいよね!”とは単純に思えないもので。
じゃあ、そんな作品をいいなぁと思った自分の気持ちも含め、それは全く無駄な、意味のないものなの?と聞かれると…うーん…
そんな考えが今もぐるぐると回っていますが、でも、今までよりも少しだけ「よく分からないもの」にも歩み寄ってみようと思えるようになってきた気がします。
ちなみに、Chim↑Pomのエリィさんもこの日帰りコースに参加されたそうで、対談記事がCinraNetに掲載されていました。
”エリイ(Chim↑Pom)×ロジャーのサイケデリック対談 | CinraNet”
こちらで体験したことについて非常にわかりやすくまとめられている記事ですので、ご興味を持たれたらこちらもぜひ。
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