神保町のギャラリーSOBOで開催中の「菅俊一 / 指向性の原理」に行ってきました。
小さな線1本・点1つの位置が少し変わるだけで画面や空間に動きが生まれたり、伝えたい感覚が伝わりやすくなったり。ただ整然と並べることが「分かりやすく伝えるデザイン」ではないんだなぁということが感じられるとても面白い展覧会でした。
菅俊一さんは、Eテレの「0655/2355」のIDの映像や、BRUTUSで連載中の「ヘンテコノミクス」、2月17日から21_21 DESIGN SIGHTではじまる「アスリート展」のディレクターなどをつとめられる研究者・映像作家。今回の展示は、菅さんの初個展となるそうです。
会場には4つのディスプレイが置かれ、その中ではシンプルなモノクロの線と文字で構成された静止画が数十秒間間隔で切り替わっていきます。
音もなく、とてもすっきりとした会場です。
しばらくはよくわからないまま、画面に映し出された線を眺めていたのですが、「あ、これって…!」と気づいた瞬間に、画面や会場の白い空間にいろんなものが勝手に頭の中で補完されて”見えて”くるんです!
例えば「線のポテンシャル」という作品では、ただ”直方体”が並べてあるようにみえていた画面に1本の矢印を書き足すだけで”ピタゴラ装置”のようにみえてしまったり、長方形が”ランダム”に並んでいるようにみえていた画面に数本の線を足すことで”規則性”が見えてきたり…
(はじめのイラストに描いたこんなランダムな長方形の並びも、数本の線が加わるだけで全く違うものに見えてきてしまいます!)
今回のメインビジュアルのイラストが使われている「視線」という作品では、ディスプレイの中の”視線”と、その視線をすこしだけ強調するような小道具を置くことで、ただの”静止画の画面”だと思っていた作品が、自分を取り囲むような三次元的な作品に見えてきたりもします。
(今回のメインビジュアルにもなっているこの顔↑
ちょっとした工夫で”平面”のイラストが、空間を覆うインスタレーション作品のように見えてきます!)
ちょっとした工夫で”平面”のイラストが、空間を覆うインスタレーション作品のように見えてきます!)
「文章を読む」という作品も、ランダムに文字が配置されていると思っていたのが、その文字の”位置”と”意味”がつながると心地よく読めたり、文字の「配置」が「スピード」という別の概念に変化していったり…文字の並びが見てる人の”視線”に変換されていって面白かったです。
(「文章を読む」の中の作品のひとつ。ランダムなように見えて心地よく視線が誘導されていく、というのが驚きの作品でした。)
この展覧会は様々な線や図形で構成されていますが、その線の太さや位置が少し変わるだけで”動き”の印象が全く変わったり、実線が破線になるだけで不安な感じがしたり… 普段あまり強く気にかけることのない、図形の与えるちょっとした印象の違い(”気配”のようなもの?)が見えたのもとても面白かったです。
”心地よいデザイン”は、なんとなく見た目がオシャレということではなくて、こんな風に、ちょっとした配置や線の太さや形で、次の”動き”を誘導してくれるようなデザインなんだなぁということを感じられる展覧会でした。
2月18日(土)までと会期が短いのですが、とてもオススメの展示です。
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■DATA■
会期:2017.2.3(金)-2.18(土)
火-金 [11:00-19:00] / 土 [11:00-17:00]
日・祝・月休廊
菅俊一は、研究者・映像作家としてこれまで、映像や展示、文章をはじめとした様々な分野で人間の知覚能力に基づいた新しい表現の在り方を研究している。これまでにNHK Eテレ「2355/0655」ID映像やmodernfart.jpでの連載「AA’=BB’」など、私たちが感じる興味や期待という感覚を考察させてくれるような作品を通して、常に驚きを感じさせてくれている。
今回は「指向性の原理」と題してどのような表現を私たちへ伝えてくれるのだろうか。
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