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箱根・彫刻の森美術館で開催中の「淺井裕介ー絵の種 土の旅」に来ました。
館内はフラッシュなしでの写真撮影もOKです。
館内に入ってまず迎えてくれるのがとても大きなキャンバスに描かれた作品「双子の鼠(彫刻の森編)」。描かれた動物たちは可愛らしくユーモラスなのですが、ちょっと神聖な雰囲気も感じます。
(「双子の鼠(彫刻の森編)」/ 淺井裕介 / 2013-2015)
淺井さんの作品シリーズのひとつは「泥絵」と呼ばれ、各地で採取された土で描かれています。この作品は、箱根の4カ所で採取された土をはじめ、北海道・東京・沖縄、それにテキサスやソウルなど、国内・海外各所の土を取り混ぜて描かれているそうです。
神聖な雰囲気を感じてしまうのも、その土地に宿っているものを感じるからなのかもしれません。
(「大地の色見本(彫刻の森編)」/ 淺井裕介 / 2015
:今回の作品で使用された土も展示されています。”土”と一言でいっても様々な色の土があるんですね。)
(「世界の根っこにある大事な唄 」/ 淺井裕介 / 2015 )
描かれた動物の中にも異なる人や動物が描かれ、何層ものレイヤーをもった絵になっていて、大きな絵に圧倒されたあとはどんどん近づいて細かい部分を見たくなる作品です。
続いての中2階の部屋は、打って変わって白・青・黒のペンを使ったドローイングで覆われた部屋。
(「双子の鼠(マスキングプラント)」 / 淺井裕介 /2013- 2015 )
淺井さんの作品シリーズの2つ目は「マスキングプラント」と呼ばれ、マスキングテープにペンで描いた絵が壁に貼られています。
テープがのびていく感じと、にょきにょきと植物が延びて行く雰囲気がぴったり合っているのが面白いです。
(「青犬」 / 淺井裕介 / 2015 )
「壁画」なのに、剥がしてしまったら形が残らないなんてはかない感じもしますが、逆にいつでも剥がせるからフレキシブルにどんな場所にも描くことができると思うと、力強くも感じます。
(ちょっとした隙間に隠れている子を探すのも楽しいです。)
そして、階段をのぼるとだんだん部屋が暗くなっていきます…
最後の部屋にあるのは「土の旅」。
「泥絵」と「マスキングプラント」が融合した壮大な作品です。”立体”に見えるけれど描かれているものは”平面”でもある、不思議な作品です。
(「土の旅」 / 淺井裕介 /2015 )
”山”のようにも見え、大きな”動物”のようにも見えます。
(動物の”顔”や”手”のように見える部分も。)
壮大な雰囲気に圧倒されながらも近づいていくと、作品の隙間には「ヤオヨロズサマ」という神様のような小さな土のオブジェがひっそりとたたずんでいます。
(「ヤオヨロズサマ」 / 淺井裕介 /2013- 2015 )
山の土や植物が画材に形を変え、作品として山や植物、動物の形に戻って行く…なんだか循環して新しい命を吹き込まれたように感じられます。
最後に、この展覧会の中でもうひとつとても素敵だったのが「展覧会のためのアトリエ」。淺井さんの作品はこちらで公開製作もされていたそうです。
(「展覧会のためのアトリエ」」 / 淺井裕介 /2015 )
アトリエの中には、たくさんのドローイングや小さな作品、箱根で採取された土やその色見本、昆虫や植物、おもちゃなどなど…
それぞれの小物の持つ物語を想像して、こちらもまたじっくりと見入ってしまうような展示になっていました。
(大量のマスキングテープの芯も!)
なお、今回の展覧会の図録を購入すると、図録に淺井さんの作品のモチーフのスタンプを押させてもらえます。
それらのモチーフが描かれた”彫刻の森美術館”限定のマスキングテープも販売されていたりするのも嬉しいです。
彫刻の森美術館は淺井さんの個展以外にも、常設のたくさんのヘンリー・ムーアの彫刻や、ニキ・ド・サンファル、アントニー・ゴームリーの彫刻、ピカソ作品をあつめた”ピカソ館”、散策の疲れを癒す”足湯”などもあり、丸一日楽しめる場所です。
(「ミス・ブラック・パワー」/ ニキ・ド・サンファル / 1968)
箱根の山の自然を満喫するのにもよいこれからの時期、彫刻の森美術館で作品と散策を通じて自然の力を感じてみるのはいかがでしょうか?
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■DATA■
会期:2015年9月19日(土)~2016年2月28日(日)
開館時間:9:00〜17:00 年中無休
会場:箱根・彫刻の森美術館 (access)
料金:一般 1600円
淺井裕介は、土や埃、道路の白線など身近な素材を用いてさまざまな場所で絵画制作をしている作家です。≪泥絵≫と呼ばれるシリーズは、主に現地の土を採取し水で溶いて、直接、壁や板に描かれます。また、2003年より続けている≪マスキングプラント≫という植物画シリーズは、マスキングテープで制作した植物や動物の形の上にペンで描いた造形が絡み合い、イメージが無限の広がりを見せています。今回の展示では、作家がこれまで各地で採取した土に加えて、当館や箱根の名所で採取した土も使われます。
1階では、壁面いっぱいの泥絵作品に、公開制作によって新しくこの場所で生まれてくる形がつけ加えられます。2階には、これまで長年続けてきた≪泥絵≫と≪マスキングプラント≫が融合した「木のつけ根のような、何かの巣のような、それ自体が生物のような」(作家の言葉)巨大な造形が新たな挑戦として生まれます。
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