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松戸市立博物館で開催中の「ガンダーラ展」を観に行ってきました。
先日、東博で「快慶・定慶のみほとけ展」を見たばかりですが、ガンダーラなど、初期の仏像などは見たことがなく初めての経験です。仏像鑑賞が続きますが、今年はよい機会に恵まれているようです。
しかし、私は仏教の源流となったガンダーラやシルクロードにはほとんど知識がありません。加えて、なぜ、千葉県松戸にガンダーラ美術なのかという素朴な疑問も浮かびます。もともと、「松戸市にはシルクロード美術を展示する美術館が計画され、50件ほどの美術品が蒐集され」たものの、「その後、建設計画の見直しが行われ、蒐集された美術品は(中略)博物館に移管され活用されることに」なったという経緯があるようです(図録より)。今回は、開館5周年記念特別展「シルクロードとガンダーラ」(1997)の初公開に続く2回目の展示になるようです。
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展示は、「ガンダーラと仏教文化」、「日本における仏教文化の受容」の2部構成で、仏教の源流と日本をつなぐ意欲的な企画と言えると思います。
最初の仏陀立像から、日本の仏像とはまったく異なった姿を見ることになりました。まず、基本的に石像です。木や金属はありません。風土、環境、時代の違いでしょうか。
彫りが深く、端正な相貌と佇まいは確かにギリシャ彫刻を思わせます。それゆえに日本の仏像とは違って、かなり人間臭い像になっています。仏像のお約束の白毫などはありますが、自然にウェーブした髪、肉体はリアルに表現されています。あの、京都大報恩寺の仏様の様式美とはだいぶ趣を異にします。
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これらの立像を過ぎると、釈迦の生涯のエピソードを表現した彫刻やレリーフ(仏伝彫刻、浮彫)が多く展示されていて、初期仏教の存在感が伝わってきます。
釈迦の誕生から太子の出家、出城、苦行、悟り、そして涅槃に至るまでの生涯が物語を読むように配列されていました。文章で読んで知ってはいても、立体で見ると具体的で分かりやすいものですし、見ていて飽きません。また、当時の人々の情熱をも感じました。
ちなみに、涅槃のシーンでは、横たわる釈迦の側で「みほとけ展」で見た阿難陀が嘆いていて感慨深いものがありました。
会場には、仏像や法具だけでなく、シルクロードに関係した当時の戦士や役人の浮彫、ガラス製の碗など興味深い展示物が多くありました。
ガンダーラやパキスタンのイラン、そして日本に至るまでの出土品は紀元前10世紀から紀元後8世紀頃までにわたります。6世紀に仏教が伝来したとされる奈良では、廃寺からの出土品である粘土を焼いた塼仏(せんぶつ)や塑像のスタイルの中に、遠くガンダーラ仏の名残を見ることができたような気がします。材料が石から土になった点も興味を惹きました。
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この展示を観て、広大な地域と膨大な時間の流れの中に初期の仏教の一端に触れることができたように思います。上野の東博では、鎌倉時代と現代の視点から仏像を観ていましたが、今日はシルクロードという視点から俯瞰した歴史を見たような気がしました。ただし、まだ私の頭の中はシルクロードとガンダーラがまだ、まだらになっていたりするのですが(笑)。
(写真)撮影可のひとつであった菩薩半跏像(1~4世紀)
市制施行75周年・開館25周年記念特別展『ガンダーラ;仏教文化の姿と形』、2018年9月22日~11月25日、松戸市立博物館.
Nikon D500/AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G ED