人生には思いもよらぬことが起こります。
運命の出会いは人生の宝ものになるけれど、
大切な人が生命の危機に侵される時、
人生最大の困難だと悟るのです。
*夏*
主人の体調が優れなくなったのは今年の夏のことでした。
食欲が著しく落ちて、いつも具合が悪そうでした。
下腹部に痛みをかかえ、引きずるように会社へ行き、
帰宅するなり「食べたくない」と言うのです。
病院へはがんとして行ってくれず、
「休めば治る」と、週末は一人横になっていました。
「病院へ行って!」と言っては「時間がない」と言われ口論になり、
ストレスから目まいで倒れてしまったのもこのころです。
*秋*
秋になり、二か月で体重は7キロ落ちていました。
ズボンはみんなはけなくなり、靴もぶかぶかに。
時間を作って飲んだ胃カメラでは異常なし。
しかし、早めに受けた検診でリンパ腫に異常がみつかりました。
「明日にでも専門の病院へ行って下さい」
紹介状をもらって病院へ。
CT検査で大腸に6センチ大の腫瘍が見つかりました。
昨日までの当たり前だった平和な日々が、突然にして真っ暗になりました。
医師は「ずいぶん早い進行です。」と申し訳なさそうにおっしゃいました。
リンパ腫の腫れが見つかってから、一人きり、涙が枯れるまで泣きました。
私の夢を諦めても、全てを捧げるから、どうか最悪な結果でありませんよう。
神様、どうか助けて下さい。
☆絆☆
主人は検査の結果を持ち、子どもたちを座らせて
病気の経過を説明しました。
手術で悪いものをとってしまえば大丈夫だということ。
そして今こそ家族で協力して乗り越えていってほしいということを伝えました。
子どもたちはしっかりと聞き、その日から率先して手伝ってくれるようになりました。
それから大腸カメラ、注腸検査、PETCTと苦しい検査が続きました。
痛み止めを飲み続け、微熱がある身体で会社へ行く夫の後姿は
もう、哀しくて見ていられませんでした。
検査結果を聞きに行くたびに、何もはっきりしたことが解らなく、
とまどいと焦り、膨らむ不安に押しつぶされそうで、
本をむさぶるように読み、知り合いの医師を訪ねたり電話したり、
免疫療法を試したりしました。
大腸カメラは潰瘍がひどく、途中までしか通りません。
バリウムは薄めても腸が狭くなっていて通過せず。
細胞を取って病理検査に回して良性とでれば、
カメラが通らず悪性の部分が採取できなかったと弁明されました。
わからないことだらけで、時だけが過ぎて行きました。
その間、親友たちや両親が心の支えになってくれました。
病気が見つかったことによって固くなっていく人との絆。
家族との絆。
一緒に過ごせるひとときが、木漏れ日のようにキラキラ輝いているのでした。
続く
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