原発間近で“強行”された被ばく清掃…主催者女性は放言連発(『女性自身』11月10日号)
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「“道路”は命や健康と同じくらい大事です! 都会に住む人にはわからないだろうけど、我々は道路がないと生きていけません! 」
昨年、本誌調査で高い放射能汚染が確認された清掃イベント「みんなでやっぺ!! きれいな6国」が、今年も10月15日に開催された。道路への思いを開会式で語ったのは、主催の「NPO法人ハッピーロードネット」理事長の西本由美子氏(63)だ。
この清掃イベントは、福島第一原子力発電所付近を通る国道6号線沿い約50キロ・9区間(地図参照)を、地元の高校生含め、住民でゴミ拾いしようというもの。しかし、清掃コースの国道6号線には、帰還困難区域も含まれており、二輪や歩行での通行は禁止されているほど、放射線量が高い場所がある。昨年は、「子供が参加することで、無用な被ばくをさせてしまう」と、開催中止を求める声が全国から殺到。開催の是非が問題となった。今年は、主催側が事前に清掃コースの空間線量を測定し、安全性を確認したというが線量は公表されていなかった。開会式の前に西本氏を直撃して、その理由を尋ねた。
「空間線量は測りましたよ。でも、マスコミに公表するために測ったわけではありませんから。学校などには、ちゃんと事前にこれくらいの線量だって伝えていますよ」
今年は、対策も万全だと言いたいようだ。開会式間近の午前9時過ぎになっても、会場の二ツ沼総合公園(双葉郡広野町)に来る子供の姿は去年より少な目だ。会場で見かけた参加者募集のチラシを見ると、昨年は名を連ねていた環境省や東電などの名前が消えていた。
「あなたたちが嫌がらせしたでしょ。迷惑かけちゃいけないと思って後援をお断りしたんです。取材で傷ついた子供もいるんですよ」(西本氏)
それでも高校生や地元企業の社員ら約1,300人(うち高校生約90人)が集い、開会が宣言されて清掃がはじまった。本誌取材班はイベント前日と当日に地元で測定活動をする「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」の小澤洋一さんと共に、清掃拠点9カ所で土壌を採取した。その後採取した土の測定を行ったところ、7カ所から放射線管理区域である4万ベクレル/平米を軽く越える値が検出された。二ツ沼総合公園付近の土壌からも、38万2千ベクレル/平米もの放射性セシウムが出た。放射線管理区域とは、「一般人は原則立ち入り禁止、放射線従事者でも10時間以上の滞在は禁止」と法令(電離放射線障害防止規則・労働安全衛生法に基づく)で定められている、被ばくリスクのある場所だ。こうした場所で毎年、子供たちに清掃させていいのか――。 西本氏に土壌汚染の数値を示し、意見を聞くと、
「土壌の放射性物質? モグラじゃないから土の中は測りませんしわかりません。考え方はひとそれぞれ。私たちは、空間線量で判断しています」
と答えたが、呼吸による内部被ばくのリスクもある。視察に訪れていた国土交通省東北地方整備局磐城国道事務所長・松田和香氏がいたので、そのリスクについて意見を求めた。
「私たちも専門家から、できるだけマスクをして、作業後は手洗いをするようにと言われています。子供たちは、安全な場所しか掃除しないと聞いていますし、そうすれば問題ないと認識しています」
国道6号線は1日1万台もの車の交通量がある。トラックが行き交うたびに、砂ぼこりが舞った。松田氏が言うように、装着は必須なはずのマスクをしている子供は少ない。
「マスク? 除染しているし、安全だって言われているから気にしていません。道路がきれいになって、早くみんなが戻れるようになればいいな」
参加している双葉翔陽高校3年の女生徒は、そう話す。
全国で土壌測定を続けているNPO法人市民環境研究所の研究員で、第一種放射線取扱主任者の河野益近氏は、ホコリの吸い込みリスクについて、次のように指摘する。
「風で舞い上がった細かな土や砂は、雨に吸着するなどして地上に降りてきます。車のタイヤなどに付着して移動もします。だから、除染した場所でも、時間が経つと放射性物質がたまる場所がでてきます。人が呼吸によって放射性物質を体内に取り込むことも考慮しなければいけません」
河野氏に清掃拠点のひとつである「道の駅南相馬」付近に溜まっている土を集めて、網の目の細かいふるい(100ミクロン程度)にかけ、肺に吸い込む可能性がある細かな粒子に含まれている放射性物質を測定してもらった。すると1万1410bq/kg(※)の放射性セシウムが検出された(法令〈核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律〉に従えば100bq/kgを超える汚染物質は、ドラム缶に入れて厳重に管理しなくてはならない)。清掃中の地元住民の男性に放射線のリスクについて聞くと、あきらめたかのようなこんな答えが返ってきた。
「ハッキリ言って、原発事故があったんだから、安全なわけないんです。みんな本当は、うすうす気づいているはず」
各々が拾った清掃ゴミを集めて、イベントは午前中に終えたが、ボランティアで参加している子供たちに健康リスクが生じたら、大人はどう責任をとるつもりだったのだろうか。西本氏に問うと、キッパリとこう答えた。
「まったく考えていません。イベントに参加しているのは、みんな高校生。個々の判断で、個々の責任において参加してもらっています。そのあとどういうことがあっても、それは自分で判断したことです」
個々の判断と言うならば西本氏が冒頭で話したように、主催者側が事前に測定し、学校に連絡した現場の空間線量を子供たちが確認して、安全だと判断したうえでイベントに参加したのだろう。そう考えて参加校数校に問い合わせると、驚くべき事実がわかった。
「空間線量? 聞いていませんね。去年も参加しているので、とくに問題ないと認識しています」(双葉翔洋高校)
「主催者から空間線量は伝えられていません。だから生徒にも伝えていません。参加は自由ですし、清掃イベントがあると告知しただけです」(ふたば未来学園)
後日、ふたたび西本氏に、「学校側は、事前に空間線量を知らされていないと言っているが」と確認した。
「直前まで参加するかわからなかった学校には伝えていません。事前に空間線量を測ります、ということは伝えてあるけども……」
学校に空間線量を事前に知らせているという冒頭の話はウソだったのか――。
空間線量も知らされず、判断材料もないまま、参加した子供たちに健康被害が生じたら、「自己責任」にされてしまうのだ。そんな無責任なことがあっていいのだろうか。
「今後、子供たちが走りたいと言うなら、国道6号線で五輪の聖火リレーができるようにしたい。しっかり除染をしてもらいます」(西本氏)
被ばく覚悟の聖火リレーで復興アピールをするつもりなのか。健康リスクを無視して真の「復興」はありえない。
(※)風や雨で移動する細かい土砂のみを採取する場合は鉄管を使用しないので、容積(立方メートル)ではなく容量(kg)あたりに含まれる放射性物質を測定する。
取材・文/和田秀子
今年も行われた2020年の東京五輪に向けた「復興事業」の一環の清掃イベントは許せません!子どもを使っての「安全キャンペーン」。しかも、すべて自己責任という徹底した無責任ぶり。子どもがやりたいと言えば、何でもやる東京五輪など返上あるのみです。