アジア映画巡礼

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カンヌ国際映画祭のアジア映画:インド映画『サーカス』と韓国映画『DECISION TO LEAVE(英題)』

2022-05-03 | アジア映画全般

4月の仕事疲れでボーッとしていたら、5月17~28日に開催されるカンヌ国際映画祭の話題が流れてきました。まず、コンペティション部門に出品される韓国のパク・チャヌク監督作品『DECISION TO LEAVE(英題)』について、ハピネットファントム・スタジオからの情報が到着。キャスト、スタッフ等の情報とストーリーは以下の通り。

『DECISION TO LEAVE(英題)』
 2022年/韓国語/原題:헤어질결심
 監督:パク・チャヌク
 脚本:パク・チャヌク、チョン・ソギュン
 出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ(湯唯)、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ、パク・ヨンウ

Decision to Leave film poster.jpgDecision to Leave

<ストーリー>
 物語は、山でアクシデントがあり、一人の年輩の男が山の上から落ちて亡くなるところから始まる。現場に行った刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、事故ではなく殺人ではないかと考えていた。ヘジュン刑事は捜査の一環で、死んだ男の妻ソレ(タン・ウェイ)と会うことになる。ソレは韓国に住む中国人女性で、死んだ男よりはかなり若い。高齢者向けの特別な病院で働いており、親切で美しいが、ミステリアスな女性だった。ヘジュン刑事は、ソレに一目惚れしてしまう。
 ヘジュン刑事は、男を殺したのはソレではないかと疑いを持つが、ソレには当日のアリバイがあった。そこでヘジュン刑事は、捜査をする一方でソレを尾行したりと彼女を監視し始める。捜査の過程で二人が何度か出会うこともあり、ソレもヘジュン刑事が自分を監視していること、そして自分に特別な感情を抱いていることに気づき始める。さらにソレは、ヘジュン刑事に対して、自分も特別な感情を持っていることに気づいてしまう。
 ヘジュン刑事には仕事の関係で別の町に住んでいる妻がおり、二人の関係は良好だったのだが...。

STILLCUT

日本でも、2023年に公開が予定されているようです。カンヌ・コンペティション部門常連のパク・チャヌク監督、過去には『オールド・ボーイ』(2003)がグランプリ、『渇き』(2009)が審査員賞を受賞していますが、さて、今回は?

 

画像

もう1本の注目作は、デジタル・リマスター版が完成したインド映画『サーカス』です。日本でも人気のあるマラヤーラム語映画の監督アラヴィンダン(1935-1991)の作品で、日本では1983年の<インド映画祭>で上映され、好評を博しました。この時アラヴィンダン監督が寄せてくれたメッセージが下のものです。そこにもあるように、前年の1982年の<国際交流基金映画祭 南アジアの名作をもとめて>でアラヴィンダン監督の『魔法使いのおじいさん』(1979)が上映され、アラヴィンダン監督も来日したため、続いての日本での映画祭上映も快くOKしてくれたのでした。『魔法使いのおじいさん』は昨年の東京フィルメックスで上映されましたが、『サーカス』もまた上映されるといいですね。

『サーカス』
 1978年/インド/マラヤーラム語/B&W/130分/原題:Thampu/英題:The Circus Tent
  監督・脚本:アラヴィンダン(G.アラヴィンダン)
 撮影:シャージー(シャージー・N・カルン)
 音楽:K.N.パニッカル、M.G.ラーダークリシュナン
 出演:ゴーピー、ネドゥムディ・ヴェーヌ、ジャーラジャー

<ストーリー>
 南インド、ケーララ州の田舎の村に、小さなサーカス団がやって来た。水辺にテントが張られ、宣伝隊が村中にビラを配って歩く。小人にトラにヤギ、子供たちはわくわく、大人たちもうきうき。マネージャーは村長や村の有力者の所に行って頭を下げ、公演の協力を頼む。

 初日のふたがあく。来賓の挨拶のあと、いよいよ出し物が始まる。まず呼び物のトラの曲芸、そしてピエロたちの演技。愉快な死人を演じるピエロに、客席はどっと沸く。そのほか自転車の曲乗りや綱渡り。お客の目は舞台に吸いよせられっぱなしだ。

 でも、一見華やかなサーカスの裏には、人々の悲哀が込められている。一生懸命危険な曲乗り自転車の練習をする少女。一日の疲れを癒やしに飲み屋に入ったら、タクシーの運転手にからまれる団員。老いたピエロの顔は、昼間見るとゾッとするほど暗く、子供たちは逃げてゆく。彼は8歳の時10ルピーでサーカスに売られて以来、ずっと死人の芸を続けてきたのだ。

 サーカスをとりまく世界でも、いろいろな出来事が起こっていた。金持ちの父のやり方になじめず、老人から太鼓と古典歌曲を習う有力者の息子。水辺にたたずむ少女を見初めながら、自分1人栄転してゆく青年…。

 そしてサーカスは、来た時と同じようにまた村から去ってゆく。ひと興行終わってけだるそうな団員たち。村はずれまで来た時、有力者の息子がトラックを止め、サーカスに加わりたいと申し出た。マネージャーの許可が出て、彼はトラックの荷台によじのぼった。ピエロの隣にすわると、2人はもたれ合って静かに眠り始めた。

1983年の映画祭当時、インドからスチール写真をたくさん送ってもらったので、いろいろ付けてみました。写真裏の「Thamp」という文字は、アラヴィンダン監督が書いてくれたのでしょうか、見慣れた彼の字と似ています。「タンプー」というマラヤーラム語は、英語題名が「Circus Tent」となっているように、「サーカス」よりも「テント」という意味が強いそうです。1983年の上映時、字幕のマラヤーラム語監修を当時アジア経済研究所の研究員でいらした伊藤正二先生にお願いしたのですが、伊藤先生に寄稿していただいたパンフの解説では、「テント」という邦題の方がよかったかも知れない、とも書かれています。テントの中は現実の縮図、という意味合いだと思うのですが、私たち映画祭を主催したスタッフは、「サーカス」という言葉の方に世の中の縮図の意味合いを託したのでした。伊藤先生の解説も素晴らしいので、日本でもぜひ上映され、この解説が再度皆さんのお目に留まることを願っています...が、さて、当時の字幕のデータはどうしたんだっけ? ちょっと、40年前の資料をチェックしておきます...。

 


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