本日で第36回東京国際映画祭も終了しました。夕方から、仕事の傍ら授賞式を見ていたというか聞いていたのですが、受賞関係はイランと中国、そして日本の映画という、少々意外な結果となりました。授賞結果は次の通りです。作品について詳しく知りたい方は、こちらの公式サイトをどうぞ。
[コンペティション部門]
東京グランプリ/東京都知事賞
『雪豹』中国/監督:ペマ・ツェテン
審査員特別賞
『タタミ』ジョージア、アメリカ/監督:ザル・アミール&ガイ・ナッティヴ
最優秀監督賞
岸善幸監督『正欲』日本
最優秀女優賞
ザル・アミール『タタミ』ジョージア、アメリカ
最優秀男優賞
ヤスナ・ミルターマスブ『ロクサナ』イラン
最優秀芸術貢献賞
『ロングショット』中国/監督:ガオ・ポン
観客賞
『正欲』日本/監督:岸善幸
[アジアの未来部門作品賞]
『マリア』イラン/監督:メヘディ・アスガリ・アズガディ
[Amazon Prime Video]
テイクワン賞
『Gone with the wind』監督:ヤン・リーピン(楊礼平)
特別審査員賞
『ビー・プリペアード』監督:安村栄美
全作品を見ているわけではないので、この結果をどうこうとは言えないのですが、いろんな思い入れが作用した面があるのでは、という印象を持ちました。
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さて、それでついでに、と言っては何ですが、インド映画『相撲ディーディー』について、2、3補足しておくことがあります。
①冒頭に弔辞が2種類出ましたが、その一つ、主人公の父親役を演じたニテーシュ・パーンデー(Nitesh Pandey)は、本年5月23日に心臓発作で急逝しました。まだ51歳でした。ニテーシュ・パーンデーは1995年にヒンディー語映画『Baazi(賭け)』のチョイ役でデビュー、以後テレビドラマとボリウッド映画との両方で、脇役として活躍しました。印象深かったのは『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)の、現在パートで人気スターとなったオーム(シャー・ルク・カーン)のマネージャー役で、わがままオームに無理難題を言われているマネージャー役を好演していました。あの、「ペンを鼻の穴に突っ込んでみろ」と言われているシーンではないのですが、『恋する輪廻』での画像がありましたので、付けておきます。左がニテーシュ・パーンデーです。ご冥福をお祈りします。
②気がつかれた方がいらっしゃるかも知れませんが、劇中のセリフに、主人公の相撲ディーディーことヘタル(ヘータル・ダヴェー)のすごさを弟だったかと思いますが、「まるでバーフバリだね」と言っているところがありました。今回の字幕翻訳者さんは英語からの訳者さんだったようで、”バーフバリ”だと観客にわからないだろうと思われたらしく、”ハルク”(超人ハルクですね)としておられたのですが、ここは”バーフバリ”のままの方が会場で笑いが起きたと思います。もし、公開となった場合は、ぜひご訂正下さい。今のところ、公開のお話は耳に入ってこないので、ちょっと望み薄かと思いますが念のため。
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③それからこれは脚本の笑えないミスですが、冒頭、いかにヘタルの体重が重いか、というのを示すために、オートリキシャ(三輪タクシー。今はインドでは、タイ語から入った「トゥクトゥク」という名称で呼ばれることが多い)で上り坂を上がる時、後ろが重くて車が進まなくなる、という描写がありました。一瞬、笑えそうに思うのですが、オートリキシャは乗客定員は2名。体重が100㎏あったとしても、大人2人分の体重に比べれば少ないわけで、坂を上がれない、ということはありえません。この脚本家は、おそらくサイクルリキシャ(自転車でこぐ人力車↓)かコルカタの文字通りの人力車を想像して脚本にこういうシーンを入れてしまったのだと思います。下の写真のようなサイクルリキシャで、ヘタルがお客だと「あるある」なんですけどね。「う~ん、それでは笑えないよ~」と、最初からつまずいてしまった私でした。
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とまあ、『相撲ディーディー』も配給会社さんに強気で売り込めるレベルの作品とはちょっと言えず...というところです。もうちいっとがんばってほしいぞ、ボリウッドのフィルムメーカーの皆さん。来年は、もっとたくさんインド映画が上映されますように。