月曜日はお仕事と掛け持ちの日です。寝坊の私にしては早起きして出かけねばならず、昨夜も遅かった身としてはなかなかに大変です。おまけに、自宅を出る時は快晴だったのに、仕事先のある場所に着いてみると雨。あわてて傘を買ったりしました。異常気象の昨今、常に折りたたみ傘を持ち歩いてないとダメですねー。
今日の仕事は午前中で終わったので、午後はTIFFにかけつけ、DVDブースで1本とプレス用上映で1本。DVDで見せてもらったのは、プレス用上映が秒殺ならぬ分殺で満席となった韓国映画『レッド・ファミリー』です。コンペティション作品というのと、キム・ギドクがエグゼクティブ・プロデューサー、原案、編集を担当しているということから、プレスや評論家の皆さんの関心が高かったのだと思います。朝モタモタしていた私は、1、2分の差で予約できず、DVD鑑賞となりました。
物語は、北との国境に近い町で、なごやかに食事をする一家から始まります。祖父(ソン・ビョンホ)、まだ若い父(チョン・ウ)と母(キム・ユミ)、そして高校生の娘ミンジ(パク・ソヨン)。祖父を大切にする姿は、伝統的な韓国家庭そのもの。ところが家に戻ったこの一家は、様相が一変します。彼らは実は韓国に潜入した北朝鮮のスパイで、一番位の高い中佐である母をリーダーにして、脱北者の暗殺などを実行していたのでした。
一家が住んでいる家の隣りには、しょっちゅうケンカをする夫婦と中学生の息子、そして祖母が住んでいます。隣の行状にあきれるスパイ一家でしたが、やがて隣家の祖母はこちらの祖父に、そして息子はミンジに惹かれていって行き来が始まってしまいます。一緒に食事をすると、つい北の政権を擁護してしまうスパイ一家は、だんだんと墓穴を掘っていくことになり、ついには取り返しのつかない事件を起こしてしまいます...。
まず、韓国では「間諜もの」と呼ばれる北のスパイ映画が、途切れることなく作られていることにちょっとびっくりしました。8月にも、キム・スヒョン主演の『密かに偉大に』を見たばっかりだったからです。『レッド・ファミリー』はもっとシビアな描写が多い作品ではあるものの、本当なの?と思わせられるシーンもあって、イ・ジュヒョン監督の演出はキム・ギドク水準には至っていませんでした。というのも、隣家のケンカの声が聞こえてきて、「またやってる~」という顔をするスパイ一家が、自分たちは大声で任務に関する事柄を怒鳴り合ったり、庭やベランダで普通の声でしゃべったりするのですから、それでもプロのスパイなの?と思わざるを得ません。もっと、詰めを完璧にしてほしかった....。「間諜もの」は韓国ではウケるのでしょうか??
(せんきちさんの台湾みやげでいただいたチラシ)
台湾映画『失魂』の方は、王羽(ジミー・ウォング)が出ずっぱり、というので楽しみにしていた作品でした。台北の日本料理店で働くチュン(張孝全/ジョセフ・チャン)が魂の抜け殻のようになり、同僚たち(納豆がここでチラと出演してるのも嬉しい)に送られて台中のはずれ、山の中にある家に戻ってくるのが事件の発端になります。蘭を栽培しているチュンの実家では、父(王羽)と台北に嫁いだ姉(陳湘王其/チェン・シアンチー)が待っていてくれますが、そこから次々と事件が起きていきます。姉を訪ねてきた夫(戴立忍/レオン・ダイ)、警官(■宗華/ツォ・チョンホア)らも巻き込まれ、どうやらチュンの中には別人がいるらしいことがわかりますが...。
うーむ、わからん、というのが見終わったあとの感想。出演者は上記の他、金士傑、そして陳玉勲監督も特別出演するなど超豪華な顔ぶれなのですが、脚本も担当した鍾孟宏(チョン・モンホン)監督は説明する映画にはしたくなかったようで、謎は謎のまま進行していきます。映像も美しく、かつインパクトがありますし、俳優は全員が実力派で演技も見応えがあるものの、見終わったあと充足感がないのはちとつらかったです。台湾電影ルネッサンス、今回はいずれも「帯たす」(帯に短し、たすきに長し)作品でした...。