今日は台風かと思うような強い雨と風で、地下鉄六本木の駅からTIFF会場に着くまでに足下ずぶ濡れ、そして傘がお猪口になること2回。何だか連続で嵐に見舞われている首都圏です。週の後半にもまた台風27号が来襲するようですし、秋晴れの日が続いたTIFFは今いずこ...。
本日は、夕方にインド=イギリス合作映画『祈りの雨』のラヴィ・クマール監督をインタビューさせていただく予定なので、その下調べにもう一度DVDを見せてもらったり、今日あった一般上映のQ&Aを取材させてもらったりと、午後は『祈りの雨』デーとなりました。昨日の記事に書いたように、とてもしっかりと作ってある作品で、今日の上映では最後に拍手が起きていました。
Q&Aでは、ほとんど個人情報がなかったラヴィ・クマール監督についていろんなことがわかり(本業は小児科医で、以前は日曜大工ならぬ日曜監督だったそう。今でも小児科医は続けているそうです)、またインタビューでは、映画をどのように撮ったのか、という点について、詳しいお話が聞けました。1週間ほどあとになりますが、Q&Aとインタビューをまとめてアップしますので、しばらくお待ち下さいね。Q&Aの名司会兼通訳の松下由美さんが、インタビューでもヘルプに加わってくれ、3人でワイワイ雑談しているようなインタビューになりました。ラヴィ・クマール監督、日本でも自作の公開を、と強く望んでいますので、興味がおありになる配給会社様はぜひコンタクトをお願い致します。日本の原発事故とオーバーラップするところも多い力作です。
というわけで、本日見た作品は1本のみ。陳玉勲(チェン・ユーシュン)監督による台湾映画『総舗師―メインシェフへの道』です。亡き父(柯一正)が伝説のシェフだった小婉(夏于喬)は、借金取りに追われて故郷に身を隠そうとしますが、母の愛鳳(林美秀)もまた借金を抱えて夜逃げしていました。新しい場所に移った母の食堂もいまいち流行らず、召喚獣という変な3人組の若者ぐらいしか贔屓客がいません。食べに来た謎のしぶーい男、実は鬼頭師と呼ばれる料理人(喜翔)も、一口食べて席を立つ始末です。
そんな店の助っ人に、料理ドクターの葉如海(楊祐寧)が現れ、やがて小婉と母は台北で行われる料理対決に出演することに。台北に行った小婉は、以前台北を離れる時に父のレシピノートを盗んでいった男(呉念真)を見つけますが、彼は地下鉄の引き込み線でホームレスの仲間にまかない飯をふるまう、隠れたるシェフだったのでした。いろんな人の知恵や力を借りて、小婉母子は最終決戦に臨みますが....。
とっても盛りだくさんな映画でした。もちろん見どころは「料理の鉄人」もどきの料理対決なのですが、そこに到るまでにあちこち寄り道をして遊ばせてくれます。以前せんきちさんからこの映画のフォトブック(「電影書」と銘打ってある)「総舗師」を頂戴していたので、予習はバッチリだったものの、その予習を上回るおもちゃ箱をひっくり返したような作品でした。おいしいお料理もいっぱい出てきて、夕飯がマフィン1個だったお腹にはかなり目の毒のシーンも。ただ、トニー・ヤンの後半の活躍がいまひとつで、そこで彼を前面に押し出してくれないと、と少々不満も残りました。トニー・ヤンの包丁さばき、なかなか堂に入っていたのにねえ。
こんなに料理の名前が出たりしていては字幕も大変だったと思います。でも、ギャグもバッチリ生かした上手な字幕で、「お・も・て・な・し」まで使われていたのには大笑い。例の滝クリ・スピーチが話題になった頃、字幕翻訳をしていらしたのでしょうか。確か、「鮑智行」さんというお名前が出ていました。通訳もなさっている方のようで、今後字幕翻訳でも活躍なさるのでは、と思います。『27℃―世界一のパン』に続いての料理系台湾映画、2時間25分堪能させていただきました~。
私は、夏の旅行で乗り継ぎのため一泊滞在した際、ちょうど劇場公開初日(と、言っても先行上映があったようなんですが..)でしたので、映画梯子見の中で見ました。
映画祭での上映では、どんな日本語字幕になるのだろうと興味を持ちながら観ていました。
台湾語って、日本語に起因する単語、普通話を台湾語読みにした単語などが混ざっていますし、しかも、コメディとなると、字幕作成者泣かせなのではないかな?と、思います。
しかも、トニー・ヤンの話し方は、古い話し方だそうで(台湾の人は、その言い回しを真似たりしたようです。)、そのニュアンスまでを日本語字幕にするのは、無理というものですね。
「お・も・て・な・し」の字幕は、映画祭ならではですね。日本で劇場公開される場合は、別の字幕になっているのかもしれません。
>> 食べに来た謎のしぶーい男、実は鬼頭師と呼ばれる料理人(喜翔)も、一口食べて席を立つ始末です。
鬼頭師が看板メニューの卵料理を注文して食べるシーンですね。
コレは、たしか料理ドクター(トニー・ヤン)が師匠(鬼頭師)から教わった料理だったと思います。それを、愛鳳(林美秀)たちの前で披露したわけです。
愛鳳に、「うちの看板料理!」と、言われて、まさに、自分の弟子が教えた料理を注文していた訳です。
しかし、"味が解らない"ので、「コレは、自分の味ではないか!!」と、ならずに、黙って一口だけ食べて行った次第。
この後のシーンで、鬼頭師は再会した弟子に、「オレは味がわからない身になった..」というニュアンスの台詞を話します。
伏線を貼っていたようです。
鬼頭師のシーン、詳しい解説に感謝!です。そうか、まだまだ読みが浅かったです...。
鬼頭師を演じた喜翔という松重豊似の男優さんは、この映画で初めて認識したのですが、かつては映画にもいろいろ出ていたようで。本作で再び注目が集まっているみたいなので、また次作にお目にかかれるかも知れません。
台湾も、定番だった高捷、柯一正しら以外にも、喜翔にゲタの親分の馬如龍などなど、シブいおっさんがたくさん登場するようになりましたね。楽しみです。