アジア映画巡礼

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5月12日(金)公開『ブラフマーストラ』はインドの『ハリポタ』?<その4>インド映画のシリーズもの

2023-05-07 | インド映画

うかうかしていたら、『ブラフマーストラ』公開が今週の金曜日に迫ってきてしまいました。

以前こちらでご紹介した「キネマ旬報」5月上・下旬合併号掲載の特集では、高倉嘉男さんが「インド神話とスーパーヒーロー映画の華麗なる融合:ブラフマーストラ」という題で、本作の見所を実に上手に紹介してくれているのですが、その中で本作が3部作の第1部であることにも触れられています。

「インド神話ベースのマーベル風味スーパーヒーロー映画である。しかも、『バーフバリ』シリーズの2部作を超える3部作構成で、それらは『アストラバース』と呼ばれるシネマティック・ユニバースに包括されている。まず公開されたのは第1部のシヴァ篇だ。」(上記の高倉さんの文章より)

というわけで、今回日本公開される作品の原題は、「Brahmastra:Part One ーShiva」となっています。第2部のタイトルもすでに決まっていて、「Brahmastra:Part TwoーDev」なのですが、Wikiなどにも発表され、高倉さんの文章にも書かれているように、公開は2026年が予定されています。第1部の「シヴァ」はランビール・カプールが演じる主人公の名前であり、それがシヴァ神と二重写しになっていることは、日本版のメインビジュアルにも使われたイメージで上手に示されています。シヴァが右手に持っているのは「トリシュール(三叉矛)」と呼ばれる、シヴァ神を象徴する武器なんですね。この「トリシュール」も、神話世界の「アストラ(武器)」の一つです。

© Star India Private Limited.

では、「Dev」は? この名前はカタカナ表記にすると「デーヴ」か「デーウ」になるのですが、ローマナイズ表記が「v」なので、「ヴ」と表記する字幕翻訳者さんが多いようです。ただ、デーヴァナーガリー文字で書くと「 देव」で、実際の発音は「デーウ」となる場合の方が多いように思います。ちょっと脱線しますが、この間Netflixのサスペンス映画『Ittefaq(イッティファーク/偶然)』を見ていたら、主人公の警部がDevという名前のため、字幕が「デブ」になっていました。これは外来語のカタカナ表記の場合、「Silicon Valley」を「シリコンバレー」と書くように「v」音が「b」音に変わることがよくあるためで、ある大手の映画紹介サイトでは、必ずそうなっています。というわけで「デヴ」ではなく「デブ」になったのだと思いますが、せめて「デーブ」ならまだしも、「デブ」となると...。例えば、取調室に入れられていた被疑者は何度も尋問されるるうちに警部と親しくなり、ファーストネームを呼ぶ間柄だったのですが、彼を留置場に移送しようとやってきた警官との間でこんなやり取りが繰り広げられます。

警官「およびがかかった。行くぞ」 被疑者「デブは?」 警官「どのデブだ?」

日本語の「太った」という意味の「デブ」が連想されて、せっかくのサスペンスも台無しでした、トホホ。

© Star India Private Limited.

脱線から本線に戻しますが、デーウは今回の第1部にも人々の言及と、それからどうもあれがデーウではないか、という形で姿を現します。このあたり、よく見ておいて下さいね。それからすると、「Brahmastra:Part TwoーDev」は、どうも「エピソード・ゼロ」になるのでは、と推測していますが、できあがるのは3年先(インド公開からすると4年先)、さすが敏腕監督のアヤーン・ムカルジーもまだ大枠の構想しかないのでは、と思います。しかも最近のニュースだと、『ブラフマーストラ』シリーズのプロデューサーであるカラン・ジョーハルが、「『Brahmastra:Part Two』はいいから、ヤシュ・ラージ・フィルムズの『WAR 2』の監督をやってあげろよ」とアヤーン・ムカルジーに強く言っているとか。シャー・ルク・カーン主演作『Pathaan(パターン)』を大ヒットさせたヤシュ・ラージ・フィルムズが、「Spy Universe」というくくりで、サルマーン・カーン主演作『Tiger』シリーズの第3作に続いて、リティク・ローシャン主演の『WAR ウォー!!』の第2作を作ろうとしてるため、そちらを監督しろ、ということのようです。そんなの、『WAR ウォー!!』のシッダールト・アーナンド監督がやるのが当然だろう、と思うのですが、『Pathaan』を大ヒットさせたシッダールト・アーナンド監督は、目下リティク・ローシャンとディーピカー・パードゥコーン主演作『Fighter(ファイター)』を撮っているので、とてもできそうにないんだとか。ボリウッド映画界、どうもじっくりと計画を立てておもしろい作品を作る体勢になっていないようで、先行きがちょっと心配です。

© Star India Private Limited.

それにしても、今のインド映画界はシリーズものブームの時代と言いたくなる状況のようです。おそらく、テルグ語映画『バーフバリ』シリーズ(2015&2017)の大当たりからだと思うのですが、その後もカンナダ語映画『K.G.F』シリーズ(2018&2022)が大当たりし、いずれも「1」より「2」の方が興収がアップという、シリーズ化成功例となりました。先日「2」が公開されたタミル語映画『Ponniyin Selvan(カーヴェーリ川の息子)』(2022&2023)は、「1」の高興収に比べて「2」が伸び悩んでいますが、それでも豪華絢爛たる時代劇を2本、昨年、今年と見られた、というので観客の満足度は高いようです。『ブラフマーストラ』は人気シリーズになり得るでしょうか? これはひとえに、アヤーン・ムカルジー監督の手腕と決断にかかっていると思います。先に述べたカラン・ジョーハル・プロデューサーのおせっかい?に対して、アヤーン・ムカルジーは、「まず『ブラフマーストラ』の2と3を撮ってしまってから、『WAR 2』の撮影準備をするよ」と言っているそうで、超大物プロデューサーのカラン・ジョーハルの提言を斥けるとは、なかなか骨のある監督ですね。下写真のように、まだ若い監督ながら、大監督の器と言えそうです。

© Star India Private Limited.

そんな風に、インド映画界の今後も占える『ブラフマーストラ』。ぜひお見逃しなく! かなり内容を詳しく紹介した予告篇ロング・ヴァージョンもアップされましたので、これを見ていろいろ想像しながら、公開日5月12日(金)を待って下さいね。おっと、公式サイトはこちらです。上映劇場がどんどん増えているようですね。今回はどこに見に行こうかな...。

『ブラフマーストラ』予告篇ロングver.

 


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