アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

秋の香港映画<1>『ファイアー・レスキュー』

2014-09-25 | 香港映画

今週から本職(?)の仕事が始まってバタバタしていましたが、香港映画の力作を2本、ここらでご紹介しておきます。1本は霆鋒(ニコラス・ツェー)と余文樂(ショーン・ユー)が主演する消防士ものアクション『ファイアー・レスキュー(救火英雄)』、もう1本は香港映画お得意の3人バディもので、劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、張家輝(ニック・チョン)主演の『レクイエム 最後の銃弾(掃毒)』です。

では、まずは『ファイアー・レスキュー』から、データをどうぞ。


『ファイアー・レスキュー』 公式サイト 予告編 

2013年/中国=香港/116分/原題:救火英雄
監督:郭子健(デレク・クォック)
出演:謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文樂(ショーン・ユー)、任達華(サイモン・ヤム)、胡軍(フー・ジュン)、安志 (アンディ・オン)、白冰(バイ・ビン)

提供:カルチュア・パブリッシャーズ
配給・宣伝:フリーマン・オフィス

※10月11日(土)よりシネマート六本木、シネマート新宿、10月25日(土)よりシネマート心斎橋にてロードショー

©2013 Emperor Film Production Company Limited Media Asia Film International Limited 
All Rights Reserved

サムこと何永森(ホー・ウィンサム/ニコラス・ツェー)とチウこと游邦潮(ヤウ・ボンチウ/ショーン・ユー)、そして上昇志向の強いイップこと葉志輝(イップ・チーファイ/アンディ・オン)は同じ消防署の消防士。サムは「救人比救火緊要(人命救助は消火よりも大事)」を信念にしており、要領のいいイップと対立することもしばしば。この日の火災現場でも無理をしたサムとチウは負傷。その責任を問われた彼らでしたが、チウが「俺のミスです」と申し出て署長候補の一人になっていたサムは助けられます。

しかしながら、署長に昇進したのはイップでした。サムとチウもイップが署長となった新しい消防署に配属されますが、そこにはベテランの消防士タオ(サイモン・ヤム)もいて、「伝説の消防士」と呼ばれていました。さらに、新人にしては年を食っているホイ(フー・ジュン)も加わります。ホイは大陸で消防士をしていたのですが、ある事情により香港へと移ってきたのでした。皆が訓練に励む中、イップとサムの対立は深まっていきます。

そんな時、街の小さな工場が火事になります。すぐに鎮火はしたのですが、そのそばに発電所へと通じる天然ガスパイプがあり、サムの二次災害を防ぐための進言をイップが聞き入れなかったことから、発電所の大火災が引き起こされることに。香港中の電気が消え、大渋滞する街で、サムたちは消火に従事しますが、渋滞のため後続の消防隊がやって来られません。また、折悪しく小学校の見学遠足で発電所に行っていたチウの息子が、発電所に取り残されていることもわかってきます。破壊され、危険だらけの発電所の中で、サムとチウ、タオ、ホイらは取り残された人々を助けることができるのでしょうか....。

 

©2013 Emperor Film Production Company Limited Media Asia Film International Limited 
All Rights Reserved

ハリウッド映画『タワリング・インフェルノ』(1974)以来、火災ものパニック映画はアジアでもいくつか優れた作品を生んできました。すぐ思い出すのは、香港映画『ファイヤーライン(十萬火急)』(1997)や韓国映画『リベラ・メ』(2000)などですが、本作もその系統に連なる、火災パニック+アクション+人間ドラマ仕立てになっています。

火災パニック+アクションの面では、クライマックスの発電所崩壊シーンがとにかく大迫力のひと言。CGも相当使っていると思われますが、元朗(ユンロン)に作られたという大セットがとてもリアルで、各シーン手に汗握る緊迫感をもたらしてくれます。香港版Wikiによると、このセットは3ステージ分を使った広大なもので、監督のデレク・クォックは半年間にわたって香港や中国の過去の大型火災を詳しく研究し、シーンを組み立てたとか。

予算も大型時代劇なみの1億5千万香港ドル(約20億円)で、その中にはニコラス・ツェーに掛けられた高額保険金の掛け金も入っているそうです。つまり、ニコラス・ツェーはアクションをすべて自分でこなしたわけですね。煙が充満する中でのシーンも多く、出演者は皆さん大変だったことと思います。このクライマックスはとても見応えがありますので、ぜひお見逃しなく。

 

©2013 Emperor Film Production Company Limited Media Asia Film International Limited 
All Rights Reserved

デレク・クォック監督は1976年生まれで、2007年に『野・良犬』で監督デビュー。そして3作目の『燃えよ!じじいドラゴン 龍虎激闘』で大きな注目を浴びました。その後、2013年の『西遊記 はじまりのはじまり』では周星馳(チャウ・シンチー)監督のもとで共同監督(ていうか、実質的な監督ですね)として腕を振るい、さらに『ファイアー・レスキュー』でまた一段と成長、という、今後が楽しみな監督です。今後の課題があるとすれば、ドラマ面での弱さの克服、というところでしょうか。


©2013 Emperor Film Production Company Limited Media Asia Film International Limited 
All Rights Reserved

『ファイアー・レスキュー』で惜しいのは、あまりにもドラマ部分が陳腐、凡庸すぎること。というわけで、人物造形も平凡なものになっています。これだけ上手な俳優を揃えたのですから、これまでにないキャラクター作りや、背景ストーリーがほしかったですね。それにしてもニコラス・ツェー、最近何だか暗い役柄ばかりでちょっと寂しい限りです。ショーン・ユーも「いい人」というステレオタイプが続きますし、アンディ・オンも「悪いヤツ」一直線。香港映画界の皆様、宝はもっと大事にして磨きましょうね~。

と文句を言いつつも、久々に譚耀文(パトリック・タム)の顔も見られて(発電所責任者役。太っていてビックリ)、楽しんだ『ファイアー・レスキュー』でした。

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ダバング 大胆不敵』”男気”... | トップ | 秋の香港映画<2>2014秋の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

香港映画」カテゴリの最新記事