アジア映画巡礼

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『ジガルタンダ・ダブルX』は「つづく」なのか?

2024-09-23 | インド映画

先日、現在公開中のタミル語映画『ジガルタンダ・ダブルX』を劇場に見に行きました。観客は40名ほどとまずまずの入りで、女性観客はもちろん、若い男性から私と同年配の男性まで、いつものIMW(インディアンムービーウィーク)等映画祭上映での「圧倒的に30代の女性観客が多い」とはちょっと違った客席風景でした。実は『ジガルタンダ・ダブルX』をスクリーンで見るのは二度目です。前に見たのはIMWでの上映で、大好きな映画『ジガルタンダ』(2014)の続編かな、などと暢気なことを考えながら見ていたら、「映画監督としては駆け出しの男が、ヤクザ社会で有名なマドゥライに行って、ヤクザの親分を主人公にした映画を撮る」というコンセプトはほぼ同じでも、まーったく違った作品でした。そのギャップもあって、「なんじゃ、こりゃ」状態が開始から2時間続き、やっと主人公の片方、ヤクザの親分シーザー(ラーガヴァ・ローレンス)が身重の妻(ニミシャ・サジャヤン)を追ってその出身地である山地の村へ、レイ監督ことキルバイ(S.J.スーリヤー)を伴って赴くところからしか、お話に乗れませんでした。今回も、前回よりも内容に関してはよくわかったものの、やはり物語と演技に乗れず、最後の1時間だけを見てきた、という感じです。とはいえ、今回は強力な助っ人が! 安宅直子さんからいただいた、『ジガルタンダ・ダブルX』のパンフレットです。パンフ表紙と、映画のデータをまずどうぞ。

『ジガルタンダ・ダブルX』   公式サイト 
 2023年/インド/タミル語/172分/原題:Jigarthanda Double X/ஜிகர்தண்டா டபுள்எக்ஸ்/ 日本語字幕翻訳:矢内美貴、加藤豊/協力:ラージャー・サラヴァナン
 監督・脚本:カールティク・スッバラージ
 出演:ラーガヴァー・ローレンス、S・J・スーリヤー、ニミシャ・サジャヤン
 配給:SPACEBOX/宣伝:フルモテルモ
9月13日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開中

©Stone Bench Films ©Five Star Creations©Invenio Origin

主人公2人のうち、左のキルバイ(S.J.スーリヤー)は8ミリカメラを握り、右のシーザー(ラーガヴァー・ローレンス)はピストルを握る、というのが本編中のトレードマーク。冒頭、この二人が出会うまでの前段が語られます。キルバイは臆病者のくせに警察官志望で、採用通知をもらって有頂天になっているのですが、大学の学園祭で過激派と職員の騒動に巻き込まれたあげく、多くの死者が出たその殺人犯として逮捕されてします。収監中のキルバイは悪徳警視ラトナ(ナヴィーン・チャンドラ)に呼び出され、あるミッションを命じられます。それは、マドゥライ地方のヤクザの親分シーザーを暗殺する、というものでした。ラトナ警視の兄は、政治家をめざす人気映画スターのジャヤコディ(シャイン・トーム・チャッコー)で、現在の女性州首相チンターマニ(カピラ・ヴェーヌ)が後ろ盾。彼らに敵対するのが、野心的なマドゥライ地方の政治家カールメガム(イラヴァス)と、マドゥライを縄張りとする「ジガルタンダ極悪連合」、つまりそのボスであるシーザーで、州首相側は彼らを殲滅し、広大な山地を含む土地をわがものにするため、ラトナ警視を先鋒として乗り込ませていたのでした。そんな事情などつゆ知らぬキルバイは、友人ドゥライ(サティヤン)と共にシーザーの主演映画を作る企画に応募し、マドゥライにやってきますが、「サタジット・レイ監督の下で学んだ」というはったりが効いてシーザーからすっかり気に入られてしまいます...。

©Stone Bench Films ©Five Star Creations©Invenio Origin

2014年の前作『ジガルタンダ』では、主人公カールティク(シッダールト)がマドゥライにやってきて、ヤクザの親分セードゥ(ボビー・シンハー)に会うあたりからぐぐっとストーリーに引き込まれたのですが、今作はあまりにも格好付けすぎな主人公2人に、二度目のこの日も引いてしまいました。全体としては、前作以上に脚本がよく練られていてサービス満点なのですが、本物のジガルタンダが最近変身してがっかりさせられたように、「ダブルX」は「ジガルタンダ」の素朴な味が変わってしまって、私にとっては少々残念な作品になってしまっていたのでした。ここで、飲み物の「ジガルタンダ」をご存じない方にちょっと解説をしておくと、マドゥライ生まれのコールド・ドリンクというか、コールド・シェイクと言った方がいい、リッチな飲み物です。パンフレットの解説によると、「牛乳、アーモンド樹液の結晶、アイスクリーム、つる植物から作られるナンナーリ・シロップなどを混ぜて攪拌したもの」だそうで、チェンナイでは「ムルガン・イドリー・ショップ」というドーサーやイドリーなどを食べさせてくれるチェーン店のT.ナガル店で出してくれていました。私が知った最初の頃はこんな感じでした。

2016年3月。最初に食べた時は、夢の世界の飲み物か!というほどおいしかった。

2023年3月。店の前でジガルタンダを作ってくれているボーイさん。外にイスがあり、座って食べられる。

2024年3月に行ったら、上の説明写真のようにアイスクリーム・フロートみたいになっていて、シンプルなジガルタンダは姿を消していた。

とまあ、こんな風にジガルタンダ自体に思い入れのある私です。昨年チェンナイで会った友人によると、市中のあちこちにジガルタンダを食べさせてくれるショップが出来、そこがいろんな味のを売り出すようになった、とのことで、老舗のムルガン・イドリー・ショップもそれに対応したのかも知れません。オリジナルが一番良かったのに、というのは、映画『ジガルタンダ』も同じだと思うのは私だけ?

©Stone Bench Films ©Five Star Creations©Invenio Origin

とはいえ、『ジガルタンダ・ダブルX』は2023年11月10日に公開されると6億8500万ルピーという興収をあげ、ヒット目安の10億ルピーには届きませんでしたが、その年のハリウッド映画も含めた全インド映画興収の第51位となりました。これは、カールティク・スッバラージ監督にとっては、満足のいく成績だったでしょうか? ラストをご覧になって思わず、『ワイスピ』じゃないんだから、と言いたくなった方は多いと思います。セードゥが主人公の『XXX』が登場するかどうか、見物ですね。最後に予告編を付けておきます。

9.13公開『ジガルタンダ・ダブルX』予告編

 

<オマケ>
2014年の『ジガルタンダ』で主人公を演じたシッダールトですが、9月16日に女優アディティ・ラーオ・ハイダリーと結婚しました。シッダールト45歳、アディティ・ラーオ・ハイダリー37歳、二人とも離婚歴があるので再婚どうしですが、とても美しい結婚式写真がネットに溢れました。アディティ・ラーオ・ハイダリーの出演作は、日本では『パドマーワト 女神の誕生』(2018)と、デビュー後間もなくの作品『デリー6』(2009)しか紹介されていませんが、Netflixでは準主役を演じた『Heeramandi/ヒーラーマンディー:ダイヤの微笑み』(2024)が見られます。また彼女は、『花嫁はどこへ?』の監督キラン・ラーオの従妹にも当たります。お幸せに!

 


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