アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

5月と6月は『神と共に』<その1>『第一章:罪と罰』

2019-04-21 | 韓国映画と香港映画

間もなく4月も終わりですね。ということは、元号で言うと「平成」が終わるわけですが、新たに「令和」(さすがに古いパソコン、変換がイッパツではできません)となる時にふさわしい、大作が韓国からやってきます。以前にもちょこっとご紹介した、『神と共に-ALONG WITH THE GODS-』二部作です。『神と共に 第一章:罪と罰』が5月24日(金)に「転生ロードショー」と銘打って公開、そして『神と共に 第二章:因と縁』が6月28日(金)にこちらは「輪廻ロードショー」と銘打って公開されます。勝手な解釈なのですが、「令和」という字を見た時、真っ先に浮かんだのはこの映画でした。公式見解とは違うのですが、字から受けるイメージ「令(命令、規則)に拠り和す」が、まさしくこの映画そのものだったからです。それが当たっているか否かはご覧になって判断していただくとして、まずは『第一章:罪と罰』をご紹介しましょう。

『神と共に 第一章:罪と罰』 公式サイト
 2017年/韓国/韓国語/140分/原題:신과함께: 죄와 벌
 監督:キム・ヨンファ
 出演:ハ・ジョンウ、チャ・テヒョン、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ、イ・ジョンジェ、ド・ギョンス(D.O.)
 配給:ツイン
5月24日(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー


© 2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

物語の始まりは、ある高層住宅の火災現場。燃え広がった炎の中から、消防士キム・ジャホン(チャ・テヒョン)は女の子を助け出すのですが、はしご車が届かず女の子を抱えたまま地上に落下してしまいます。女の子が無事だと知って安心したジャホンは、「よかったね。何て言う名前なの?」と尋ねますが、女の子はジャホンの声が聞こえないかのように無視して、心配して待っていた母親に抱きつきます。何か違和感を感じたジャホンが見回すと、何と地面に自分が横たわっており、同僚の消防士たちが必死で救命措置を施していました。そのジャホンの前に現れたのは、若い男(チュ・ジフン)とハイティーンの女の子(キム・ヒャンギ)。彼らは冥界から来た「使者」と名乗り、ジャホンを冥界に連れて行くために来たと言います。名前はヘウォンメクとドクチュン。使者はもう1人いるのですが、その使者カンニム(ハ・ジョンウ)は葬儀の場所でご馳走を味見中。こうして3人の使者に伴われ、ジャホンは冥界の門から中に入っていきます。

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冥界には7つの地獄があって、それぞれに閻魔大王(イ・ジョンジェ)ら7人の裁判長がおり、死者を吟味して、転生させるに値する人間かどうかを見定めます。検察官役の判官(オ・ダルス、イム・ウォニ)が罪状を述べるのに対し、使者のリーダーであるカンニムは弁護を担当し、ドクチュンはその助手、そしてヘウォンメクは警護役でした。ジャホンの認識カードには「貴人」と書いてあり、これは問題なく転生できる死者だと思われたのですが、地獄を次々と巡っていくとジャホンの思わぬ過去が暴かれていき、3人の使者は焦ります。というのも、彼らは過去1,000年の間に47人を転生させた実績を誇っており、49人を転生させれば彼ら自身も人間に生まれ変わることが約束されていたからでした。その大事な48人目のジャホンなのに、どうやら兵役についている彼の弟スホン(キム・ドンウク)と後輩兵士ドンヨン(ド・ギョンス(D.O.))との間で何かがあったらしく、それが悪影響を与えているようです。冥界と下界を行ったり来たりしながら、3人の使者は奮闘しますが....。

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人間が死んだ後、霊魂が49日間留まる中天という場所がある、という考えに基づくチョン・ウソン、キム・テヒ主演作『レストレス 中天』(2006)を見た時、「四十九日」という仏教思想を映像化するとは韓国映画はすごいなあ、と思った憶えがあるのですが、本作もまた、その思想に基づいています。わが家は浄土真宗なのであまり馴染みがなかったのですが、今回いろいろ調べてみると、こちらのサイトに「四十九日は仏教用語のひとつで、死後49日目のことをいいます。宗派によって若干違いはありますが、この49日の間に、極楽浄土に行けるかどうかの『お裁き』が行われるといわれています。この『お裁き』は一度ではなく、7日ごとに7回あります」とあり、なるほど、それを描いたのが『神と共に』なのか、と納得しました。続けてこのサイトでは、「遺族は7日ごとの追善法要のときに中陰壇の前に座り、故人が極楽浄土に行かれるように供養します。(中略)浄土真宗は『臨終と同時に極楽浄土に往生する』、つまり、臨終と同時に成仏するという教えのため、四十九日は供養ではなく、故人を偲び、仏教に親しむ期間とされています」と書いてあり、浄土真宗ではそういうお説教を聞いたことがなかったわけがわかりました。

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本作では、まさしくその7回の裁きが描かれ、上写真の閻魔大王(イ・ジョンジェがこの姿や髪を束ねない長髪姿で登場して、深くてよく響く声で裁定を申し渡します)が最終的な言い渡しをするのですが、それぞれの裁きが「ウソ」「裏切り」「怠惰」等の地獄と結びつけられていて、そのヴィジュアル化に感心してしまいます。中には意外な俳優が大王として登場する地獄もあり、よくぞ考えたものよ、と脱帽ものでした。本作のキム・ヨンファ監督は、前作こそCGでゴリラを生み出し、野球選手として大活躍させた『ミスターGO!』(2013)でしたが、その前は『国家代表!?』(2009)、『カンナさん、大成功です!』(2006)、『オー!ブラザーズ』(2004)という現代劇の秀作コメディを作っている人だけに、こんな壮大なファンタジーが撮れる監督とは思いませんでした。いつものように、脚本もキム・ヨンファ監督自身が書いています。

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途中、ちょっと詭弁に思われるシーンや、後味のあまりよくないシーンもあるのですが、考えているうちに次のトンデモなシーンが登場して、あれよあれよという間に地獄巡りが進行していきます。それと、使者3人のそれぞれの演技が素晴らしい上、アンサンブルが見事と言っていいほどよくて、ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、そしてキム・ヒャンギを見ているだけで大いなる充足感が得られるため、少々の齟齬はどうでもよくなります。中でもチュ・ジフンの、ちょっといいかげんで軽めのキャラなのに、熱いものがほとばしるような一途さは、ものすごく魅力的。なぜこの「ヘウォンメク(本作が大ヒットした香港では”解怨脈”という字が当ててありました)」が「熱い」のかは、『第二章:因と縁』を見ると説明がつくのですが、それなら「いいかげんで軽い」ところは冥界に来てから習得したのか、とか、すっかりこの映画世界にハマり込んで見てしまいました。

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ご覧になる方はきっと、一度見ただけでは満足できないと思います。チャ・テヒョン演じるジャホンの物語だけにフォーカスしてまず1回、3人の使者に密着して2回目、そして地獄の描写とその合間に現れるものに目をこらして3回目...と、たっぷり3回は楽しめる『神と共に 第一章:罪と罰』『神と共に 第二章:因と縁』を見る日のためにも、ぜひ複数回ご覧になっておいて下さい。『第一章』の予告編を付けておきます。

 映画『神と共に 第一章:罪と罰』予告編

 

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