2017年は私にとって、インド映画『裁き』の年だった、と言うことになりそうです。これまでブログに何度か記事を書いたように、いろいろと発見のある映画で、何度見ても、見れば見るほど面白いのです。本日は横浜シネマリンにお邪魔して、30分のトークをしてきました。(以下、画像はすべて『裁き』のシーンより)
シネマリンは前から行きたかった劇場で、今回、場所を地図で確認して行ったのに入り口が探し出せず、結局電話して劇場の方にお迎えに来てもらう羽目に(トホホ...)。ところが、このお迎えに来て下さったスタッフの方がまた、すごいインド映画好きの方で、それだけで嬉しくなってしまいました。館主の八幡温子さんとは以前に何度かお目に掛かっており、そんなご縁でトークに呼んで下さったのですが、このシネマリン、実は歴史のある映画館が2014年4月にリニューアル・オープンしたもので、そのあたりのストーリーはこちらのルポに詳しく載っています。リニューアルから3年と少し、すっかり地域に定着しているようでした。
今回初めて訪れてみて驚いたのは、その施設の充実ぶり。上映ホールのゆったりした感じ、スクリーンの大きさ、見やすさなど、あとでスクリーンを最大限大きくした時のご苦労を八幡さんからうかがったのですが、そのご苦労が報われているホールです。八幡さんのお話では、リニューアル時の劇場改装コンサルタントがアテネ・フランセ文化センターの堀三郎さんだったとのことで、その道の超一流プロが手がけられただけのことはあります。そのほか、トイレも最新の設備になっていて、パウダースペースもあり落ち着けます。ミニシアターとしてのホール入り口への動線、ホールからの出口が2箇所になること等々もよく考えられているなあ、と思いましたし、入場を待っている間もロビーの壁際が長いベンチになっているので、掛けて待っていられます。今度はぜひ観客として来て見たい、と思わせられる劇場でした。
私のトークは、ボンベイ(現ムンバイ)のお話から始まって、主人公ナーラーヤン・カンブレーの背景に関すること、特に、「ダリト」と呼ばれる人々について、そして、あとの主人公たち、弁護士のヴィナイ・ヴォーラー、女性検事ヌータン、裁判長サダーヴァルテーについて、今観客の皆さんが見て下さった画面に即しながらのお話でした。今日の観客の皆さんも、聞きながらうなずいて下さったりしてとても反応がよく、ついつい興が乗ってしまって時間を食ってしまい、裁判長の話に移る前でタイムキーパーの八幡さんにストップを掛けられる始末。次の映画『夜明け告げるルーのうた』の上映をお待ちだった観客の皆様には、ご迷惑を掛けてしまってすみませんでした。
八幡さんからは、「1時間のレクチャーとしてやりたいトークですね」と言われてしまったのですが、そう言えば専修大学で予告編を使ってやった時も1時間半の授業だったので、私にとって『裁き』はいくらでもしゃべれる作品、と言えそうです。事前に八幡さんからは、「最後に観客とのQ&Aもお願いします」と言われていたのに、そこは終了後のロビーでのやり取りに持ち越してしまいました。ロビーでは、女性専用車両について聞いて下さった方や、レストランを出た弁護士を襲うゴイマル派について聞いて下さった方(インタビュー時にチャイタニヤ・タームハネー監督に教えてもらったのですが、あの”ゴイマル派”は架空の宗派の名前なのだそうです。「インドで実在する宗派名を出すのはやはりまずいのでね」とのことでした)、そして、サタジット・レイ監督の映画を思い出したと言って下さった方(「インド映画の監督で好きな人は?」と監督に聞いたら「サタジット・レイ監督ですね」という返事が返ってきました)等々がいらして、ロビーでのトークも楽しかったです。
横浜シネマリンでの『裁き』の上映は、一応9月8日(金)までが決まっているようです。お早めに、いらしてみて下さいね。劇場の公式サイトはこちらです。帰りは、黄金町にあるシネマ・ジャック&ベティまで行ってみようと、歩行者天国になっている通称「伊勢佐木モール」をずーっと歩いて行ってみたのですが、古本屋さんが数軒あって、寄り道したりしていたら最後にはエネルギー切れ。よく考えたらジャック&ベティをはるかに通り越していたので、阪東橋の1つ手前のバス停からバスに乗って横浜駅まで行ってしまいました。この伊勢佐木モール界隈は中国の人たちがすごく多くて、ネオ中華街という感じです。時にはベトナム語だと思う言葉も聞こえたりして、思わず「そこの横浜シネマリンで、9月2日(土)からベトナム映画『草原に黄色い花を見つける』の上映がありますよ~」と言いそうになりました。私も今度は、観客としてシネマリンにお邪魔しようと思います。シネマリンの皆様、今日はどうもありがとうございました!
本当に良い映画を見た、という充実感がありました。下水道掃除人の妻なども含め、登場人物一人ひとりの存在感がくっきりと立ち上がってきますね。事前にこのブログの関連部分を全て読んでおいて本当に良かったです。見ただけではなかなか分かりづらい背景がよく頭に入ってきました。現在育児に追われほとんど映画を見る時間を取れない中、貴重な時間を持てて感謝です。紹介して下さったお礼を申し上げたくてコメントしました。
拙ブログがお役に立ってよかったです。
上にも書いたように、見るたびに発見がある映画なのでいくらでも論じられるというか、自分でも不思議なくらいハマってしまいました。
こんな映画も珍しいなあ、と、企みに満ちた脚本で作品を作ってくれたチャイタニヤ・タームハーネー監督に感謝しています。
そんな私がいまひとつわからないのは、ラストのラスト、外のベンチでまどろんでいる裁判長が子供たちに起こされて怒る、というシーンで、今度監督に会う機会でもあったら、「あのシーンをなぜラストに入れたの?」と聞いてみたいと思います。
もし、この謎を解き明かして下さる方があったら、ぜひコメントをお寄せ下さいませ。