アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ならシネマテークのお仕事

2016-01-09 | 映画一般

奈良にかつて存在した映画館尾花座。その跡に作られたホテル・サンルート奈良に移動してきました。さあ、いよいよ本番のお仕事です。まずホテルの入り口にある、尾花座の石碑をパチリ。高校の先輩、桂米朝さんの揮毫によるもので、これを拝みたかったのです。


実は、こんな映画館だった尾花座をしのんで、昨夜一足先にホテル・サンルート奈良の和食レストラン「おばな」に行ってきました。ここは会席料理のコースが何種類かあるのですが、ホテルの宿泊客向けにリーズナブルなコース「おばな」というのが作られています。それを知らずに行った私は、「明日ここに泊まるんですが、今日、このコースをいただいてはダメですか?」とずうずうしく言ってみたところ、「はい、かまいませんよ。どうぞどうぞ」と係員の方がやさしく言って下さって、めでたく「おばな」を頂戴することができました。こういう融通性のあるお店、素晴らしいですね~。


「おばな」コースはお味もすばらしく、初春らしい献立で十二分に満足させていただきました。上は左から順番に、先附(ブロッコリー、湯葉、柚子麩、人参、大根、酢味噌かけ)、煮物椀(お清まし仕立てで、助子真丈、しゃぶ餅、白木耳、で柚子の香りつけ)、炊合わせ(蕪蒸しで中には鰆、百合根、銀杏で、山葵が乗り、吉野葛の餡掛けが全体に)という本日のベスト3。器も凝っていて、目でもおいしさを感じさせてくれます。お料理は最後のデザート(何とおぜんざい!)まで入れると全8種で、お腹がいっぱい、どころか200%満杯になりました。普通は1時間半ほどかけてゆっくりといただくコースなのですが、「午後8時に約束があって...」というと、15分ぐらい早回し(?)で供して下さり、こちらもとっても助かりました。


その後腹ごなしを兼ねて奈良女子大の講堂へ。『マダム・イン・ニューヨーク』の上映は、この日は終了後事務局の中野さんがまとめのトークをなさっていました。観客の方にマイクを向け、感想を聞いたりもなさるのですが、驚いたことに観客の皆さんはものおじせずにどんどん発言なさっています。素晴らしいですね、奈良の皆さん。

この中野さんは、『マダム・イン・ニューヨーク』の提供元ビオスコープの社長というか、大企業のサラリーマンを辞めてインド映画を買ってしまった人として有名な大向敦さんの従妹さんです。大向さんは小さい時から、伯父さんの経営しておられる映画館尾花座(尾花劇場)に入り浸っていたそうで、映画の虫が最後はインド映画に着地した、というわけなのでした。なお、『マダム・イン・ニューヨーク』ともう1本のビオスコープ作品『ダバング 大胆不敵』のポスターなどを担当なさった図案計画のデザイナーのルフィさん(「ワンピース」のルフィそっくり!)こと坂東さんも、大向さんと小学校からの同級生で、つまり「コンビ奈良」がこの2本を日本で有名にしたと言っても過言ではありません。というわけで、ある意味『マダム・イン・ニューヨーク』@奈良は凱旋上映でもあるのです。


今回の上映会場は奈良女子大(左はかわいい正門で、その向こうに見える記念館と共に何と重要文化財)の講堂(右写真)。奈良女子大も歴史が古い大学で、私の遠縁の女性(稲葉文枝と言います。遺伝学の研究者だったらしい)が先生をしていたこともあり、昔からご縁のあった大学でした。この大学に行く途中には、古ーい映画ポスター掲示板がまだ残っていて、今はなくなってしまった奈良市内の映画館の名前が読み取れました。


奈良の街中にはもう映画館が1軒もなく、それもあって、なら国際映画祭のスタッフの皆さんがシネマテークという名前で自主上映を続けておられるのですが、この掲示板、「中央劇場」「奈良観光会館地下劇場」「奈良三条通り谷井興行KK」というような文字が読み取れます。今朝の新聞の映画案内欄には、「イオンシネマ西大和」「シネマサンシャイン大和郡山」などのシネコン名がいくつか載っているものの、市内の目抜き通りにあって、ちょっと仕事帰りに寄って見ていこう、というような映画館はもう姿を消して久しいのだとか。ミニシアター系の作品を見たい時には、皆さん大阪や京都まで行ってご覧になるのだそうです。

でも、なら国際映画祭が始まってから、少しずつ状況は変わってきているのでは、と思います。その一つがこのシネマテークでの上映で、作品選択もナイスなら、観客の皆さんもこれまたナイス。事務局には、高校生、大学生のボランティアの皆さんもいて、未来の映画ファンが育っている感じでした。というわけで、事務局の皆さんとパチリしました。今回だけ、例外的にcinetamaが素顔を出しています(お見苦しくてすみません;;;)。みなさんが抱えて下さっている「インド映画完全ガイド」もよく売れて、本当にありがたかったです。

で、最後に、『マダム・イン・ニューヨーク』に関して、観客の皆様や事務局の皆様から出た質問で、特に多かった3つをまとめておきます。 

1.原題が「English Vinglish」ですが、「Vinglish」ってどういう意味?

→「何かかにか」の場合の「かにか」に当たる言葉で、ゴロ合わせで作られた言葉です。

 

(C)Eros International Ltd

2.オープニングタイトルで、スタッフ・キャストの名前や担当名の英語が一部、赤字で違う文字に変わりますが、あれは?

→同じ音のヒンディー語の文字(デーヴァナーガリー文字と言います)に変わっています。下のポスターのように、「ENGLISH VINGLISH」の最初の「G」と、2番目の単語の最後の「SH」が「ग」と「श」に変わっていますね。本来なら「ग」は「ga」、「श」は「sha」という発音であるものの、いくつかの法則性(次に長母音が来た時や、語末だったりすると「a」の音が落ち、子音のみとなる)により「g」「sh」の音にもなるので、これを見たインド人は「インリッシュ」ではなく「インリッシュ」、「ヴィングリッシャ」ではなく「ヴィングリッシュ」と読める、というわけなのでした。オープニングタイトルを細かく見てみると、観客が元の発音で読みやすいところがデーヴァナーガリー文字に変化させてあります。ぜひ、DVDで確認してみて下さい。


3.中にラドゥというお菓子が出てきますが、あれはどうやって作るのですか?

→ラッドゥ(laddu)の方が正確な発音に近いのですが、まん丸に固めた甘いお団子ですね。ベーサンと呼ばれるひよこ豆(チクピー)の粉で作るのが一般的で、映画の中ではゆるく溶いたタネを穴あき杓子から油の中に落として小さな揚げ玉を作り、それをシロップで固めていたと思います。ベーサンに砂糖やギー(インドのバターのようなもの)を混ぜてそのまま丸めるやり方もあり、アーターと呼ばれる全粒粉を使うものもあるようです。インドのお菓子屋さんでもよく売っていますが、ヒジョーに甘いです。大きさは、日本の月見団子ぐらいのものから、ゴルフボール大ぐらいまでが多いです。

(C)Eros International Ltd

奈良での『マダム・イン・ニューヨーク』上映、2日間続けて見に来て下さった方や、「ブログ、読んでます」と言って下さった方、わざわざ大阪から来て下さった朝日カルチャーの方などなど、楽しい出会いがいろいろありました。なら国際映画祭の皆様、お世話になりましてありがとうございました! また来たい、奈良&ならシネマテークでした。




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2 コメント

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楽しい時間でした! (みどり)
2016-01-26 12:10:34
初めて投稿させていただきます。
先日の奈良女子大での上映を鑑賞さえていただいたものです。

インド映画にはあまり馴染みがなかったのですが、この映画には本当に感動いたしました。
またラッキーにもcinetamaさんのトークショーにも参加できこれからはインド映画もどんどん観ていこうと決心いたしました。
ご著書も購入させていただきました。
とても読みやすい本で初心者の私にぴったりのガイドブックです。

奈良市に映画館がなくなって久しいのですが、このような機会を作っていただいているシネマテークの皆さんには本当に感謝です。
また2本の映画の公開に奈良ご出身の方々が係っていらっしゃることを知りちょっと嬉しいです。
ぜひもう1本の『ダバング』(じつはユーチューブで予告編を見てとても気になってます!)も奈良で観る機会がありますように。

このたびはわざわざ奈良までお運びいただきありがとうございました。
帰ってすぐにブログを拝見していましたが、なかなかカキコできずにすいません。
今後ともよろしくお願いいたします。
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みどり様 (cinetama)
2016-01-26 19:03:50
嬉しいコメントをありがとうございました。

映画を見に来て下さり、本もご購入下さったとのこと、御礼申し上げます。
あそこに取り上げた日本での公開作は、ソフト化されているものがほとんどなので、いろいろ見ていただけたらと思います。
まずは『ダバング 大胆不敵』ですね。
『マダム・イン・ニューヨーク』とは180度違う、度肝を抜かれる作品ですが、それもまたインド映画。
大向さんも「ぜひ奈良で!」と願ってらっしゃるので、早く実現することを祈っています。

それにしても、奈良の皆さんの映画愛には感動させられました。
それと、今回奈良に行ってみて、歩いてあちこち回れる素敵な街だと実感したので、ぜひ奈良再訪をしたいと思っています。
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いします~。
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