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「あなたと生きる」
俺が変わってしまっても、
俺が俺でなくなってしまっても平気なのか?
私が、
私がずっと、そばにいます。
■監督 堤幸彦
■原作 荻原 浩(「明日の記憶」)
■キャスト 渡辺謙、樋口可奈子、香川照之、水川あさみ、及川光博、渡辺えりこ、大滝秀治、袴田吉彦、坂口憲二、吹石一恵、木梨憲武
□オフィシャルサイト 『明日の記憶』
広告会社の営業マンとして働く雅行(渡辺謙)は、時に家庭を返り見ないほど仕事に没頭してきた。 50歳を前に、大きなプロジェクトと娘(吹石一恵)の結婚を控え忙しい日々を送っていた雅行は、ある日、原因不明の体調不良に襲われる。 ミーティングを忘れたり、部下の顔が思い出せず、心配になった雅行は病院を訪れ、医師から「若年性アルツハイマー」の診断を受ける。 そんな雅行を、妻の枝実子(樋口可奈子)は献身的に支え、一緒に病と闘うことを決心する…。
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★★
今、この映画の原作者でもある荻原浩氏の本にハマっている。 残念ながらこの映画の原作は未読なのだが、「神様からひと言」「なかよし小鳩組」、そして今「母恋旅烏」を読んでいる。 既に他にも何冊か買いためてある。 どうしてもこの映画も上映中に必ず観たいと思っていて、劇場は30日までということだったので、やっと観ることが出来た作品です。
最近、物忘れが多くなってきて、これだけ好きな映画のことも、俳優の写真を見て名前が出てこなかったり、今まで忘れ物なんてしたことがなかったのに、携帯をわすれてしまったり・・・。
なんとなく、病気とまではいかないけれど、年を重ねるごとに忘れっぽくなってくるのは仕方がないことなのかもしれない。
この映画では、まさに働き盛りの中年が「若年性アルツハイマー病」を発症し、この病いを自身の中でどう受け止め、また妻・家族、会社の上司や同僚・部下とどう対峙していくか、この病気が発症しやすい年代の主人公の心情を描いている。
予告編で観た「次の言葉を覚えて下さい。あとでまたお聞きしますので。」 “桜・電車・猫”。 たった三つの言葉が、次の質問が続けられた後にもう一度聞かれて思いだせなくなる。 医師のデスクに置かれた5つの物が、封筒で隠されたときに言えなくなってしまう。 普通の人ならばどうってことのないことなのだが、この病気はそれら直前の記憶すら奪ってしまう。
人間の脳は、新しい記憶から堆積され、古い記憶は消えないまでも奥隅に追いやられて埋もれてしまう。 そして何かをキッカケに古い記憶を取り戻すことがある。
先日、高校の同窓会に行ったときに、僕自身はすっかり忘れてしまっていたことも、友人の話をキッカケに埋もれていた記憶が取り戻せたことがある。
しかし、病気となれば話は全く違ってくる。
これは誰にも発症する可能性はある。 自分とて可能性はあるはずだ。 そう考えたとき、もしもこの主人公の立場になったとき、果たしてどんな生き方をするのだろうか、回りの人にどう対処するのだろうか。 そんなことを考えながら主人公の生き方に自分をも重ね合わせて観てみた。
渡辺謙は自身でこの原作を読み、気に入って主演はもとよりプロデューサーとしてこの映画化に取り組んだそうだ。 ハリウッド映画の出演を機に世界を舞台にし出した彼が、お膝元のしかも自身が白血病に苦しんだ過去の経験を元に、この主人公を迫真の演技で伝えてくれた。
言葉にしてしまうとニュアンスが違ってしまうのだが、夫婦が最後まで信じきって生きることは、単にきれいごとだけでは済まされない部分があるだろう。 特に40代から50代の働き盛りにどちらかがこういう病気の事実を知らされ、しかも面倒をみる自分の記憶すらも忘れ去られていく現実を日々直面していくわけである。 許せること許せないこと、以前の深い愛情がなければとても耐えられないことなのかもしれない。
何故イントロであのとっての取れたコーヒーカップが映ったのか・・・。 これは素晴らしいラストカットの一番大きな伏線だった。
自分の記憶が消えていく中、一番消えて欲しくない存在を、主人公は妻と出会うキッカケとなった陶芸の、そして大切な妻の名前をその焼いたカップに残すためだった。 当たり前のだが非現実的な要素もあるけど、妻の名前を焼き入れる主人公の自分自身への想い出と、一番大切な、そしてこれからも一番迷惑をかけるだろう妻の名前を残したことに、涙を堪えられないわけがなかった。 そこに渡辺謙が自らも経験した“病い”への闘いの、経験という演技とは別の真実の見せ場があったと思う。
そして妻役の樋口可奈子が一部の隙もない演技で見せて枝実子。 素晴らしい演技だった。 そして彼女に一番感動したのは、夫を探しに行き、昔出会ったその場所で、駅までの戻る道すがら、既に妻も分からなくほど病気が進行したと知ったときの泣き顔が、振り向いたときには出会った頃のようなまるで娘のような笑顔で夫を見つめていた表情に涙が溢れました。 覚悟していたとはいえ、妻であり20数年一緒に過ごしてきた夫が自分のことを分からなくなるって、正気では決していられないと思う。 気丈な彼女が、いつかこの日が来ることを自分の中で消化し、そしていつまでも今までどおりこの人と生きていこうと再確認した映画に僕には見えてしまった。 泣きながらも本当に出会った頃のような笑顔を見せる演技はさすがに樋口可奈子の女優としての力量だと感心した。
夫婦は色んな関係であると思う。 世間的には夫婦でも、当人同士は友達であったり、親子であったり、男であったり、女であったり、そして時には他人でもある。
違った環境で育ってきた全く違う二つの個性は、ただいたずらに年月を重ねるだけでは、その生活を持続させることはいたって難しいと思える。
うちの夫婦に置き換えると、僕が先に逝く事は、特別な事故がない場合、まず間違いなく僕が先に逝く。 やはりそのときはかみさんにそばにいて欲しい。
渡辺謙の姿は、性別問わずほとんどの人が共感できたと思います。もちろんボクも。
それに対して自分は樋口可南子になれる、と思った人はどれだけいたでしょうね。
映画ではあっという間に時間が流れますが、実際にはもう少し長い時間がかかるわけで、覚悟しては気持ちが折れて自棄にもなったことでしょう。そんな毎日を思うとやりきれないですね。
って言いたいこと言ってしまってすみません。
今後ともよろしくお願いします。
皆さん、映画とリンクさせて夫婦愛を再確認するんでしょうね。
私は残念ながら一人で鑑賞。さびしー
妻の目線で見た為に、あんなに気丈にしていられるかとっても不安にかられましたよ。
それと、病院でのテストにはかなーり危機感を覚えました。
謙さん意外と答えるのが早いっ!!
病気は侵される本人も辛いですが、周囲の人間も辛いものですね。
映画のような二人の関係は理想に近いですが、果たして現実となるとどうなるか、今のところ予想がつきません。
配偶者や子供の人生を自分の看病のために費やさせるのは本当に忍びないものですね・・。
映画を見ながら皆さん一緒にやっているようですが、その次の数字を反対に反復する所は、一つ目は付いてゆけましたが、二つ目は付いてゆけず、本当に『ヤバッ!』と思ったものでした。
幾つかの問いの後、「先ほどの三つを言ってください。」のところでは、どうにか「桜・電車・猫」を覚えていたので、ちょっとは安心しましたが、本当の検査ではもっと様々なテストの後に、時間を隔ててするのでしょうから、『安心』して良いのかどうか?
同年配の知り合いも、一緒にやっていた、と言いますから、映画を見た殆どの方が一緒にテストを受けていたのかも知れません。
俳優さんたちの抑えた演技には、近頃の映画の多くが忘れている「映画の本質」を見せて頂いたような気がします。 及川光博さへも抑えた演技でしたからね。
(それと、水川あさみは『シャンプーのCM』と香取の『孫悟空』に出ていて知ったのですが、最近は『医龍』などでも重要な役どころをやるようになりましたね。期待の“新人”です。)
大袈裟な表現や悪質な笑いが多い最近の風潮を潔しとしない、制作者の意志が現れていると思います。
JUNSKY(54才)
年代的にも他人事とは思えず。
自分が枝美子のような立場に立たされたら、
果たして枝美子のように振る舞えるのか、
ホント、自信がないです。
この作品は、原作は夫の視点。映画は夫婦の視点で描かれています。従って男性なら原作を読むとよりいっそう恐怖感が沸くはずです
私も、荻原さんの作品は、何冊か読んだことがあります。
この作品の原作も読みましたが、映画を観ると、携わった方々の想いを十分、感じることができましたし、本当に大事に作られた映画なのだと思いました(涙)
木梨さんの役は、印象的でした・・・。
>それに対して自分は樋口可南子になれる、と思った人はどれだけいたでしょうね。
そうですね! 多分自信ある人は誰もいないでしょうね^^
>覚悟しては気持ちが折れて自棄にもなったことでしょう。そんな毎日を思うとやりきれないですね。
ほんとそうですよね? こればかりはそういう境地にならないとわからないことですよね・・・。
>今後ともよろしくお願いします。
いえいえ、こちらこそ宜しくお願い致します^^
>夫婦で鑑賞をなさった方が多いようですが、cyazさんは?
もちろんかみさんと観ましたよ^^
涙の量はかみさんの勝ちでしたね!
>妻の目線で見た為に、あんなに気丈にしていられるかとっても不安にかられましたよ。それと、病院でのテストにはかなーり危機感を覚えました。
実際にああいう局面って経験ないのでわかりませんが、難しいことだと思います。自分の感情を押し殺すことは。
>病気は侵される本人も辛いですが、周囲の人間も辛いものですね。
そのとおりですね!
>映画のような二人の関係は理想に近いですが、果たして現実となるとどうなるか、今のところ予想がつきません。
こればかりはその局面にならないと無理ですね? たとえ仲のいい夫婦や家族でも。
>配偶者や子供の人生を自分の看病のために費やさせるのは本当に忍びないものですね・・。
そのために残りの人生を捧げる勇気は誰にでもあるものではないですからね・・・。