『弓』

今日も一日、
あなたの弓は
私を守り、
夜の終わりに
愛を奏でる。
■監督・脚本 キム・ギドク
■キャスト チョン・ソンファン、ハン・ヨルム、ソ・ジソク、チョン・グクァン
□オフィシャルサイト 『弓』
10年前にどこからか連れてきた少女を育てながら、漁船で生活する60歳の老人(チョン・ソンファン)。 彼はもうすぐ17歳になる少女(ハン・ヨルム)との結婚の日を待ち望んでいた。 しかし、少女が釣り客の青年(ソ・ジソク)に心奪われ、船内に険悪な空気が流れる。
おススメ度 ⇒★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★☆
不思議な感覚の映画だった。
前作の『うつせみ』も不思議な感覚の映画だったが、幼い頃から船の上でしか生活したことのない少女と老人との絆を描くこの映画、最初はなかなか面白く進んで行くのだが、釣り客の中に若い男性が入っていたことで、少女が初恋のようなときめきを感じ、そこからストーリーは何だかただの老人の嫉妬ドラマに変わっていく。 それはTVドラマのサイズのような感じだった。
老人は少女との結婚式を早くしようとカレンダーに×をたくさん付けていく。 或いは早くめくって月を変えてしまう。 なんとも子供地味な感じは否めない。 老人の過去について多少の伏線を持たせていれば、この筋書きに厚みがもたせられたのではないかと思うものの、少女の透明感漂う雰囲気とは裏腹な方向に流されてしまった。
何故、老人は少女との結婚に固執したのだろうか?
少女と老人の絆は切れたように思えるが、最後にはその老人の死(?)をもって、それは別世界で結ばれる・・・。
勝手に想像しろ的このへんの感覚を理解しようと思うと凡人には難しい。 表現手法の違いなのか『うつせみ』の時もなんとなく中途半端というか割り切れない感情はあったものの、女性としての心の動きや葛藤は理解できた。
あの究極に近い弓矢の占いは少女の天性のなぜる技なのか? 死と隣り合わせの危険を伴なう占いは二人の“絆”を表現しているのだとは思うのだが、今ひとつしっくりこなかった。
そして、全く少女は瞬きもせず射られた矢に向かって微笑んでいる。 僕自身がこの監督の表現方法についていけないだけなのかもしれないが、何となく消化不良のままで終わってしまって、うまく感想が書けないのも事実だ。
もうひとつ、老人が奏でる韓国二胡なのだが、多分撮影したあとに音楽をつけたのだろうが、全く音と弾く様が合っていなかった。 実物を弾く事はできないまでも、もう少し曲の音色と進行に合うマネごとは出来るだろうに。
これはこの映画のポイントでもあるので、もっと神経を使って欲しいところだった。
しかし、不思議なことだが、老人と少女は殆ど言葉としての会話がない。 『うつせみ』の時もそうだったが、言葉意外での表現手法を監督はカラーにしているのだろうか・・・。
ある映画評論家のレビューに次のように書かれてあった。 「本作で描かれる現実社会の常識や道徳から遠く離れた二人の関係は理解しがたいかもしれない。 しかし、強い絆で結ばれた、永遠の愛にめぐり逢いたいという気持ちは、私たち人間の心からの願いではないだろうか。 老人と少女の魂と魂で契られた、むきだしの愛の美しさに、すべての人が胸を衝かれずにはいられないだろう。」
魂と魂をどこで感じればいいのだろうか?
この日、『蟻の兵隊』と2本観るために、チケット予約で渋谷の坂を上り下りし、文化村のル・シネマに着いたときは余程疲れていたのかなぁ(笑)
「すべての人々が胸を衝かれずにはいられないだろう」なんて、ないない(笑)。映画評論家さんのいいそうな、戯言だけどさ。
僕は、この作品に好意的です。
「ああ、いいもの見させて、いただきましただ、ありがてえこっちゃ」という感じ。
自分が、老境に足を踏み入れかかっているかも知れませんが・・・。
>「すべての人々が胸を衝かれずにはいられないだろう」なんて、ないない(笑)。映画評論家さんのいいそうな、戯言だけどさ。
ま、生活の糧ですからね(笑)
>「ああ、いいもの見させて、いただきましただ、ありがてえこっちゃ」という感じ。 自分が、老境に足を踏み入れかかっているかも知れませんが・・・。
あらら、でもあの年で孫のような少女を・・・。
う~ん(汗)
この作品も最初観たときには、どうにかジジイの行動を正当化してあげたいと思いましたが、
今では、最後に残ったのは、ジジイの捻じ曲がった欲望のような気がしています。
>どうにかジジイの行動を正当化してあげたいと思いましたが、今では、最後に残ったのは、ジジイの捻じ曲がった欲望のような気がしています。
そうですねぇ、なんだか可哀相に思えますが、ジジイも初めてだったりして (爆)?!
自分のレビューでは書きませんでしたが、二胡の演奏シーンには私も違和感を持ってしまいました。素人が適当に弓を動かしている感じでしたね(まあ、私も弾いたことはないのですが)。作品全体の雰囲気は申し分ないだけに、ちょっと残念でした。
私もル・シネマで見ましたよ。関西に住んでいるため滅多に行くことはありませんが、改めて渋谷は坂の多い街だなと実感しました。三日間ほど周辺をウロウロすると「いい運動」になりますね(笑)。
>二胡の演奏シーンには私も違和感を持ってしまいました。素人が適当に弓を動かしている感じでしたね。
あれは本当にみっともなかったですね(笑)素人目にも・・・。女子十二楽坊があれだけ日本でもヒットして目の当たりにしているのに(笑)
>私もル・シネマで見ましたよ。関西に住んでいるため滅多に行くことはありませんが、改めて渋谷は坂の多い街だなと実感しました。三日間ほど周辺をウロウロすると「いい運動」になりますね(笑)。
渋谷の特徴でしょうね(笑)
それだけ映画を観る人(特にインディペンデント系)が多いということでしょう!銀座あたりとはまた違って ^^
老人が少女との結婚に固執した理由は特になかったのかも?
ただ、少女が傍に居る自分(老人)が自分自身(老人自身)と言うか、少女の存在が老人にとってこの世の全てだったのでは?
人を一途に愛すれば愛するほど、どうしてこの人に惹かれたのか?
わからなくなってくる時もあると思うし、
本能的な気持ち(純然たる欲望)なのかも?
唯一、理由を見つけるとするならば老人は少女との永遠の愛を見出したかった(永遠の愛を誓いたかった)だけなのかも?
>ただ、少女が傍に居る自分(老人)が自分自身(老人自身)と言うか、少女の存在が老人にとってこの世の全てだったのでは?
そうかもしれませんね。
>唯一、理由を見つけるとするならば老人は少女との永遠の愛を見出したかった(永遠の愛を誓いたかった)だけなのかも?
うーん、それにはやはり少しは老人の、少女の過去を裏付ける何かが欲しかったですね^^
「弓」のこの少女世間知らずの無垢なのか、持って生まれた奔放さなのか、不思議な世界でした。
>京の昼寝さんというネームから京都の方とばかり、じゃあ私と同じ「みなみ会館」でご覧になったのかしらと思ってましたら、渋谷?・・東京の方なんですね。
実は大学が京都で出身は大阪です。でも実家は現在京都ですけどね^^
>「弓」のこの少女世間知らずの無垢なのか、持って生まれた奔放さなのか、不思議な世界でした
本当に不思議な世界ですが、ラストシーンは監督の自己満足でしょうね(笑)