ボブ・ディランの「時代は変わる 名もなき者」と言う伝記映画がある、と言う事で久し振りに映画館へ。あっと、今は複数の映画を同時上映するから、シネマ・コンプレックスと言うのですね、昭和のジジィはエイガカンとしか思い浮かばなくて。
小さめの客席で夫々の興味に合せ選べるのは良いです。多様化したニーズに応えている。誰もが知っていた昭和のヒット曲に対し、今のヒット曲はターゲットが明確に分かれている、それに似てるなと何の脈絡も無くそんな思いがよぎりましたが。
ニューヨークに出て来た若者、ロバート・アレン・ジマーマンが、ボブ・ディランとして歌い始め、新進気鋭のフォークのプリンスとしてその才能を開花させてゆく。その姿を見つめる"女王”ジョーン・バエズの熱いまなざし。※後に改名しボブ・ディランが本名になったそうです。
そして常に前に進もうとする彼は、伝説の1965年のフォーク・フェスで、ポール・バタフィールドのバンドをバックにエレキで「ライク・ア・ローリング」など3曲を歌ったのですが、変化を嫌う客層に猛反発を受け物が投げ込まれ … というエピソードがエンディング。
ここでは激怒した主催者がPAを止めようとしますが、オペレーターはフェーダーを下げる事を拒否し、そのまま演奏を続けさせるあたりプロ魂ですね。もしかして、この会場にいた人達の中で、もっともディランの理解者だったかも知れない。
一旦ステージを下りたディランは、ギター一本で「It's All Over Now,Baby Blue」を歌い、古いファン層に別れを告げたという話の映像化ですが、大勢の聴衆役のエキストラも、PAをめぐる攻防戦も迫力がありました。パソコンとBlu-rayではこうはならないな。
それにしてもディラン、ジョーン・バエズ、ピート・シーガ-と、顔立ちはさほど似ているわけでは無いけど、雰囲気がすごく似ていていい感じ。ディランもバエズも、ギターも歌も吹替え無しで演っているみたいだし、さすがはアメリカ、人材が豊富ですね。
病床のウッディ・ガスリーに会いに行く知らなかった話や、50~60年代のテール・フィンのアメ車が走る映像も良かった。60年以上前のヴィンテージ・カーをよく集めたものです。ミュージシャンが御用達という、有名なチェルシー・ホテルはここで初めて見ました。
欲を言えばフリーホィーリンのジャケット(三枚目)で有名な当時の恋人、スーズ・ロトロの事も知りたかったけど、きっと今は一般人なのでNGなのでしょう。
最後にひとつ、レコード会社(CBSだったと思う)の制作スタッフが、目ぼしい新人を選ぶシーンで一人が、「P.P&M?ありゃダメだ 薄っぺらくて、だいたいピーターも…」と言わせているのには笑いました。確かに。でもP.P&Mは売れました。私も好きでしたし。
私がまだ青二才にもなる前の話ですが、「サマー・オブ・ソウル」や「ウッド・ストック」と並ぶお気に入り映画となりました。でも見落としたシーンがいくつもありそう。珍しくもう一度見に行こうかな?と思っているところです。