私は、調剤に従事していない「ペーパー薬剤師」だけれど、こういうニュースは、今でもとても関心がある。
サリドマイド奇形 メカニズムを解明 東工大など(産経新聞) - goo ニュース
サリドマイドの副作用解明=手足の成長たんぱくを妨げ-東工大など(時事通信) - goo ニュース
薬学部の学生の時、サリドマイドの薬害については学んだ。
催奇性のある化合物は、怖いと思った。
薬学(製薬)業界に身を置いていないので、不勉強で恐縮しているけれど、感じたことを舌足らずながら書こうと思う。
一言で結論を申し上げると、「とっても大きな前進」だと思う。
リンク先の記事と重複するが、朝日新聞の速報ニュースサイト『asahi.com』に掲載された記事を引用する。
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睡眠薬として服用した妊婦の子に重い障害が出るという深刻な薬害を引き起こしたサリドマイドについて、東京工業大と東北大のグループは、その副作用にかかわる体内のたんぱく質を見つけ、動物実験で確かめた。現在サリドマイドはがんなどの治療薬として認められており、副作用の仕組みが解明されれば安全な治療法の開発に役立つ。12日付の米科学誌サイエンスで発表した。
東工大の半田宏教授らは、サリドマイドを直径1万分の2ミリのビーズに固定し、ヒトのがん細胞を溶かした液につけた。その結果、セレブロンというたんぱく質とくっつきやすいことがわかった。
ニワトリや熱帯魚ゼブラフィッシュの卵にサリドマイドを加えると、翼の骨や胸びれができなくなる。ところが、サリドマイドと結合しないセレブロンの遺伝子をつくってニワトリやゼブラフィッシュの卵に入れると、サリドマイドを加えても翼や胸びれが発達した。
逆に、遺伝子操作でセレブロンがつくれないようにしたゼブラフィッシュは、サリドマイドを加えなくても、ひれが正常に発達しないという障害が起きた。これらの結果から、サリドマイドがセレブロンにくっつき、その働きを邪魔することが副作用の主因と考えられるという。
サリドマイドは1950年代に睡眠薬、精神安定剤として発売されたが、妊娠初期の服用で胎児への重大な薬害を起こし、60年代初めに出荷停止になった。その後、ハンセン病など多くの難病への効果が発見され、国内ではがん「多発性骨髄腫」の治療薬として2008年に再承認された。さらに、サリドマイドの構造を変えて、胎児に対する副作用だけをなくした薬の開発が試みられているが、うまくいっていない。
◇
東京大分子細胞生物学研究所の橋本祐一教授の話
サリドマイドの副作用に直接関係すると思われるものは見つかっていなかった。セレブロンが唯一かは別にして、ヒトでも同様の機構が働いていることは十分考えられる。今後、次世代医薬品の開発で、セレブロンに結合するケースを除外すれば、新薬の候補を絞ることが極めて容易になるという意義は大きい。
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記事にもある様に、全世界的な薬害事件になったので、恐らく多くの学者や研究者が、このメカニズムの解明に力を注いだと思う。
でも、今まで、サリドマイドの副作用(アザラシ肢症)の発症メカニズムは、ブラックボックスのままだった。
この箱を開けるという課題は、英知を集結したとしても、とっても難しかったのだろうと想像している。
この度、それを、分子レベルで解明したのだから、本当に大きな意味を持つと思う。
橋本教授のコメントにも、同感できる。
日本薬学会の学会誌『ファルマシア』でも、日本で再認可されたことは載っていた。
(ただし、多くの規制事項があるので、慎重に処方することに変わりはない。)
「多発性骨髄腫」という、血液の癌の治療目的でサリドマイドが認可されただけでも意味があるのに、その重篤な副作用発症のメカニズムが解明されたのだから、画期的である。
一刻も早い新薬開発の成功を、願って止まない。
サリドマイド奇形 メカニズムを解明 東工大など(産経新聞) - goo ニュース
サリドマイドの副作用解明=手足の成長たんぱくを妨げ-東工大など(時事通信) - goo ニュース
薬学部の学生の時、サリドマイドの薬害については学んだ。
催奇性のある化合物は、怖いと思った。
薬学(製薬)業界に身を置いていないので、不勉強で恐縮しているけれど、感じたことを舌足らずながら書こうと思う。
一言で結論を申し上げると、「とっても大きな前進」だと思う。
リンク先の記事と重複するが、朝日新聞の速報ニュースサイト『asahi.com』に掲載された記事を引用する。
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睡眠薬として服用した妊婦の子に重い障害が出るという深刻な薬害を引き起こしたサリドマイドについて、東京工業大と東北大のグループは、その副作用にかかわる体内のたんぱく質を見つけ、動物実験で確かめた。現在サリドマイドはがんなどの治療薬として認められており、副作用の仕組みが解明されれば安全な治療法の開発に役立つ。12日付の米科学誌サイエンスで発表した。
東工大の半田宏教授らは、サリドマイドを直径1万分の2ミリのビーズに固定し、ヒトのがん細胞を溶かした液につけた。その結果、セレブロンというたんぱく質とくっつきやすいことがわかった。
ニワトリや熱帯魚ゼブラフィッシュの卵にサリドマイドを加えると、翼の骨や胸びれができなくなる。ところが、サリドマイドと結合しないセレブロンの遺伝子をつくってニワトリやゼブラフィッシュの卵に入れると、サリドマイドを加えても翼や胸びれが発達した。
逆に、遺伝子操作でセレブロンがつくれないようにしたゼブラフィッシュは、サリドマイドを加えなくても、ひれが正常に発達しないという障害が起きた。これらの結果から、サリドマイドがセレブロンにくっつき、その働きを邪魔することが副作用の主因と考えられるという。
サリドマイドは1950年代に睡眠薬、精神安定剤として発売されたが、妊娠初期の服用で胎児への重大な薬害を起こし、60年代初めに出荷停止になった。その後、ハンセン病など多くの難病への効果が発見され、国内ではがん「多発性骨髄腫」の治療薬として2008年に再承認された。さらに、サリドマイドの構造を変えて、胎児に対する副作用だけをなくした薬の開発が試みられているが、うまくいっていない。
◇
東京大分子細胞生物学研究所の橋本祐一教授の話
サリドマイドの副作用に直接関係すると思われるものは見つかっていなかった。セレブロンが唯一かは別にして、ヒトでも同様の機構が働いていることは十分考えられる。今後、次世代医薬品の開発で、セレブロンに結合するケースを除外すれば、新薬の候補を絞ることが極めて容易になるという意義は大きい。
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記事にもある様に、全世界的な薬害事件になったので、恐らく多くの学者や研究者が、このメカニズムの解明に力を注いだと思う。
でも、今まで、サリドマイドの副作用(アザラシ肢症)の発症メカニズムは、ブラックボックスのままだった。
この箱を開けるという課題は、英知を集結したとしても、とっても難しかったのだろうと想像している。
この度、それを、分子レベルで解明したのだから、本当に大きな意味を持つと思う。
橋本教授のコメントにも、同感できる。
日本薬学会の学会誌『ファルマシア』でも、日本で再認可されたことは載っていた。
(ただし、多くの規制事項があるので、慎重に処方することに変わりはない。)
「多発性骨髄腫」という、血液の癌の治療目的でサリドマイドが認可されただけでも意味があるのに、その重篤な副作用発症のメカニズムが解明されたのだから、画期的である。
一刻も早い新薬開発の成功を、願って止まない。