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KLab「自社株ゲーム」に思う

2016-02-09 | 会計・株式・財務
何かとお騒がせなゲーム会社KLabが2015年12月期決算を発表しました。
私はゲームに興味がないので細かいことは書きませんが、一つ気になる金融取引を見つけたので簡単にメモ。

営業利益は3Q決算時での通期予想は前期比+5.0%としておりましたが、前期比+1.6%と辛うじて増益で着地。さすが、決算短信に「当社グループが重視している経営指標は、売上高及び営業利益」と書くだけあって、この+1.6%増に凄い重みを感じるのはわたしだけでしょうか。関係者の皆様、ご苦労様でした。ただ、監査はしっかり見て下さい。

一方、経常利益は、為替差損やデリバティブ評価損など営業外費用が膨らみ、さすがに減益。
私が注目したのは、デリバティブ評価損の元となった取引、「自社株価予約取引」です。

何コレ? ということで当社の過去リリースを見てみると・・・・。


自社株価予約取引に係る契約締結に関するお知らせ

自社株価予約取引の内容確定に関するお知らせ


財務体力は十分あるし、自社株が安いと思うので自社株を買いたい。
ところが、8月26日までの買い付けにより、会社法で規定される財源規制により、今期はこれ以上の自己株式の取得は実施できない状況。

そこで、株式市場内から株式を買い付けるという点で、自己株式の取得に類似した「自社株価予約取引」を実行。
ドイツ銀行ロンドン支店は総額約5億円分の当社株式を取得し、先渡価格は1,286円に決定。

 <自社株価予約取引の概要>

自社株価予約取引とは、当初時の 当社普通株式の 時価に基づいた「先渡価格」を予め設定し、将来の契約終了時点の当社普通株式の株価に基づく「終了時基準価格」と当該先渡価格の差額を現金決済する取引で、以下の効果をもたらす取引。

 終了時基準価格 >先渡価格 --- 当社の差金受取り(株価上昇メリット)

 終了時基準価格 <先渡価格 --- 当社の差金支払い(株価下落リスク)


邪推の域を出ておりませんが、結局まとめると・・・・
「カネは余っている。しかし自社株は直接買えない。でもこのスキームなら(ドイツ銀行が実際に株を買うので)株価引き上げ効果がある。自社株も全然安いと思っているから、このゲームにはゼッタイ勝てる!一石二鳥だ!」とでも皮算用をはじいていたのでしょうか。


ところが、現実は甘くない。

12月末株価は802円まで急落。さっそく評価損を▲172百万円計上。

2月8日終値は684円。
2016年12月期1Qの経常赤字は計画段階で▲450百万円と当面の業績は実にキツイ。営業赤字より▲100百万円広がっており、追加のデリバティブ評価損を織り込んでいるんですかね。火に油を注いでら。滑稽ですらある。

でもまだ、ゲームは終わっていない。
結末はいかに。

でも、2016年12期通期計画(経常利益31億円)が本当に射程圏内になるのならば、もう1回、自社株ゲームを仕掛けてもいいかも。
もっとも恥の上塗りとなる可能性もあるけど。


またいきます。

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