◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

日本マクドナルドホールディングスの収益構造に思う

2006-03-13 | 会計・株式・財務
今日は疲れました。
前任者が仕掛けた地雷を思いっきり踏んでしまった、とだけ言っておきましょう。

わけのわからん話はこれくらいで。

            ・ ・・                  ・・・  
まずはライブドア。4月14日、上場廃止ですか。まさにいよいよですね。


そして今日のネタ。
週刊ダイヤモンド06.318号にあった
日本マクドナルドホールディングス「売上高至上主義経営の限界」の
ご紹介とコメント。
実物は書店等でご確認くださいね。


皆さんご存知の会社なので記事の要約とかはしませんけど、
要点だけかいつまんで書きますと、

  ・原田社長が唱え続けた「バリュー戦略」=客数を増やす戦略は失敗。
   打たれた施策が
   「100円メニューの導入」「割引券の乱発」「営業時間の延長」。
   これらのために材料費、労務費が急増
   ということ。

中でも興味深かったのが、同記事で紹介されていた2つの内部資料
(社内管理指標)です。

1つは直営店のみの業績、もうひとつは月別の客数・客単価・利益(ボトムライン)データ。

マックでは直営店の利益管理指標として「ボトムライン」という特有の勘定科目
を使用しています。これは社内金利・本部経費・米国本社ロイヤリティなどを
差し引いた直営店が稼ぎ出した利益のようです。

で、このボトムラインが前年の▲53億円から05年12月期は▲104億円まで悪化。


このボトムラインを05年の月別に見てみると、次のとおり。
    全店客単価   直営店ボトムライン  
1月   623円       444百万円
2月   572円     ▲1,704百万円
3月   606円       463百万円
4月   548円     ▲1,565百万円
5月   502円     ▲1,753百万円
6月   494円     ▲2,397百万円
7月   527円      ▲844百万円
8月   547円      ▲276百万円
9月   532円     ▲1,166百万円
10月   547円      ▲857百万円
11月   556円      ▲846百万円
12月   580円       158百万円

一概には言えないのですが、ざっと見た印象からしますと
「客単価が580円を超えないと、直営店の採算は取れない」腰高な収支構造。

外食の書き入れ時である7・8月ですらマイナス。
これはちょっと深刻ですよね。


自分のことで恐縮ですが、私も週末よく立ち寄りますが、
買うのは100円コーヒー程度。
見事なまでに、赤字に貢献しているようです。


ところがこの日本マクドナルドホールディングス。
連結当期利益は0.6億円だったんです。
直営店ボトムラインは赤字だったのに。

そのカラクリは、FC(フランチャイズ)店から入ってくる収益
約90億円(FC収入-FC収入原価)。

全店舗の7割を占める直営店の赤字を3割のFCからの収益で埋め合わせているんですね。


そして気になる今期。
HPを見ますと1月の既存店の客単価は前年比▲8.6%。
これを上の直営店の前年客単価623円を代用して1月の客単価を推定すると569円。
2月既存店▲2.8%ですから、同じように556円。
いずれも目安となる580円に届かず。
今期も厳しい出足になっているようですね。

客単価を巧妙に上げていかないと、本当にキツイですね。これは。

なお、「ポテトはいかがですか」というフレーズの意味、
もうおわかりですよね。
単価を上げるための話法です。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ビジネスバンクコンサルティ... | トップ | 株主還元の新たな指標「DO... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビジネスモデルに? (スパイラルドラゴン)
2006-03-14 07:20:54
こんにちは。

マックも、どこぞのコンビニチェーン本部と同様の「人柱」の基礎があってこそ、成り立っているビジネスモデルのようですね。
返信する
ビジネスモデルか・・・ (なべや)
2006-03-14 13:05:16
「価格訴求は継続性のあるビジネスモデルにはならないよ」

という件に関しては、私のメルマガでも再三取り上げて

いますが、

なるほど、マクドナルドもはまっているようですね。

「価格訴求」に走ることの怖さは短期的な収益性の

悪化にとどまりません。

たとえば、一時的に100円マックを販売した結果、

消費者に「良い(おいしい)ハンバーガーを食べたい

ときには、モスか1stキッチンへ行く」という

ブランド認知を生じさせてしまったとすると、

日本マクドナルドが失ったものは大きいですよ。



ところでクマさん。

おすすめのM&A書籍はどれですか?
返信する
コメント有難うございます。 (dancing-ufo)
2006-03-14 21:29:59


スパイラルドラゴンさま

いつも有難うございます。

ご指摘の通り、FCが厳しい立場にあるようです。

でも、マックのFCって、元従業員が

のれん分けして開業するケースもあるです。

ですから、・・・なおさら厳しい世界なのでしょうか。







そして、なべや氏。

ずっと探していたんですよ。本を。

で、価格の安さ、著者の確からしさ、

内容の分かりやすさで見て

まぁ、これなら薦められるか・・・

というのがコレ。



文藝春秋の文春文庫

『企業再生とM&Aのすべて』

著者:藤原総一郎



 (日本経済新聞 2005年7月10日付書評より)



「民事再生法や産業再生機構法の成立、株式交換・移転制度や会社分割制度の創設・・・。日本では1990年代後半から企業の

再建とM&A(合併・買収)に関する法制度の整備が一気に進んだ。弁護士してとして実務経験豊かな著者がこれらを平易に解説している。松下電器産業グループの再編や米国の小売大手、Kマートの再建など実例も紹介。図や表類も盛り込み、分かりやすい入門書となった。」



弁護士の方ですが、実務界では非常に著名な先生です。(若い!)



また探してきます。









返信する
どうも (なべや)
2006-03-15 11:15:17
ありがと~
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

会計・株式・財務」カテゴリの最新記事