お疲れ様です。
サッカートヨタカップで盛り上がった13日、
スポンサー・トヨタの業績観測記事が出ておりました。
ノーサプライズですけどね。
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<産経ニュース>
トヨタ自動車が、平成21年3月期の連結業績予想を再度下方修正
する方向で調整していることが13日、わかった。
下期(10-3月)の営業損益は1000億円規模の赤字に転落する見通し。
半期ベースの営業赤字は米国会計基準を導入した11年以降で初めて。
金融危機に伴う景気悪化で新車販売台数は世界的に落ち込んでいるほか、
1ドル=90円を突破する急激な円高も利益を圧迫する。
トヨタは11月の中間決算発表時に通期の連結業績予想を大幅に下方修正。
営業利益は従来予想を1兆円も下回る6000億円(前年同期比73・6%減)
となる見通しを示し、市場では「トヨタ・ショック」と呼ばれた。
トヨタの上期の連結営業利益が5820億円。
もともと下期の営業利益はわずか180億円にとどまる見通しだったが、
これがすべて吹き飛ぶ形だ。
金融危機以降、トヨタが「ドル箱」にしてきた米新車市場の落ち込みが
止まらない。これまで競争力の高かった日本車も販売減を余儀なくされており、
トヨタの11月の米新車販売台数は前年同月比34%減の13万307台
となった。また、中国やロシアなど新興国市場も減速が著しい。
追い打ちをかけたのが急激な円高ドル安。トヨタは下期の想定レートを
1ドル=100円とみていたが、実際は90円台前半で推移している。
海外販売の多いトヨタは為替感応度も高く、対ドルで1円、円高が進むと
営業利益は年間で400億円減少する。仮に年度末までの3カ月間1ドル=90円
の円高水準が続けば、それだけで営業利益が1000億円減少する計算だ。
(引用おわり)
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・・・・・米国で一体何が起きているのか。
そう思った私は、アメリカ・・・・じゃなくて神保町へ飛び
週刊東洋経済12月20日号の早売りを購入。
特集が凄い。「自動車全滅!」。
読んでいると暗くなりますよ。
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私は中でも,昨今の自動車販売の急激な落ち込みの背景を分析した
p.50「アメリカの新車販売支えた金融マジックの崩壊」に注目。
別にトヨタカップと引っ掛けたワケではないでのすが、
割賦などに代表される販売金融が、昨今の販売不振に
大きな影響を与えているようなのです。
皆さんにおかれては既知のことばかりですが、
自分のためにざっくりと要約しますと・・・・・
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【ポイント】
金融に過剰に依存した新車販売が、中古車価格の暴落で機能停止になった。
■米国の代表的な中古車価格指標マンハイム・インデックスは10月に
過去14年で最悪の下げ幅を記録。11月も同様の状況となっている。
中古車価格指標マンハイム・インデックス
リンク先には数表の他、下の方にグラフが載っております是非ご覧下さい。
衝撃的ですよ、落ち方が。
■では、中古車価格下落によって何が起きるか。
(1)自動車販売の2割近くを占めるリース取引において、残価引当金が増加。
・消費者(リース契約者)は、中古車価格下落により、リースが満了した車を
さっさとメーカーに返却し、同じような中古車を市場で安く買う行動をする。
・一方、自動車メーカーは返却されたオフリース車両を自ら中古車市場で安く
処分せざるを得なくなってくる。
その際に、契約当初に想定していた3年後の残存価格(残価)との差損が
発生してしまう。
(2)主力の分割ローンでは「アップサイドダウン現象」が発生し、
インセンティブ(販売奨励金)が増加。
・自動車の下取り価格が中古車価格とリンクして下落したため、ローンの残債
が下取り価格を上回る「アップサイドダウン現象」が発生。
・新車を1台でも売りたいメーカーは、顧客の残債の一部を、ディーラーへの
インセンティブ(販売奨励金)の名目で補填する手法を取る
(但し、メーカー・車種により姿勢は区々)。
・3月時点で米国全下取り台数の約25%にアップサイドダウンが起き、
平均差額は4,300ドルと史上最高水準となり、メーカー経営を圧迫。
(3)米ビックスリーにおいては大口販売の膨張と、それに伴う
「バイ・バック・オプション」負担にも留意が必要。
・「バイバックオプション」はレンタカー会社向けなどに大量販売する際に、
「ヵ月後にメーカーがYドルで引き取る」と事前に取り決めるもの。
しかし引き取り価格は卸価格と大差なく、大量返却→中古車市場での
大量売却となれば逆ザヤとなるおそれあり。
・・・・他にもいろいろあったのですが
当誌p.51にあった「全体構図」がわかりやすかったので
これを冒頭に掲げ、詳細は割愛しました。
わかりやすい図なのですが、写真が小さく見にくくてすいません。
ぜひ実物でご確認ください。
◆まとめ
・米国はここ数年1,600万台規模の新車販売を続けており、今後有り余る
中古車が新車販売を阻害し続ける可能性は高く、販売不振は長期化のおそれも。
(経済が回復したとしても、真っ先に売れるのは中古車との見方もあり)
(要約おわり)
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・・・・・・ということで、中古車価格指標の推移は、住宅価格指標と同様に
今後、要注目ですね。
・・・・そうそう、販売金融と言えば、13日の日経企業財務面に
「ソフトバンクが携帯の割賦販売拡大で貸倒引当金急増」という記事がありました。
記事によりますと・・・・・
ソフトバンクは06年10月に割賦販売を開始(最大24か月)。
端末1台当りの平均顧客獲得手数料は導入直前43,800円→直後22,400円まで低下。
しかし、端末貸し倒れリスクのある利用者は全体の約5%(端末価格5万円相当)。
通話収入の貸し倒れリスクのある利用者は、仮に延滞者全員が1か月延滞
だとすると全加入者の3割強を占める計算(※)
(※直近ARPU4,170円換算で743万人分。これを9月末加入件数1,963万人で
占率を計算したもの。
延滞者の平均が3ヶ月だとすれば、同比率は1割強となるので注意。)
・・・・・・・・・ソフトバンクの貸倒費用の高さについては、中間決算の時にも明らかで、
拙稿「750億円の時限爆弾 ~ソフトバンク中間決算に思う」でも、
「貸倒引当金繰入額 第1四半期 98億円
第2四半期 130億円
順調に増えております・・・・・踏み倒しが・・・・。
無理な販売で顧客の質も低下しているのかも」
と指摘しておりましたので、違和感はありません。
但し、引当水準を見ると、改めて顧客の質に課題があるような気がして
なりません。
・・・それと、何故、日経がこのタイミングで引当金に焦点を当てたのか?
私の関心はもっぱらこちらにありますけどね。
まっ、トヨタとソフトバンク。
販売金融を活用して成長してきたけど、
それが大きな曲がり角に来ている点では一緒ですね。
しかし、トヨタがここまで劇的に落ちるとは・・・・・・。
コスト削減の勢い余って、伝統ある「トヨタカップ」が
今年限りにならないことを祈るばかりです。