会計士協会もさすがに踏み込んだ姿勢を示してきました。
まずは毎日新聞の記事。続いてコメント。
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◆ <公認会計士協会>不正対応で実務指針案◆
日本公認会計士協会(藤沼亜起会長)は10日、「財務諸表監査の不正対応に
関する実務指針」の草案を初めて公開した。
企業の粉飾決算など不正を見抜くため、監査法人や公認会計士が企業に予告なし
で「抜き打ち監査」を実施することや、連結対象とならない特別目的会社などとの
取引が適切に行われているか入念にチェックするなど、不正を見抜くための具体的
な113項目を盛り込んだ。草案について市民から意見を5月末まで募って、
早ければ06年9月中間決算から適用する。
同協会は、これまでも不正対応の実務指針を設けていたが、ライブドアやカネボウ
の粉飾決算事件で監査法人や公認会計士の会計監査に対する信頼が揺らいだこと
から、指針の項目を従来の約3倍に拡充した。
草案では「監査に精通している企業担当者は不正な財務報告を隠蔽(いんぺい)
しやすい」と指摘。「監査される会社が想定しない要素を盛り込み、監査の実施時期
の変更や予告しない事業所で監査を実施する」などと、「抜き打ち監査」の重要性を
強調した。そのうえで、監査法人は「不正による虚偽の表示が存在する可能性を
認識し、監査の全過程で職業的懐疑心をもつべきだ」などとして、“企業性悪説”を
前提とした監査を提言している。
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(コメント)
①記事にある113項目の指針は、こちらの公開草案(本文)でご確認下さい。
http://www.jicpa.or.jp/technical_topics_reports/000/000-20060330-01.html
②公開草案では不正リスク要因(虚偽の表示)を次の3つに分けて例示して
おります。今後皆さんが投資される会社を見るときの参考になるかもしれません
のでご紹介。(表現は多少端折っておりますのでご留意下さい)
(a) 動機・プレッシャー
・ 過度の競争、市場が飽和、
・ 技術・製品陳腐化、等への不適応・ 倒産、担保権の実行、
又は敵対的買収を招く原因となる営業損失の存在、
・ 利益が計上されているのに、営業キャッシュフローが経常的にマイナス、
・ 同業他社比で急激な成長、又は異常な高収益
・投資家などが企業の収益力や継続的な成長について過度又は非現実的な
期待をもっていること
・ 取引所上場規則や財務制限条項に十分対応できないこと、
・ 経営者らが企業と重要な経済的利害関係を有していること、
・ 経営者の報酬の大部分が、積極的な経営目標の達成に左右されること、
・ 企業債務を個人保証していること、
(b) 機会
・ 通常の取引過程からはずれた重要な関連当事者との取引、
・ 仕入先や得意先等に不適切な条件を強制できるような財務上の強大な影響力
を有する、
・ 主観的な判断や立証が困難な不確実性を伴う重要な会計上の見積もりに
基づいて、資産、負債、収益又は費用が計上されている、
・ 事業環境や文化の異なる国や地域で重要な事業が行われている、
・租税回避地において、事業を実施するうえで、明確な正当性があるとは
考えられない巨額の銀行口座が存在すること又は子会社もしくは支店を運営、
・ 経営が1人もしくは少数の者により支配され、取締役会や監査役等による
監視が不十分、
・ 企業を支配している組織等の判定が困難、
・ 異例な法的実体又は権限系統を含め、極めて複雑な組織構造、
・ 取締役もしくは執行役又は監査役等が頻繁に交代、
(c)姿勢・正当化
・財務・経理担当以外の経営者が会計方針の選択又は重要な見積もりの決定
に過度に介入すること
・ 経営者が株価や利益傾向の維持・増大に過剰な関心がある、
・ 経営者が、投資家などに対し、積極的又は非現実的な業績の達成を確約
すること、
・ 経営者が不当に課税所得を最小限とすることに関心があること、
・ 経営者と監査人が次のような緊張関係にあること、
-会計、監査、報告事項に関し、頻繁に論争
-監査の終了又は監査報告書の発行に関して時間的制約を課す
-監査人が従業員や監査役等とコミュニケーションをとることを不当に制限、
-経営者が監査人に対して専横的な態度
他にも沢山例示されておりますが、要は、
「これまで監査人が抱いていた企業側に対する不満を思うまま書きなぐった」、
と見ることも出来るかも知れません。
③そこで、指針の方針ですが・・・企業性悪説ですか・・・大転換ですね。
でも本当にできるのでしょうか?
企業側から監査報酬をもらうという構図には何ら変化がない中で、
かえって監査人を追い詰めてしまうことになりはしないでしょうか?
ですので、実効性を高める工夫をしないと、結局は絵に描いたモチになる
おそれがありますね。
とりあえず、このブログでも、上記のように疑わしいケースについては、
それとなく警告は発していきたいと思います。
まずは毎日新聞の記事。続いてコメント。
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◆ <公認会計士協会>不正対応で実務指針案◆
日本公認会計士協会(藤沼亜起会長)は10日、「財務諸表監査の不正対応に
関する実務指針」の草案を初めて公開した。
企業の粉飾決算など不正を見抜くため、監査法人や公認会計士が企業に予告なし
で「抜き打ち監査」を実施することや、連結対象とならない特別目的会社などとの
取引が適切に行われているか入念にチェックするなど、不正を見抜くための具体的
な113項目を盛り込んだ。草案について市民から意見を5月末まで募って、
早ければ06年9月中間決算から適用する。
同協会は、これまでも不正対応の実務指針を設けていたが、ライブドアやカネボウ
の粉飾決算事件で監査法人や公認会計士の会計監査に対する信頼が揺らいだこと
から、指針の項目を従来の約3倍に拡充した。
草案では「監査に精通している企業担当者は不正な財務報告を隠蔽(いんぺい)
しやすい」と指摘。「監査される会社が想定しない要素を盛り込み、監査の実施時期
の変更や予告しない事業所で監査を実施する」などと、「抜き打ち監査」の重要性を
強調した。そのうえで、監査法人は「不正による虚偽の表示が存在する可能性を
認識し、監査の全過程で職業的懐疑心をもつべきだ」などとして、“企業性悪説”を
前提とした監査を提言している。
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(コメント)
①記事にある113項目の指針は、こちらの公開草案(本文)でご確認下さい。
http://www.jicpa.or.jp/technical_topics_reports/000/000-20060330-01.html
②公開草案では不正リスク要因(虚偽の表示)を次の3つに分けて例示して
おります。今後皆さんが投資される会社を見るときの参考になるかもしれません
のでご紹介。(表現は多少端折っておりますのでご留意下さい)
(a) 動機・プレッシャー
・ 過度の競争、市場が飽和、
・ 技術・製品陳腐化、等への不適応・ 倒産、担保権の実行、
又は敵対的買収を招く原因となる営業損失の存在、
・ 利益が計上されているのに、営業キャッシュフローが経常的にマイナス、
・ 同業他社比で急激な成長、又は異常な高収益
・投資家などが企業の収益力や継続的な成長について過度又は非現実的な
期待をもっていること
・ 取引所上場規則や財務制限条項に十分対応できないこと、
・ 経営者らが企業と重要な経済的利害関係を有していること、
・ 経営者の報酬の大部分が、積極的な経営目標の達成に左右されること、
・ 企業債務を個人保証していること、
(b) 機会
・ 通常の取引過程からはずれた重要な関連当事者との取引、
・ 仕入先や得意先等に不適切な条件を強制できるような財務上の強大な影響力
を有する、
・ 主観的な判断や立証が困難な不確実性を伴う重要な会計上の見積もりに
基づいて、資産、負債、収益又は費用が計上されている、
・ 事業環境や文化の異なる国や地域で重要な事業が行われている、
・租税回避地において、事業を実施するうえで、明確な正当性があるとは
考えられない巨額の銀行口座が存在すること又は子会社もしくは支店を運営、
・ 経営が1人もしくは少数の者により支配され、取締役会や監査役等による
監視が不十分、
・ 企業を支配している組織等の判定が困難、
・ 異例な法的実体又は権限系統を含め、極めて複雑な組織構造、
・ 取締役もしくは執行役又は監査役等が頻繁に交代、
(c)姿勢・正当化
・財務・経理担当以外の経営者が会計方針の選択又は重要な見積もりの決定
に過度に介入すること
・ 経営者が株価や利益傾向の維持・増大に過剰な関心がある、
・ 経営者が、投資家などに対し、積極的又は非現実的な業績の達成を確約
すること、
・ 経営者が不当に課税所得を最小限とすることに関心があること、
・ 経営者と監査人が次のような緊張関係にあること、
-会計、監査、報告事項に関し、頻繁に論争
-監査の終了又は監査報告書の発行に関して時間的制約を課す
-監査人が従業員や監査役等とコミュニケーションをとることを不当に制限、
-経営者が監査人に対して専横的な態度
他にも沢山例示されておりますが、要は、
「これまで監査人が抱いていた企業側に対する不満を思うまま書きなぐった」、
と見ることも出来るかも知れません。
③そこで、指針の方針ですが・・・企業性悪説ですか・・・大転換ですね。
でも本当にできるのでしょうか?
企業側から監査報酬をもらうという構図には何ら変化がない中で、
かえって監査人を追い詰めてしまうことになりはしないでしょうか?
ですので、実効性を高める工夫をしないと、結局は絵に描いたモチになる
おそれがありますね。
とりあえず、このブログでも、上記のように疑わしいケースについては、
それとなく警告は発していきたいと思います。
似ているのは役所で、納税者と受益者が不一致ですね。でも、役所の場合は権力を持っているし、独占なので立場が強いですが、監査法人はオピニオンショッピングが可能なので立場が弱いです。これは民間の建築確認検査機関と同じ構図です。また、業績が良く粉飾する必要性がない会社は監査報酬をたくさん支払えるのに対して、業績が悪く粉飾する可能性の高い会社は監査報酬を少ししか払えないといった現状では本当に十分な監査は可能なのでしょうか?
いち経理部員さま
決算のさなか、わざわざコメントくださり
誠に有難うございます。
問題意識は、私も一緒です。
http://www.geocities.jp/fukuigsim/FSI.pdf
上記の3章の財務諸表保険という考え方が
結構面白いと思うのですが、実務の方は
このアイデアについては、どのようにお考え
になられますか?
taurusさま
レポート拝見しました。
こういう柔軟な発想、
知的好奇心を大いに刺激してくれますね。
有難うございました。